「昔の遠い国での出来事ではありません、日本への警告です」プラハの春 不屈のラジオ報道 クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
昔の遠い国での出来事ではありません、日本への警告です
悪の帝国と言えばロシアしかない、もうすぐ4年目になりますよウクライナ軍事侵攻から。帝国主義のファシストから国を守る命題といっても、自らが帝国ってのが分かってない。遥か60年近く前に、チェコスロバキアの自由民主化を恐れワルシャワ条約機構軍として軍事侵略したのがソビエトで。まったく同じことを繰り返しているわけで、呆れるしかない。当然に本作はこの現状への当てこすりとして制作したのでしょう。
真実をいかに直接国民に伝えるかが最大のポイントで、今の日本にとっても明らかに警告ともなっている。社会主義国家の政府による検閲に抵抗し、自由な報道を目指して活動しているチェコスロバキア国営ラジオ局の国際報道部が本作の舞台。今の日本のマスコミが政府の忖度におもねっているのは明白で、だからと言ってSNSを中心に自由闊達の陰でフェイクを意図的に流すのもまた現実。検閲なんて遠い昔の事とは到底思えず、こんなことを書けば目を付けられる時代がすぐそこまで来ているのですよ、日本で。スパイ防止法なんて解釈で何とでも強権政治に結びつき、あれよあれよですよ。米国のトランプの言動をみれば恐ろしさが判りますでしょ、あのアメリカですら独裁への道にむかっているのですから。
この歴史的事件に実在の人名も出して再現する。当時の映像も多用し、フィルムにデジタル着色等の技巧を施し、新たな撮影の彩度を敢えて落としたり、違和感を極力落とす手間をかけている。局内では米国のポップスがレコードにより堂々と流され、享楽さえしている。が、厳しい検閲要求に辟易するなかでドゥプチェクによる改革が実を結ぶまでが前半で、少々緩い描写が続いてしまう。半年ばかりのプラハの春の終焉から一気に映画は緊迫感を帯び悲劇に突入する。
テレビと異なりラジオの身軽さは言うまでもなく、描かれる通り綱渡りの工夫により真実の報道に務めた。ドゥプチェクによる降伏以降の苛酷はラストの字幕で示される通り。主役のトマーシュを普通の民間人とし弟の存在をおもんばかってのスパイ行動をさせる設定は素晴らしいアイデアでしょう。知性派の報道部長ミラン・ヴァイナーは実在の人物の再現のようで、相当に反骨として描かれてますが、彼を主役としてもドラマチックに描き得たのではないかと思うけれど。
現代でしたらインターネットの時代で、誰もが容易く発信できる事が必ずしも吉とも言えず、フェイクの氾濫で却って混乱に拍車をかけるでしょう。1993年には、チェコ人とスロバキア人との間で経済や民族的な考え方の違いが顕在化し、チェコスロバキアは平和的に解体され、「チェコ共和国(チェコ)」と「スロバキア共和国」に分離独立、両国ともにEUに現在は属しています。
現代はVlnyすにわちWAVEで、ラジオ電波の波形であり、民主化の波でもあるわけで。邦題が説明調なのは半世紀以上前の事象であり致し方ないかと。
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