「韓国ジャーナリズムの気骨」非常戒厳前夜 Rosaさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国ジャーナリズムの気骨
昨年12月に起きた尹錫悦元大統領による戒厳令騒ぎ。
そこからまだ一年も経たないのに、もうドキュメンタリー映画が作られ、しかも日本でも公開されるのかという驚きをもって観に行きました。
観てみると、この映画は戒厳令そのものについてはそれ程、深く触れておらず、そこへ至るまでの背景について、10年以上に亘る映像、音声、そして関係者への丹念なインタビュー等を組み合わせた内容でした。
隣国の私たちには、寝耳に水、あまりにも唐突かつ荒唐無稽な出来事に感じられていた戒厳令騒ぎも、この映画を観ると、なぜそのような事件に至ってしまったのかを理解できると共に、韓国でも真っ当なジャーナリズムが、政権の圧力によってかなり窮地に立たされているのだと知ることになります。
「韓国でも」と敢えて書いたのは、もちろん我が国、日本でも同様の状況があるから。
しかし、韓国のジャーナリズムは瀕死の際にありながらも、完全に死んではいないんだなということもまた、映像を通して理解できます。
このドキュメンタリーの中心は「ニュース打破」という独立メディア。自由で独立した報道をめざして、大手メディアから離脱したジャーナリストたちが活躍する場。そしてもちろん、権力者はそれを見逃さず…
ニュース打破の代表である男性の気骨が素晴らしい。
「メディアは権力を監視するものでなくてはならない」という言い方はよく耳にしますが、それを地で行く人がサラッと言う言葉の重みたるや…
また、尹錫悦氏の過去の言動に関して報じたことをきっかけに、「名誉毀損の罪」で法廷に召喚される彼らについて報じようと集まった大手メディアの記者たちに、彼が放った渾身の言葉が素晴らしい。その内容については、ぜひこの映画を観て聴いて欲しいので、ここには書かないでおきます。
日本にも、こういう気骨あるジャーナリストがいてくれたら良いな、いるんだろうな、いてくれなきゃ!
と心から強く思いました。
