「20年来変わらないS・ベイカーの弱者への暖かな視線」プリンス・オブ・ブロードウェイ sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
20年来変わらないS・ベイカーの弱者への暖かな視線
ニューヨークに暮らす移民たち 偽ブランド品の売買で生計を立て、時に酔っ払い、口汚く罵り合ったりと決して褒められた生活ではありません。もちろん犯罪行為は良くないのですが、根っからのワルは登場しません。
育児放棄をしてしまうリンダは、母親との会話の中では落涙するなど、本当は優しい心の持ち主だと想像できます。ただ日々の荒んだ生活とバカな男の支配から抜け出せずにいるようです。
一方父親役を押し付けられたラッキーは、DNA鑑定の結果を自分では開封出来ません。赤ちゃんのプリンスの世話にあれだけウンザリしていたはずなのに。
自分の子でないと判明した時点で、プリンスを放り出しても問題ない訳ですが、そうすることに恐れを感じているのです。心根の優しい人物です。
ラッキーのボスのレヴォンはアルメニア系移民で、アメリカでの永住権を得るために偽装結婚をしたようです。その後奥さんのことを本当に好きになったのに、彼女は出て行ってしまうという辛い境遇です。
ラッキーのDNA鑑定結果は彼が開封することになりましたが、(推測ですが)事実とは違う内容をラッキーに伝え、報告書を自分のポケットにしまい込みます。レヴォンの心遣いがしみる素晴らしいシーンです。
店の壁にプリンス作の赤マジックの落書きが貼ってあるというのも、レヴォンの無邪気な遊び心でほっこりします。「アノーラ」のカレン・カラグリアンの出色の名演です。
プリンスの意表を突いた演技?や希望に満ち溢れたラストシーンも含め、「拾いもの」を軽々と超える素晴らしい作品です。
カラグリアン、若いデニーロみたいにかっこいいですよね!他の3本も見て全部良かった(フォー・レター・ワーズは微妙でしたが、カラグリアンが出ていて嬉しかった)です!