「何故かチャップリンぽさを感じました」トリツカレ男 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
何故かチャップリンぽさを感じました
とても素晴らしい映画です。平日ってこともあるけど、劇場がら空きなのが勿体ないぐらい。派手な戦闘なんてものはなく、登場人物はみんな良い人。もちろん悪役に見えたツイスト親分も勿論含めて。
主人公?(語りはネズミのようだけど)のトリツカレ男、ジュゼッペは色んな物にトリツカれ、あれをやったりこれをやったり、ふらふらとした尻軽男に見えたけど、どれもこれも極め尽くした上で転身するハイスペック男。一瞬、そんな訳あるか!と思ったけど、とことんソレにトリツカれて努力を惜しまなければ、誰にでもその可能性はあるんだろうか。
その何の関連も無さそうに見える歌や探偵業なんかが、普通の映画にもある伏線引きになっているのが面白い。そう思えば普通の映画と変わらないんだけど、「トリツカレ」というキーワードのお陰でそう感じない仕掛けになっているような気がする。
そして、いわゆる「片恋相手の女性の片想いの男性の代役をする」エピソード。後半の、彼女のためにタタン先生を演ずるところ。漫画「ブラックジャック」でも紹介されたネタですけど、やれやれ、それを丸パクリしちゃったのかな?と思ってたら、最後には素晴らしいアレンジが待っていた。これにはめったにないぐらい感動しました。これは亡霊が登場したのか、それともジュゼッペがガラスに映る自分を本人と勘違いした幻なのか。高熱だし。でも、これには予測つかなかった。そして、タタン先生もこれまた良い先生すぎる。子供達の食事や健康管理まで気を配っているのか。
アニメーションも鬼滅なんかの美麗な最新技術とはまた違う、これぞイラストというべき味わい深さ。美麗な映像も激しいバトルアニメも良いけど、こういう味わい系も良いんだよとか自慢したくなる。登場人物もみんな良い人。レストランのオーナー、あれだけ店が荒らされちゃっても、なんて寛容な人なんだろう。そして歌の上手すぎないミュージカルなのが、なんか好き。そしてユニークな動きと、ほっこりする二人の出逢いのエピソードが、なんとなく懐かしいチャップリン映画を思い出した。なんとなくです。個人的価値観です。
エンドロールも、まあ普通の演出だけど、登場人物のその後の様子が描かれているのが好きです。私の好きなカーテンコールの役目を果たしていると思います。お母さん、挙げ句の果てにあんな大舞台に立っちゃったのか。そして、流石はネズミ。子だくさんで幸せそう。
声もよかった。みんな良いけど、特に上白石萌歌さん素晴らしい。最近、活躍が目覚ましいし、どんどんお綺麗に成っていくなあ。
あと、根本的なところ。「トリツカレ」って、いわゆる「恋」とか「愛」とか、そういうことだと思うけど、それだとチープだし、「トリツカレ」の方が意味が深いような気もする。あるいは、モノに支配されるって感じかな。幽霊だと「取り憑く」と書くのか。ジュゼッペくん、タタン先生に取り憑かれた感じになっちゃったけど。でも、あれだけ夢中になれたら自分もジュゼッペくんのように何でも極められるんだろうか。「トリツカレ」というか「恋」「愛」というか、ソレをとにかく好きになることかもしれない。何か上手になりたいとき、ソレが上手くいかないとき、とにかく好きになる他はないかもしれない。それをこの映画が教えてくれたような、そんな気がします。
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