劇場公開日 2025年12月5日

「ファトマの笑顔と言葉を繰り返す」手に魂を込め、歩いてみれば talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 ファトマの笑顔と言葉を繰り返す

2025年12月5日
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鑑賞方法:映画館

ファトマの言葉のひとつひとつ、彼女が撮影した写真、彼女の歌、彼女の笑顔とユーモア。それを書き出して思うことしかできない:一切れでいいからチョコレート食べたい!そうだなあ、ローマに行ってみたいかなあ。美術館に行ってみたい。ママのお料理、チキンを長いこと食べてない。コロナの頃?幸せだった!通信環境はよかったし、ラップトップで仕事できたし、モールス信号も学んだよ!それにセピテも共感;投獄された時にモールス信号を勉強して隣に入れられている人と壁越しに意志疎通した。

タバコ1本が50ドルもするんだよと笑うファトマ。紙幣の裏に描かれている女の人の顔を見ているんだけど、これはイスラエルのお金、どうしてだろうとファトマは独り言のようにつぶやく。病院も、シェルターの役割も担っていた学校も爆撃された。一日中、夜中もずっと、飛行機音や爆音が聞こえて、そういう状態が日常になって、落ち着いて考えることができなくなった、考えがまとまらない。写真は撮り続ける、私が撮らなくては。みんなに見てもらうために。彼女が写すガザの町、人々、老人、子どもたち、血痕。瓦礫の山と無惨に爆撃を受けた建物、こちらを見つめる子どもの目。ファトマの故郷でファトマにとって世界一大切な居場所、ガザ。

24歳のファトマはスマホの向こうのセピデとビデオ通話をする。ファトマのヒジャブは濃い色、明るい色、小花柄といろいろで美しい。彼女は背が高いので年齢より大人に見えるから、ママに言われて13歳からヒジャブを身につけている、ヒジャブ着用は人それぞれ、家庭によっていろいろだよ、とヒジャブについて質問してきたセピデに説明する。ファトマは、画面越しにセピデの顔を認めるとすぐに太陽のような笑顔を見せる、最初から最後まで。私たちもファトマの笑顔につられて笑顔になる。友達が殺されても、お腹がどんなにすいていても、シェルターの中にいても、セピデに最初に見せるのは太陽の笑顔。自分が生まれ育った町ガザが自分の故郷で一番大事な場所。だからどこかに逃げたいとかは思わない。目がキラキラして笑顔のファトマは、セピデを慕い彼女との会話から知識と励ましと外の世界との繋がりを得てそれを力にしていることを私たちは感じる。ガザとファトマの為に何もできない無力感に襲われるセピデ、彼女はファトムを、彼女とのやりとりを映画にしてみんなに示してくれた。私は何ができるのだろう。(シネ・リーブル池袋で見た)

ショック‼️(2025.12.16.)
シネ・リーブル池袋も閉館になるんですか!怒りと悲しみと呆れしかない。

talisman
Freddie3vさんのコメント
2025年12月27日

コメントありがとうございます。人間ファトマの魅力の源泉は好奇心旺盛なところにあるのかな。そのあたりが彼女の「ジャーナリスト魂」に繋がっているような気もします

Freddie3v
Mさんのコメント
2025年12月24日

見て2日たち、やっと言葉を見つけてみる気になりました。
年末に今年一番の映画を更新したような形です。
どこかでtalismanさんの「思い出すと涙が出る」というコメントを見かけました。全く同じ気持ちです。
彼女の笑顔を思い出すと涙が出ます。
実は娘がファトマさんと同学年(?)ぽくて、うちの子もいつもニコニコしているので、あの笑顔が重なって見えてしまいました。
監督も、ある意味、傍観者としてしか関わることができず、ずいぶん悔しい思いをしたのではないかと思います。おこがましいですが、まさに傍観者としてこの映画を見た自分と重なるものを感じました。
このような映画を見るたびに、「自分には何ができるのか?」と問われているのを感じつつ、「このような事実がこの地球上で起こっている、ということを知るだけでも、何もしないよりはいい」と自分でいいわけをしている感じです。せめて、この映画を見るように周りの人たちに勧めているところです。
監督がカンヌ国際映画祭の話をした時の彼女の表情が忘れられません。

M
オパーリンブルーさんのコメント
2025年12月24日

遅ればせながら私も鑑賞しました
とにかくファトマの笑顔が、素晴らしかったこと!
何の憂いもないような屈託のない笑顔で、「ここ暫くは家畜の用の食物を食べていた」とさらりと冒頭で語る
私だったら…と置き換えると、確実に恐怖と愚痴と、呪いの言葉ばかりになりそうなのに…

破壊されていくガザの街角のショット、これもまた素晴らしい。構図も構成もよくて、報道カメラマンとしてもなかなかの力作揃い
そして悲惨な現場ばかりでなく、そんな中でも“ひとの暮らし”が綿々と続いていることを無言で訴えていた

オパーリンブルー
Mさんのコメント
2025年12月22日

見て言葉が出ませんでした。

M
きりんさんのコメント
2025年12月20日

いま映画館から出たところです。

きりん
sugar breadさんのコメント
2025年12月16日

コメントありがとうございます。
ファトマさんのヘジャブ、仰る通り美しく、多彩でした。もちろん信仰心がベースなのだけど、ポジティブな彼女の自己表現だったのですね。

sugar bread
きりんさんのコメント
2025年12月15日

そうですか・・
何とかして観に行きたいな。

きりん
きりんさんのコメント
2025年12月15日

観たんですね。
これ、東京か名古屋まで行かないとやってないので悩んでます。

本作の情報は「ネタニヤフ調書」に寄せられたmejiro さんのレビューとこの作品への同氏のレビューから知りました。

「ネタニヤフ調書」はサイテーなドキュメンタリーでした。連立政権を保って自分の逮捕を免れるためにネタニヤフが側近の極右閣僚にガザ攻撃を好きにやらせていることを暴露していました。

きりん
tomtomさんのコメント
2025年12月8日

talisman様
コメントを頂き、ありがとうございました。私も当分の間、この映画のことが頭から離れないと思います。

tomtom