劇場公開日 2025年8月22日

「徒手空拳で権力に立ち向かう熱血弁護士に胸が熱くなる」大統領暗殺裁判 16日間の真実 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 徒手空拳で権力に立ち向かう熱血弁護士に胸が熱くなる

2025年9月2日
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鑑賞方法:映画館

韓国の近現代史を語る上でとても重要な年 1979年。10月26日に当時の現職大統領 朴正煕(パク•チョンヒ)がKCIA部長の金載圭(キム•デギュ)によって暗殺されます(10•26事件または宮井洞事件)。これにより、「ソウルの春」と呼ばれた民主化機運が一時的に高まりますが、それもつかの間、12月12日、事件の合同捜査本部長としての権限を持っていた全斗煥(チョン•ドゥファン、本作では別名になっていますが)が軍内部の秘密結社「ハナ会」を率いてクーデターを起こし(粛軍クーデター)、その後、なし崩し的に権力を掌握してゆき、これが翌年5月の軍による民衆弾圧「光州事件」に繋がるところとなります。

この作品は朴大統領暗殺の実行犯のうち、唯一の軍人だったパク•テジュ(演: イ•ソンギュン)が軍事法廷で裁かれる裁判を描いた物語です。この勝つ見込みが限りなく小さい裁判でパク•テジュの弁護を引き受けたチョン•インフ(演: チョ•ジョンソク)の視点を中心に物語は語られることとなります。おそらくこの弁護士チョン•インフは架空の人物なのでしょう。この弁護士が影で軍事法廷を操っているチョン•サンドゥ(本作における全斗煥の別名 演: ユ•ジェミョン)によって最初から死刑が確定していると思われるパク•テジュの命をなんとかして救おうと奮闘努力する姿は胸を打つものがあります。それにしても軍人といつのは因果な商売です。パク•テジュは上官の命令に従い、職務を遂行しただけなのですから。チョン弁護士も彼の実直な性格や軍人としての矜持を見てこの人の命は絶対に助けなくてはならないと決意したのだと思います。

私は正直に言いますと、この作品の中心人物の3人、すなわち、熱血弁護士のチョン•インフ、実直で信念を貫く軍人 パク•テジュ、権力の中枢にいてそれを濫用している この作品における悪役 チョン•サンドゥの3人ですが、その描き方がいかにも類型的で陳腐だなとの印象を持ちました。でも、これまた正直に言いますと、この映画はけっこう好きです。特に弁護士の熱血ぶりには大いに心惹かれました。なんか昭和っぽい感じ。芝居も少しクサいですし。

結局のところ、史実とフィクション部分の組み合わせが絶妙だと思います。歴史モノと思って観ると少し軽い感じがするかもしれませんが、なかなかよくできたエンターテイメント作品だと思いました。

Freddie3v