劇場公開日 2025年12月5日

WIND BREAKER ウィンドブレイカー : インタビュー

2025年12月12日更新

水上恒司×木戸大聖×八木莉可子が語る実写化の挑戦 拳に込めた“変化”と座長の愛ある“いじり”

水上恒司(中央)、木戸大聖(右)×八木莉可子(左)
水上恒司(中央)、木戸大聖(右)×八木莉可子(左)

人気不良マンガを実写映画化した「WIND BREAKER ウィンドブレイカー」(監督:萩原健太郎)。主人公・桜遥を演じる水上恒司、楡井秋彦役の木戸大聖、そして橘ことは役の八木莉可子が、実写化ならではのリアリティへの追求、物語を紡ぐアクションの意図、そして撮影裏での水上の座長ぶりや、キャスト同士の信頼関係が垣間見えるエピソードを語り合った。(取材・文/磯部正和、写真/間庭裕基)


【「WIND BREAKER ウィンドブレイカー」あらすじ】

画像2

ケンカだけが取り柄の孤独な少年・桜遥は、不良の巣窟と恐れられる風鈴高校のてっぺんをとるべく、街の外から同校に入学する。しかし現在の風鈴高校は生徒たちが「防風鈴(ぼうふうりん)=ウィンドブレイカー」と呼ばれ、街を守る存在となっていた。ケンカは弱いが情報収集に長けた楡井や、防風鈴の総代を務める梅宮、クールでミステリアスな蘇枋、梅宮を崇拝する荒くれものの杉下、梅宮を支える武闘派の柊ら個性的な面々と出会った桜は、戸惑いながらも防風鈴の一員として、仲間たちとともに街を守るべく奮闘する。そんなある日、力の絶対信仰を掲げる凶悪な集団「獅子頭連(ししとうれん)」が、防風鈴を新たな標的に定めて動き出す。


画像3

●原作漫画へのリスペクトと、生身の人間が演じるならではのこだわり

――原作が大変人気のある作品の実写化となりますが、生身の人間が演じるという部分で、意識したことや大切にしたことを教えてください。

水上恒司(以下、水上):まずは、漫画やアニメだからこそ成立しているものを愛してくれている原作ファンの方々、アニメファンの方々がいらっしゃるという前提があります。そういった方々にも「実際の生身の人間がやったらこうなるよね」というような、我々が見せるべき仕事、務めのようなものをしっかり果たしたいと思いました。

もちろん、その良し悪しを判断するのは監督ですが、提示する僕らにもある程度の責任があるので難しい作業でした。一つの例を出すと、僕が演じた桜の「照れ」や「恥ずかしい」という感情です。

実際の人間がやったら、漫画やアニメのような表現にはならないですよね。そういったことを、いかに自分事に置き換えた時に鮮やかに見せられるか。それが一番大事だと考えました。今回は漫画とアニメが先行して世の中で反響を生んでいるものを実写化するということで、そこが一番ネックになりつつも、見せ場でありやりがいだと思いながら演じていました。

画像4

木戸大聖(以下、木戸):そうですね。やっぱり漫画やアニメならではの伝わる部分と、僕ら俳優がやる実写だからこそ伝わることっていうのはあると思うんです。それをすごく大事にしたいというのが第一にありました。

もちろん、にいさとる先生が書かれた「WIND BREAKER」という原作へのリスペクトを持った上で、僕が演じた楡井であれば、過去に挫折や苦悩があったからこそ、今それが奮起する原動力になっていたり、強い言葉や姿勢を持てるようになったりしていると思います。今を生きる人たちに、僕らが演じることで刺さったり、伝わったりするところを大事にしたいですし、それが実写化の醍醐味なのかなと思ったので、演じる上で大切にしました。

画像5

八木莉可子(以下、八木):私自身すごく悩んで、最初は迷いました。監督ともすごく話をさせてもらいましたし、実際に原作を読み、アニメも観ました。本当に素敵な原作で、私も読んでいてファンになり、大好きになった作品でした。リスペクトを置きつつ、人が演じるにあたって変わる部分やリアリティを持たせるところ、そのバランスをどうするか。人が演じる『WIND BREAKER』として作り上げていくにあたり、最後まで「このシーンはどうしたらいいんだろう」と考えることがすごくあって。そのたびに相談させてもらっていました。外観なども原作やアニメからは少し変わっていて、新しいものにもなっていたりするので、少しオリジナルな世界ができている分、ことはも、ここは変えようかなというところがあったり……そのたびに微調整して相談してという感じでした。

画像6

――そういう作業はいかがでしたか? 楽しい作業でしたか、それとも難しい、苦しいという感じでしたか?

八木:やっぱり「大変だな」と思うことの方が多かったです。自分も漫画を読みますし、原作が好きな方の気持ちもわかります。その分、私が、ことはをうまく演じられるだろうかという不安の方が大きくて、「楽しい」と感じる余裕はなかなかなかったかもしれません。

――出来上がったものを見た時はどんな気持ちでしたか?

八木:「わあ、すごい!」と思いました。映画ならではのかっこよさが出ていて、観終わった瞬間すぐ監督のところへ行って「すごくかっこよかったです!」って言いました。アクションシーンも、実際に皆さんが練習されて生まれた躍動感あるシーンというのは、すごくリアリティがあってかっこよかったです。

画像7

●拳に込めた意味と、変化の可能性

――アクションシーンも、それぞれのキャラクターの個性が感じられる“お芝居”になっていたと思います。それぞれ役割が違うと思いますが、桜や楡井として、アクションで意識した部分はありますか?

水上:原作は現在進行形でずっと続いていますが、とても短い期間を2時間で表現しています。映画を作る際、起承転結をベースに人間が変わっていく様を表現するのがオーソドックスだと思いますが、今回の桜に関しては、そこまでの大きな変化はないんじゃないかなと僕は思ったんです。台本を頂いた時からそう感じていました。

「でもおまえの中にはその可能性があるんだぞ」と教えてくれる人間が周りにいること、そして桜自身がそういった可能性を秘めた人間であること。

防風鈴という風鈴高校に入ったことによって出会った仲間たちの影響を受けて「さあどう変わっていくか」という“可能性”を感じさせる映画だと僕は思っています。なので、アクション自体を大きく変えてはいませんが、観るお客さんが受ける印象として、「桜が拳を振るう理由はこれから変わっていくんだろうな」と感じてもらえるようなアクションを意識しました。

画像8

――短い時間経過の中で、拳の向かう先が変わっていく可能性を感じさせるというのは興味深いです。

水上:人ってそんなに簡単には変わらないと思うんですよ。変わるんだとしたら、多分とっくに変わっている。それぐらい根が深いのが人間だと思います。だからこそ、そういった人間が変わっていく姿に人は感動し、心が震えるんだと思います。今回の映画の中では、そこまで完全に行きつかなくてもいいんじゃないのかなというのが僕の解釈でした。

木戸:彼が言ったように、桜の長い時間で見たら変化していく過程の、一部分を描いていますよね。僕は今回、桜の変化のきっかけとなる「針の痛み」程度のものなのかもしれませんが、楡井がやられている姿を見せることが大事だと思っていました。僕はアクションの中で「受け」が多かったのですが、桜の目の前で楡井が獅子頭連にやられている姿が、桜にどれぐらい影響するか分からないけれど、ちょっとチクッとなることが役割として重要だなと。

桜が助けに行こうとする動きのエネルギーになったり、そこから防風鈴というもののスタイルに桜がちょっとずつ寄り添っていく、その一歩になればいいなと思っていました。だから、特に桜がいるシーンでは、桜の視界の中で楡井のやられている姿がどう映っているんだろうということを、逆算して考えて演じていました。

画像9

――ひとりひとりが自分の役割を果たすことで、互いに影響を与え合っているのが俯瞰で見えて面白いですね。チームワークの取れた現場だったように感じますが、共演されてみていかがでしたか? 木戸さんと八木さんは以前も「First Love 初恋」で共演されていますよね。

水上:「First Love 初恋」は観ました。八木さんが他の男に告白されていて、それを上から見ている悪そうな木戸さんが好きなんです。キュンキュンしましたとかではなく、悪い顔が好きだったみたいな……。イタズラっぽく「うわ、告白されているよ」みたいな。で、結局その2人が結ばれる話でしょ? まあそこはもういいやと思って(笑)。

一同:(笑)。

画像10

■座長・水上の「いじり」と現場の絆

――水上さんは八木さんとは初共演ですが、お芝居してみていかがでしたか?

水上:八木さん、アクションやりたいんですか?

八木:え? 急にインタビューですか?(笑)

水上:いや、先程のお話で、周りがボロボロになるまでアクションやっていたじゃないですか。それを見てやっぱりやりたいと思うんですか?それとも「私はいいや」ってなるんですか?

八木:昔は体を動かすことが好きなのでいつかやってみたいと思っていたんですけど、皆さんがやっているのを見ていると大変そうですよね。

水上:やらないんですか?

八木:話が違いますよー! 聞かれていることと(笑)。ずっとこうやっていじられていました。基本イジりベースの人なんです。

画像11

――現場でもそんな感じだったんですね。水上さんは座長としてムードメーカーだったようですが。

水上:これはもう座長の務めでしょう。人をいじり倒すっていうことは。でも八木さんの思い出でいうと、本編ではカットされているのですが、八木さんには思い切り肩を叩かれましたからね。

――どんなシチュエーションだったのですか?

水上:劇中で、ケンカをして怪我をした桜が街を出て行こうとすると、ことはが手当てしてくれようとするシーンがあるんです。僕は意地を張って行こうとしないんですが、やっぱり愛情を受けたいと体が無意識に反応しちゃっている。でも頭と心は動かない……というシーンで、ことはに「パーン!」って肩を叩かれるんです。
八木:そんな強く叩いてないですよ! 目が合うたびにずっと言ってくるんです……。

水上:強すぎたからカットされたのかも。

八木:違いますよ(笑)! 湿布渡したじゃないですか! 「ごめんなさい」って書いて。

水上:ごめんなさい。でもそういうときは、湿布じゃないんですよね。氷なんですよ。

八木:うるさいなあ(笑)。

水上:(笑)。でも真面目な話をすると、ことはという役を作るのはめちゃくちゃ難しいなと思っていました。誰がやろうと難しい。そこに対し、先ほどもおっしゃっていましたが、果敢にいろんなことを調整しながら、本当に微妙で繊細な作業を監督とセッションして、諦めずにずっと立ち向かっていた姿はすごく覚えています。木戸さんはいろいろなところで話しているから印象を言わなくても大丈夫(笑)。

八木:木戸さんって呼んでいるんですか?

木戸:そうなんです。どんなにイジってきても「木戸さん」って呼ぶんですよね(笑)。

画像12
画像13
画像14

――体育会系な感じですね。木戸さんと八木さんは久々の共演でしたが。

木戸:久しぶりでしたし、なんかすごく変な感じというか……以前別の作品(『First Love 初恋』)でやった時が長期間で。二人で、死に物狂いで乗り越えるという期間を経ての今回だったので、「同志」みたいな感覚なんです。今回は役どころも全然違いますし、面白かったですね。最初のシーンで変な緊張感もあり、懐かしさも感じながら演じました。一緒のシーンは多いわけではないけど、すごく懐かしさを感じる貴重な時間でした。

八木:そうですね。私は水上さんもですが、今回初めて共演させていただく方がすごく多くて、最初は緊張していました。その時に大聖くんがいてくれたので、たくさん話しかけていました。現場でも優しく話してくれて。大聖くんが言っていたみたいに、私もなんか変な気持ちで……前の作品は準備期間含めて長かったので、存在が心強かったです。あと、一緒のシーンの時とか、前の現場を引きずるわけじゃないですけど、「何年か経ってすごく下手くそになったな」と思われたらどうしようとか考えちゃいました。

木戸:ちょっと分かる気がする(笑)。

八木:「全然前と一緒じゃん」と思われたらどうしようとか、そういう緊張感もありながらでしたね。

画像15

――最後に水上さんから、作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

水上:人の痛みだったり弱さだったり、誰しもが共通して持っている、あるいはこれから感じるであろう普遍的なものを大事に描いてきた作品です。アクションはもちろん見どころですが、それと同じくらい、もしかしたらそれ以上に人間ドラマの方を制作の我々としては大事に作ってきました。そういった部分で、見ていただいて感じるものがあったら嬉しいです。

でも、そこまで深く考えなくても、大変スカッとする映画になっていると思うので、何も考えずに見ていただけたら。そして観終わった後は、みんな八木さんのファンになると思うので、よろしくお願いします。

八木:それも相当イジってますよね(笑)。

画像16

“観る楽しさ”倍増する特集をチェック!

「WIND BREAKER ウィンドブレイカー」の作品トップへ