書けないんじゃない、書かないんだのレビュー・感想・評価
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壮大なまぐれ当たり
テンポが良い反面、説明不足な面も
結婚を機に夫の故郷に移り住んだ芥川賞作家のヨメと、天才小説家を自称する小姑が同居することで始まるストーリー。
芥川賞以来書けないヨメ vs 自称天才小説家の義姉との激しい戦いが前半に描かれていき、それが両者引けを取らず激しく言い立てるので、どちらにも感情移入できず、なかなか見ていて辛い。
ただ一方で無駄な描写や時間稼ぎの演出がないため、テンポよく後半に流れ込んでいく勢いのある見せ方はとてもよかった。
そして朱莉にも晴海にも応援できないまま終わっていく。それはそれで不器用さがリアルに描かれていると言えばそうなのだけど、やはり「普通、人が言わないセリフ」が多いため、共感にまで結びついてこない。
「ヤレヤレ」と3回ぐらい言わせるのは何故なのか。
駆けないんじゃない、欠けないんだ
デビュー作以来書けない小説家と、デビュー作すら書かない自称小説家の小競り合いの話。
思ってた以上に漫画的な作品だった。
台詞や動きもそうだし、説明的な独り言の多さなども、全体的にアニメ向きの脚本に思える。
それをギリギリ実写として成り立たせてたのは役者陣、特に晴海役の大須さんの力が大きかった。
(メジャー作品ならのんがやりそうな芝居)
相手をネタに小説を書くくだりは、名作『ミセス・ノイズィ』を思い出した。
登場人物もロケ地もかなり絞られた中で、テーマはそこそこ掘り下げられている。
回想を挟むタイミングも上手い。
ただ、小説家を志す動機や書けない苦しみ、祖母を喪った哀しさなど晴海の心理はやや厚み不足。
落とし所としての2人のやりとりや、ラストカットの「逆襲開始」はとてもよかった。
それだけに、そこに到るまでのエピソードの蓄積が物足りなかったのも惜しい。
朱莉の「書きたくない」もやや唐突。
もう30分あれば、この辺を補ってよりよい作品になってたのではないかな。
沸点の低いご年配の笑い声は響いていたが、個人的には笑いもツボにはハマらず。
とはいえ後味もよく、60分を切る作品としては佳作。
冒頭の田園風景や終盤の川辺や山など、監督の地元ということで要所の景色も綺麗だった。
人間失格vs小説家失格
初めて書いた小説が芥川賞を獲ったがその後書けない小説家であるヨメと、書いたこともない自称天才小説家のコトメの話。
結婚してダンナの実家で暮らすヨメのもとに出版社がプレッシャーをかけてきて巻き起こっていくストーリー。
あらすじ紹介に記されているコトメの経歴はなかなか示されないけれど、書きもしないし本も読まないニートのコトメが、何かとヨメにイチャモンをつけてくる展開で、それはザコだから良いけれど、何かとプレッシャーを感じているヨメという流れからの、いよいよ執筆し始めて…。
コミカルさが強めの作りの中に、しっかり機微が織り込まれているし、話しの流れも分かりやすいしテンポも良いし。
そして最後もそう来たかというお見事な締め。
とても面白かった。
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