劇場公開日 2005年3月26日

クライシス・オブ・アメリカ : 映画評論・批評

2005年3月15日更新

2005年3月26日より全国ユナイテッド・シネマにてロードショー

これはデミ一流のユーモアである

まず確かめておきたいのは、これが62年のジョン・フランケンハイマー監督作「影なき狙撃者」のリメイクってことだ。原題は「The Manchurian Candidate」、つまり「満州の候補者」。満州へ拉致された米兵士が共産国の刺客へと洗脳され、帰国後、政治の中枢部へ送りこまれるという筋だった。記憶操作のサスペンスとして先駆的であるのは認めよう。しかし何度観ても僕には反共プロパガンダとしか思えぬのだが。

今回、舞台は朝鮮戦争から湾岸戦争に置き換えられたが、そこは左派ジョナサン・デミ。黒幕は共産主義でもフセインでもなく、アメリカの内なる敵……軍事企業だ。思想的には180度の転換であり、誰もがイラク戦争におけるチェイニー副大統領の疑惑やブッシュ一族を思い浮かべるに違いない。

でもこれはデミ一流のユーモアである。企業に“マンチュリアン”と名付けただけで原題に沿う、といった安易さがそれを物語っているし、そもそも電話1本で催眠状態になるなんて今やパロディでしか通用しないだろう。今回、デミがクローズアップしたのは、近親相姦的なまでに息子を盲愛する母親の狂気だ。オリジナルのアンジェラ・ランズベリーも怪演だったが、本作のメリル・ストリープは輪をかけて恐ろしい。「めぐりあう時間たち」といい「アダプテーション」といい、彼女は現在こそピークを迎えているような気がする。

(ミルクマン斉藤)

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