大地に詩を書くようにのレビュー・感想・評価
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あの犬は愛されていたのか?
まずは、人間社会と自然環境との調和を重んじる「造景家」として偉業を成し遂げてこられたチョン・ヨンソンさんによる四季折々の景観美に圧倒されました。
プライベートでは、豊かな自然に囲まれた瀟洒なご自宅で、優しく丁寧に、草花に話しかけ、お世話しながら暮らす日々。。。
そんな映像が流れる中、私の心に引っかかり続けたのが、広大な庭の一角にポツンと紐(?)でつながれ、ほぼほぼその存在を無視されている一頭の白い犬の姿。。。
唯一、彼女が犬に話しかけたのは、とある夏の日。植物に放水するホースから出た水しぶきを、つながれた犬にかけ、「どうだ?涼しいか?」というようなセリフを発した1シーンのみ。
暑い日も寒い日も、庭の背景の一部のように一瞬、映り込む、つながれた犬の姿を見るたびに、「草花や自然を、まるで我が子のように愛し、慈しむ彼女の眼に、この犬は、どう映っているのだろうか?」と、そればかりが気になり始め、、、
日本においても、犬との付き合い方は人それぞれで、「家族」として室内でフリーにさせて暮らす人から、「番犬・呼び鈴」として屋外につないで飼う人まで様々。その価値観は、世代や地域によって異なることも。
韓国人と犬との距離感はよくわからないけど、チョンさんが手がけた知人宅での撮影中、人間の家族同様に室内に入れてもらい、幸せそうに暮らす犬の姿も写っていたのを見て、「チョンさんちの犬も、あの立派なご自宅の中に入れてもらえないだろうか」と思わずにはいられませんでした。
、、、そんなわけで、チョンさんの素晴らしいお仕事ぶりや美しい景観に対する感動よりも、モヤモヤした気持ちだけが残った映画体験となりました。。。
あの犬が、映像には写っていなかったところで、実はチョンさんに愛され、幸せな日々を送っていることを、、、心から願います。
終盤こそ本質
造景家チョン・ヨンソンさん
冒頭、チョン・ヨンソンさんが国際造園家連盟「ジェフリー・ジィリコ賞」を受賞するシーンから映画は始まります。チョンさんは84歳,1970年代から造景家としての仕事をスタートしたそうです。造景家、耳慣れない言葉ですが、チョンさんの仕事は単に空間に植物を植え、緑化することではなく、その土地の景観や歴史、土の特徴までも考慮して空間を生かし息づかせるようです。1941年に生まれたチョンさん。日本の植民地からの解放、朝鮮戦争、長い間の独裁政権、漢江の奇跡と呼ばれた経済発展、その権力者の暗殺で訪れた束の間のソウルの春、そしてまた軍事政権が始まり…と目まぐるしく変化した韓国の現代史を造景家としての目で見て、その想いを作品に込めたのでしょう。個人的な事ですが、このところ、韓国映画で立て続けにがっかりする経験をしたこともあり、逃げるような気持ちでこの作品を観たのですが、チョンさんの仕事やお人柄を見て、ドラマとは違った雄大さ気高さを感じました。とにかく良かったです。
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