「ルーララー」パトリックとクジラ 6000日の絆 ぷにゃぷにゃさんの映画レビュー(感想・評価)
ルーララー
イルカやクジラと泳ぐというと、ジャック・マイヨールを連想する。映画「グラン・ブルー」のモデルになった人である。別の映画で、浅い海の底で坐禅を組んでるところを見た。恐ろしい程、息をしないでいられる人である。そんな素潜り名人マイヨールを取材した、「クジラが見る夢」という本を以前読んだが、彼はザトウクジラと泳いでいた。マイヨールは、本当はシロナガスクジラと泳ぎたかったらしいが、やはり出会うのはめちゃくちゃ難しいようだ。そのへんはパトリックとかぶってる。パトリックの泳ぐ姿を見ていたら、マイヨールを思い出した。二人とも海を愛し、海に愛された人なんじゃないかな。
陸上の生物は重力に支配されているが、海洋生物は水のおかげで重力からは自由だ(深くなれば水圧はかかるが)。その巨体が立ち姿で眠る姿にほっこり。息を時々ぽっちり吐く。泡がぽぽっと上昇する。あの泡を顔に受けたい。ああ、なんと平和なのだろう。
クジラは愛情深く、穏やかで、共感力が高いと思う。家族の絆も強いという。集団座礁も仲間を守ろうとするあまりに起こってしまうのかもしれない。人間が海で動きまわるのも原因なのだろうか。原因がわかり、対策が取れることを願う。
パトリックがカメラをマッコウクジラに取り付けようとして、拒絶されてしまう。それまでとても仲良く泳げていたのに。やはり、気負いが全身に漂っていたのかな。失恋したみたいに悲しそうな顔をしていて、かわいそうだった。でも、終盤、唯一音楽が入った、クジラと見つめ合い泳ぐシーンは、最高にきれい。遊び心もあって、とても良かった。
クジラは脳が大きい。一体、クジラは、その大きな脳で、どのように世界を捉えているのだろう。同じ哺乳類でも、記憶や感情は、ヒトとどのように違うのだろう。とても知りたい。クジラの思考を翻訳する機械があったらいいのに、と、パトリックも言っていたが、激しく同意。海は宇宙と同じくらい、未知のものにあふれている。広く深く、海中を渡るクジラは、人類が及ばないような深遠な哲学者かもしれない。哲学者は歌う。ルーララー、宇宙の風に乗るー。って歌ってる可能性もあるかも!?