ハード・トゥルース 母の日に願うことのレビュー・感想・評価
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本心は誰にも分からない
1.はじめに:マイク・リー監督との相性
①1943年英マンチェスターに生れのマイク・リー監督は、私より2歳上なので、親近感がある。
②処女作の『ブリーク・モーメンツ(1971)』(日本未公開)以降、55年間で合計15本の監督作品があり、内10本が日本で公開されている。ほぼ4年に1本の寡作作家である。(出典:Wikipedia)
③全体の相性は「上~中」。マイベストは、『ピータールー マンチェスターの悲劇(2018)』の100点。
④6年振りの新作となる本作は、残念ながらマイワースト。
2.マイレビュー
❶相性:中。
➋時代:現代、2023年頃。2018年に亡くなった主人公の母の5回忌の年。(仏式なら2022年。)
❸舞台:ロンドン。
❹主な登場人物:
①パンジー(マリアンヌ・ジャン=バプティスト):
主人公。ロンドンに住む黒人の中年女性、専業主婦。夫と息子の3人住まい。潔癖症で、家の中は綺麗に磨き上げる。鳥や虫や動物のみならず奇麗な花でさえ直接触れられない。朝から小言ばかりで家族ともぎくしゃくしている。常に何かに苛立ち、スーパーの店員、客、歯医者等、行く先々で衝突を繰り返している。理由は何も示されない。
②カートリー(デヴィッド・ウェバー):
パンジーの夫。黒人の配管工。
③モーゼス(トゥウェイン・バレット):
パンジーとカートリーの22歳の息子。ニートで、オンラインゲームをしながらダラダラ過ごしている。
④シャンテル(ミシェル・オースティン):
パンジーの妹。シングルマザーで、自身が経営する美容院で働きながら2人の娘と暮らしている。パンジーとは対照的に明るく社交的で、家庭内では笑いが絶えない。
❺考察
①邦題から人間ドラマの感動作かと予想したが大違い。中味は原題「Hard Truths/厳しい真実、つらい現実」通り、マイナスキャラの主人公と家族関係の複雑さをリアルにそしてシニカルに描いたものだった。
②黒人で中年の主人公パンジーは潔癖症で、家の中は綺麗に磨き上げる。鳥や虫や動物のみならず奇麗な花でさえ直接触れられない。常に何かに苛立ち、夫や息子には朝から小言ばかり。外でも、スーパーの店員、客、歯医者等、行く先々で衝突を繰り返している。自分自身も含め、全ての生き物が嫌いのように見える。観客は、パンジーのような人とは関わりたくないと強く思う。パンジーの不機嫌の理由は明らかにされない。おそらく、色んな要素が積み重なった結果なのだろう。今のパンジーはそういう性格なのだ。
③マイク・リーは、そんなパンジーを否定もしなければ肯定もしない。ただドキュメンタリータッチで淡々と描くだけである。
④パンジーの対極にあるのが妹のシャンテルだ。シングルマザーのシャンテルは、自身が経営する美容院で働きながら年頃の2人の娘と暮らしている。シャンテルは、明るく社交的で気配りもあり、周囲は笑いが絶えない。
★周りを不快にするパンジーと、逆に、楽しくするシャンテルを対比させることにより、バランスが取れていることが示される。
⑤シャンテルはパンジーに、母の日(注1)に母親の墓参りに行こうとパンジーを誘う。渋っていたパンジーだが根負けしてシャンテルと墓参りに出かける。
★墓石に刻まれた日付から母が2018年に亡くなっていることが分かる。Pearlivy Montgomery 1947-2018
★登場したロンドンの墓地が荒れているのに驚いた。日本の墓地はどこも奇麗に手入れされているのと正反対である。
⑥墓の前で、パンジーはシャンテルに、「母の死体は自分が見つけなければよかった、母はシャンテルばかりを可愛がっていた、自分は家族に嫌われている」と言う。シャンテルは、「そんなことはない。私は、あなたを理解出来ないが、それでも愛している」と答える。
⑦その後、シャンテルの家で、シャンテル、2人の娘、パンジー、夫カートリー、息子モーゼスの6人が食事をする。その席で、モーゼスが母の日のプレゼントとして花を用意したことを知ったパンジーは、涙を流す。
⑧本作のラストは、腰を痛めたカートリーを仲間が家に連れ帰り、2階にいるパンジー呼びにいくが、パンジーは何かを考えていて動かないシーンで終わる。
⑨パンジーとカートリーの関係が変わることはなさそうに思えるが、モーゼスは変わる可能性がある。そこにはわずかながら希望が見える。
❻まとめ
①パンジーが不機嫌な理由は最後まで明かされないので欲求不満が残る。
②描かれた内容は、理解出来るが、共感は出来ない。
③要は、「世の中には色んなタイプの人がいるが、本心は誰にも分からない」ということか?
(注1)母の日(Mother's Day)(出典:Wikipedia)
①定義は「日頃の母の苦労をねぎらい、母への感謝を表す日」で、世界共通だが、日付は国によって異なる。
②日本はアメリカに倣って「5月の第2日曜日」。2025年は5月11日。
③本作のイギリスとアイルランドでは「イースター(復活祭。春分の日から数えて最初の満月の次の日曜日)の3週間前の日曜日)」。2025年は3月30日。
見ていて不快に
主人公のパンジーの誰かれ無しに当たり散らす様が見ていて本当に不快になってくる。自分が怒鳴られて当たられてるような気持ちになり沈む。
自分自身の体調不良や過去の傷があっても、あそこまで周りに当たり散らすのが、パンジーの家族や妹さん家族が気の毒で見ていられない。
病院でも買い物でも赤の他人にも当たり散らす。
すごく甘えがあるんやな。刺されたり殴られたりしないような相手を選んで当たってる。
ご主人はどんな地雷を踏んであんな仕打ちをされ続けるの?
優しく明るい妹さんに対しては嫉妬しかないからイラつくの?
パンジーはとても清潔好きで部屋も片付いてるけど、いくら部屋が整っていても家庭での団欒は得られない。
ご近所にあんなタイプのおばあちゃんがいるけど、もちろん当たり散らしクレーマーの彼女は一人暮らし。
パンジーは結婚して子供もいる。いつからそうなったの?幸せな時はなかったの?
「今日はしんどいから自分達でご飯何とかして」って言ったら自分らのホカ弁だけ買ってくるなんてこと、どこの家庭でもある。「あたしの分は?」と思っても心の中でしか言わないよ、頼まなかったんだから。察してプリンでも買ってこいなんて無理無理。
パンジーは諦めがないから当たり散らすのかな?そんなに不満だらけの家族なら離婚したら?って思った。
病気のおばちゃんの話
くらった。ただキツい。
イギリスの黒人おばちゃん姉妹の話。
姉のおばちゃんが健康上の悩みを抱えてる。そのためか無口な旦那、引きこもりの息子に当たり散らす。優しい妹にも当たり散らす。診断で訪れた、内科、歯科でも医者に毒づき追い出される。いやなババアをずっと見せられる地獄が続く。
終盤、ようやく意味がわかってくる。
おばちゃん、行く病院間違ってる。
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