劇場公開日 2025年8月16日

「主張は至極尤もだけれど」ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 主張は至極尤もだけれど

2025年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 近年では日本でも漸く取り上げられる事が増えて来た PFAS (ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物: 有機フッ素化合物)汚染に抗議する沖縄の女性達の運動を追ったドキュメンタリーです。

 沖縄駐留米軍はその有害性を認識しているにもかかわらず、高濃度のPFASを含有する消火剤を大量に自然界に廃棄しました。それが地中に浸透し、付近の水道水中にも含有されている事が明らかになっています。その非道を地元の女性らは県に政府に世界に訴え始めたのでした。

 その訴えは抗議は尤もで、対応が遅く甘い日本の環境行政は指弾を受けるべきでしょう。しかし、どうしてこの運動する女性にのみ焦点を当てるのか少し違和感を覚えました。実際にこの抗議運動には男性の参加者は少なく、女性中心に動いているのでしょうか。或いは、監督は女性に焦点を当てたかったのでしょうか。男性だって黙ってないと思うんですけどねぇ。

 更に、この運動の動機付けとして「子供の命を守る = 母親」という主張が強調され過ぎている様にも感じました。個人の主張としては理解できますが、作品中でそれが固定化する事は女性の役割分担の様に映らないでしょうか。環境保護は大人も子供も男も女も皆の問題です。子供を守るのに男も女もありません。でも、実際の運動はそうではないのかな?

 そして、化学工業に携わって来た者として少し気になった事。本作では、PFAS・PFOS・PFOA がそれぞれ分けて述べられていますが、一般の人々にはそんな事が理解できる筈はなく、何となく「フッ素 = 悪者」のイメージだけが残るのではないでしょうか。「フッ素全廃」などという単純な流れが出来る事は決して健全ではない様に思います。

La Strada