劇場公開日 2025年8月22日

「あの時代のピースがまた1つ埋まった感覚」大統領暗殺裁判 16日間の真実 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あの時代のピースがまた1つ埋まった感覚

2025年8月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1979年後半から1980年5月までの韓国は激動の1年だった。軍事独裁を続けていた大統領が暗殺され、新たな軍部がクーデターを起こし、それに反抗して立ち上がった民衆が新たな軍事政権に虐殺される。本作は、そんな1979年に起こった大統領暗殺に関わった軍人の裁判を映画化したもの。
ずいぶんと狭いところを狙ってきたなという印象だったが、ちゃんと見ごたえはあった。大統領暗殺に関わった人間は複数いたが、このパク大佐だけが軍人。だから、1人だけ軍事裁判にかけられるという歪な裁判だった。長いこと軍事独裁政権を担ってきた大統領が暗殺されたから世間的には歓迎ムード。でも、新しい軍部強硬派がすでに台頭しているという流れ。だから暗殺に関わった人間を英雄化することは避けたいということだ。弁護団に対する妨害工作も激しくなっていく。観ているこちらは軍部の強硬派に対する怒りや憤りが高まっていくばかりだ。法廷劇ではあるが、法廷劇っぽくはないのは軍のそんな姿を描いているからかもしれない。
本作を観て強く感じるは軍隊のメンタリティへの違和感だ。裁かれる大佐の意固地さ、再度クーデターを試みる強硬派の歪んだ正義感や権力欲、どちらも理解ができない。そんな中、主人公の弁護士の行動に驚いた。当初かなり強気な態度だったのが、最後の最後に全斗煥(役名は違うけど)相手にあんなことするなんて。自分だったらそんな行動をとることができるだろうか。他の人にはどう映ったかわからないが、自分はとてもカッコいいと思った。さすが、あのお父さんの息子だよ!と。
ただ、歴史的事実を元に描かれている物語なので、スッキリする終わり方ではない。でも、あの時代の歴史のピースが一つ埋まる感覚があった。男の友情が描かれたという意味でも、あの時代の暗部が描かれたという意味でもいい映画だった。

kenshuchu
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。