そこにきみはいてのレビュー・感想・評価

10年くらい前と比べればLGBTQなどの用語は随分と一般化し、認識されるようになってきたかも知れない。では、それらの人々が社会的にに許容されるようになったかと言えば、現状は程遠いと言わざるを得ない。仮に本人から勇気を出してカミングアウトしても冗談としか受け止められなかったり、気持ち悪がられたりして終わるため、まわりと距離を置きながら口を固く閉ざして生きている性的マイノリティも少なくないはず。本作はさまざまな立場でそれぞれが抱える閉塞感を淡々と描いている。

アセクシュアルで誰に対しても恋愛感情や性的意識を持てず、周囲から浮いているカオリ。学生時代に男の恋人に振られて以来、ゲイである自分の心に固く蓋を閉ざし他人と距離を置いて生きてきたタケル。似たような境遇の二人は次第に距離を縮めていくが、ずっと他人を拒否してきたタケルはカオリと親しくなるにつれ、封印してきた本当の感情を却って意識するようになる。かつてタケルの恋人だったシンゴは自分の本心から目を背け世間の目を誤魔化すかのように女性と結婚して作家として活躍していたが、10年ぶりのタケルとの再会で封印が解かれて動揺する。息子がゲイであることが受け入れられず頑なになる母親。うわべだけの付き合いで男に身体を任せても本当に愛される実感を得られず常に愛に飢えている女。それぞれがそれぞれの立場でもがき苦しんでいる。

人の指向に普通も変もない。誰しもが自分なりの心の安寧を得られる、あるいは愛を感じることができる社会こそが本当に多様性のある社会と言えるのであろうが、その実現までにはまだまだ道のりが遠そうだ。

性的マイノリティを描いた作品のようだけど、そもそも私には性的マイノリティの定義が理解できていないのが課題かも…
香里(福地桃子)と健流(寛一郎)が、最初に出会ってから仲良くなるまで(婚約するまで)の過程が、ざっくりとした流れの描写になっているので「あれっ、もうそんな仲になっているの？」と思ってしまった。このようなざっくりとした描写(というか何でこのシーンになっているの？)が、多々あったのでしっくりこなかった😭。
健流が自死した理由もよくわからなかったし、慎吾(中川龍太郎)との関係性も理解できなかった。
健流の母(筒井真理子)と香里のやり取りのセリフは、意味深かったと思う。

2025.12.4 アップリンク京都

2025年の日本映画（97分、G）
性的マイノリティの男女の交流を描いたヒューマンドラマ
監督＆脚本は竹馬靖具

物語の舞台は都内某所

会社員として働いている渡辺香里（福智桃子）は、性的なものがわからないまま大人になり、他人との関係を拒み続けていた

ある日のこと、合コン中に母の訃報を聞いた香里は、言い寄る直也（長友郁真）をあしらうものの、その理由はふざけているとしか思われなかった

母の火葬を済ませた香里は、相続放棄をするために弁護士の健流（寛一郎）と会うことになった

香里が健流にその仕事を選んでいる理由を聞くと、彼は「自分にも拒否したいものがあるからかも」と答えた

その後、気分が悪くなった健流を介抱することになった香里は、彼との距離を縮めて、自分が変われるのではないかと考え始める

健流も自分自身に大きな葛藤を抱えていて、香里との交流によって、何かが変わるのではないかと思っていた

健流には、大学時代の親友・慎吾（中川龍太郎）がいたが、疎遠になって随分経っていた

彼は小説家として活躍していて、そのトークショーにて声を掛けることになった

慎吾はすでに沙月（朝倉あき）と結婚していて、健流に会うなり「もう二度と姿を現すな」と拒んだ

映画は、それから1年が経った頃に、浜名湖に旅行に行く香里と健流が描かれていく

そこで情緒不安定になった健流は深夜に抜け出して、トウジ（緒方敦）と肉体関係を持つことになった

そして、彼はそのまま自殺をしてしまうのである

物語は、健流の「忘れられない人」を探す香里が描かれ、親友だと言っていた慎吾と絡んでいく様子が描かれていく

健流の実家に向かって、彼の母親（筒井真理子）と会うものの、婚約者だった香里に対して悪態をつく

香里も母親に対して言い返して険悪なムードになる中、慎吾は別のことを考えていた

映画は、やや観念的な感じになっていて、健流がどのようにして死んだのかは描かれない

おそらくは浜名湖に身投げをしたと言う感じで、彼の本当の姿を探る旅を続けていく様子が描かれている

だが、それがわからないのは香里と慎吾だけで、観客はとうに彼らの関係性に気づいている

それゆえに、健流と慎吾の過去と真実をミステリーにしているのは微妙な感じになっていた

どれだけ鈍感なんだろうと思いながら観ていくことになるのだが、やはり健流の心情を理解するのは難しく思う

ざっくりとした感じだと、香里との関係の中で本当の自分に気づいたと言うもので、心ここにあらずのまま過ごしていく様子が描かれていく

それでも、香里とは関係を結べず、行きずりの男と寝ても満たされることはない

ある意味、健流が拒みたかったのは「慎吾の拒絶」であり、慎吾自身もそれに気づいている

健流は慎吾に最後の手紙を残して死んでしまうのだが、それは拒絶に対する答えのようにも思えた

いずれにせよ、健流と慎吾、香里の関係に関しては深く描写する必要があると思うのだが、香里の会社の後輩・篠塚真悠子（兒玉遥）とのエピソードが必要だったのかは謎だった

真悠子がバイセクシャルなのかどうかは何とも言えないが、「香里なら何でも話せる」みたいなくだりが必要だったのかはわからない

おそらくは香里の属性と決定づける理由があると思うのだが、これまでの人生で答えが出ている香里のその深掘りには意味がないように思える

そう言った意味において、あんまり刺さるところがないなあと思ってしまった

性的マイノリティを描いている作品とは思いもせず鑑賞。

『正欲』を思い出したが構築の仕方や扱う内容は随分と違う。
ただ、共通して言えるのは人間性孤独。
わかりあえない、家族になれない苦しさ。
自分からもさまざまなチャレンジはすれど、
どうしても性的に受け入れなれない苦しみ。

しかし合点がいかないことばかり。
主人公と行動をしばしばともにする小説家。
なんで！？ばかりなのだ。

俳優陣も無表情に近い感情を抑えた演技がメイン。
物語もシーンごとに唐突感しかなく、面食らった。

これは興行的には厳しいだろうなぁ。

婚約者に突然自殺された女性が、彼のことを知ろうと親友と聞かされていた作家に会いに行く話。

疎遠だった母親らしき人物の葬儀で多数の借金がありそうなことを聞かされて、相続放棄の依頼で弁護士を訪ねて…。

婚約どころから出会いからみせて、そして作家と彼氏の関係も匂わせて、盛り沢山だなと思っていたら、えっもう婚約してんの？えっもう死んだの？ダイジェストでもみせられてます？

恋愛に対してなのかなんなのか良くわからないPTSDカップルみたいなものかと思ったら、彼氏の3回ノックからの流れでそういうヤツかよ…どころかアホな後輩も？
結局みんなそういうことかよ…な、何が低俗なのかねと言いたくなる話しだし、メイン3人の感情が全然伝わって来ないしで、自分には面白さがわからなかった。