クルージングのレビュー・感想・評価
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いわゆるLGBTQの"G"のはしりとなる映画か
今年416本目(合計1,507本目/今月(2024年11月度)22本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
映画のストーリーはちゃんとあるのですが、この映画はその成り立ち、時代からちょうど、LGBTQのうちの"G"が社会的に認知されるようになった時代と重なっていた部分もあって、そちらの方面で専らみました。
その観点ではそういう映画ではあっても極端に不穏当な発言描写はないし、現在2023~2024年とはまた違う考え方が一般的であったこともわかるし、そうした点で興味深かった映画の一つです。
もちろん映画のストーリー「それ自体」を楽しむという向きもあると思いますが、古めの映画のリバイバル放送は何らか「趣旨は自分で考えてね」ということでリバイバルされているのが普通で、私はその筋で見に行きました。
ただパンフレット等は当時の復刻上映等と言った事情から存在はせず、サイト等で当時どのような背景で本映画が上映され評価されたのか(当時はこのような評価サイトなどななかった)等知ることができたのは良かったです。
採点上特に気になる点までないのでフルスコアにしています。
ゲイでなくとも興奮
最初の方から、なんとなくデヴィッド・フィンチャーぽいなと思っていたら、鑑賞後に読んだ解説で影響関係が指摘されていて、やっぱり!となった。あの陰鬱な雰囲気はこの時代の作品から来ていたのか。
統計上ニューヨークでもっとも犯罪発生率が高まる1981年の前年の映画。エイズが世に出る前のアンダーグラウンドなゲイカルチャーが、かなり生々しく描かれており、時代の雰囲気を感じる。
とにかく撮影がかっこいい。冒頭の船の上に立ち尽くす警官の姿、アル・パチーノが上司と歩きながら密談する電車の駅の景色、真犯人とおぼしき男のアパートと向かいの公園の高低差、夜のベンチを照らす街灯。全部きまっている。
映像のキレの良さに乗せられて、ストーリー自体はけっこうサイコスリラーっぽいのに、不健康な感じが全くしない。これもこの時代ならではなのか、フリードキンの腕なのか。とにかく素直に興奮して楽しめる映画だった。
夜の街、闇の住人
ウィリアム・フリードキンがただの映画(箸にも棒にもかからない無個性な駄作など)を撮るわけない!題材の扱い方を持て余している感はややあっても、アル・パチーノのコミットも手伝って、クセのあるユニークな作品になっている。
フリードキン✕パチーノ=ホモやオカマといった差別的・前時代的な言葉と共に、エイズ以前のゲイ・コミュニティを描いた作品で、トム・オブ・フィンランドの絵を地で行くような革だらけのSMハードゲイの世界に飛び込んでクルージング。アガる選曲とともに潜入捜査アンダーカバーな日々と連続殺人が交互に展開される。にしても主人公、気楽に安請け合い・引き受けすぎ!共演はポール・ソルヴィノ、カレン・アレンなど。
時折ヘンテコ。個人情報保護もへったくれもない時代の人権無視捜査に、夢描写のある"夢か現か"映画が最近自分の中で続きすぎて、夢かと思った黒人男性ビンタ。そして、人何人も殺しておいて刑期8年は短すぎだろ(=当時の社会的地位・共通認識としてのゲイの人の命の軽さか)!からの意味深なラスト…。犯罪の動機は何か?真犯人は誰か?また、思想犯・模倣犯のように誰でも替えの利く存在なのか?引き継がれていく"ホモ狩り"。主人公の彼女が最後にあの服装をするのも、主人公が鏡の中の自分と対峙した後にこちらを見てくるのもそういうことを示している。
公開当時不評だった理由も、近年映画人から言及されるなど一部でカルト的な人気を博し再上映の機会が増えている理由も少し分かる気がしたし、自分としては普通に楽しめた。
地下クラブ「コックピット」
蒸発してみないか?任務が終わる頃にはこの世界の情報通た
I love it!
You made me do that.
これはゲイに対するひどい差別だ
Welcome to a detective division.
♪It's So Easy / Willy DeVille
ハードなのはアソコだけでいいんだよ!
宣伝写真とか予告編とかで粗雑な見た目の印象を受けたので不安だったけど、目が離せないくらい良い映像だった。意味はよくわからなかったというか、サスペンスが伝わってこない気がした。確かに当時あまり良く知られてない文化みたいなものが怪しげでハラハラするという考え方はあるだろうけど、それだけじゃつまらないと思う。結局、傍観者の視点ばかりで当事者的な説明も何も無いから、誰にも共感できなくてハラハラもしない。面白かったかもしれない話を遠くから撮ってるだけみたいな感じになってる気がした。
まあ、連続殺人事件とか若い警官の潜入捜査とかの何が興味深いのか、もっと掘り下げてほしかった…と言うと偉そうだけど、仕事だからってホイと知らないセックスクラブとかに行って難しそうな顔してるだけで何事もなく過ごしてる様子が意味不明というか、葛藤とか不都合とか無いの?て思ってしまう。無いなら無いで「不思議だね」みたいな描写を入れて欲しいというか、色々と不可解すぎる。潜入捜査が辛くなってきたというくだりも印象薄すぎるし、大して誰かを騙してもないくせに何が辛いんだよと思ってしまった。てか自分のセクシャリティが揺らいだことが辛い、てことを示唆してる感じだったけど、そういうのは潜入捜査の初期から葛藤を始めるもののような気がするし、終盤にいきなり辛くなるのは意味がわからない。ていうか潜入捜査中に被害者が増えてることについての焦りや罪悪感は無いのか?(笑)
あと殺人事件も犯行も死体も曖昧すぎてあまり怖くない。「自分も殺されたらどうしよう」みたいに不安にさせるようなところが微塵もない。せめて、犯人がとてつもなく優しいけど急に刺すとか、見る人が恥ずかしくなるくらい淫靡なところで刺すとか、複数人とヤッて皆殺しにするとか、バリエーションとか犯行の技巧があれば印象が残るのでは…と腐った妄想しかできませんが、ゲイもハードで警官もハードで何から何までハードボイルドだったら見る人の取り付く島が無いと思いました。
ハードゲイ
という言葉を日本人に知らしめた問題作です。
ハードゲイを題材とした犯罪映画なので、最近流行の同性愛自体を主題に据えた作品を避けている私も拒否感はありません。
何といってもポパイ刑事とリーガンちゃんを演出したフリードキン先生ですから、重量級の猥雑さは天下一品です。暗部をグリグリえぐるような独特の雰囲気なので好き嫌いははっきり別れますが、70年代の問題作の一つである点は間違いありません。
確かに脚本が破綻している部分が散見されていますが、最近の何言いたいんだかよくわからない作品(PTA、ノーラン、キューブリックなど)を珍重する傾向からすればおとなしいもんです。
観たかった度○鑑賞後の満足度△
ハードゲイの世界に取り組んだ当時としては異色の映画だったけれども、結局キワモノ映画の域を出ず。今の時代なら相手にされないでしょう。ストレート(ノンケ)が自分の中のゲイに気付く過程を描くという意図が制作側にあればまだしも、そこまで深くないし。
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