「行き詰まりのアメリカ社会の断層」クラッシュ(2005) Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
行き詰まりのアメリカ社会の断層
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人種差別と銃社会の問題を抱えたロサンゼルスを舞台に、様々な階層の人々の意識と行動を見つめ、アメリカ社会の歪みをクローズアップした意欲作。最後まで興味深く観たが、最も差別意識が低い警察官が勘違いとは言え黒人少年を射殺することや、黒人差別排除の為に失職した父に同情して、取り調べ中の黒人の婦人にセクハラする事と、偶然にも交通事故に遭ったその婦人を命からがら救助する脚本の創作が、あざとい。それも事実に基づいた現実の再現である作者の意気込みは充分理解するが、群像劇のドラマとしてよりドキュメンタリーで表現したほうが説得力を持つのではないか。登場人物のほとんどが神経症的表情で救いがなく、未来への希望を持てない暗いイメージが固定化されている。俳優の演技を楽しみ味わう題材ではない。
これは自国のアメリカ人の為に作られた問題提起のメッセージ映画であり、日本に安住するものには限界がある。
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