「【”トリツカレ男の無償の献身。そして齎された幸。”今作は、一目惚れした風船売りの女性の憂いを無くし晴れやかな顔になって貰うために、心優しき男が奮闘するラヴファンタジーである。】」トリツカレ男 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”トリツカレ男の無償の献身。そして齎された幸。”今作は、一目惚れした風船売りの女性の憂いを無くし晴れやかな顔になって貰うために、心優しき男が奮闘するラヴファンタジーである。】
ー 今作の原作を書いたいしいしんじさんの著作は、理由は書かないが近しいモノを感じ30代に読んでいた。断捨離をした際に数冊処分したが、「いしいしんじのごはん日記」は時折手に取る。その文体は柔らかく、優しくまるで今作の主人公のジュゼッペは、いしいしんじさんの事ではないかと思うのである。-
■夢中になると、それに一直線に突き進み他の事が目に入らなくなるジュゼッペ。それ故に彼は町の人達から”トリツカレ男”と、愛情を込めて呼ばれている。
或る日、風船売りの女性のペチカに一目惚れした彼は”君と友達になりたいんだ!”と叫び、彼女の為に只管に尽くすのである。
彼女が病気の母の借金を抱えていると知れば、貸主の”ツイスト親方”に貴重なカメムシを贈り、チャラにして貰い、彼女の母の病気を治すために医者に化けて、眼鏡を持参し”歌”の楽しさを教え病を癒す。それでも、彼女に憂いがある事を知った彼は、その原因が半年も現れない重想い人”タタン”にあると知り、彼は”タタン”に会いに行くが・・。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・フライヤーを観ていたので、不思議な風合の絵にも違和感を感じずに、序盤は鑑賞する。そして、ジュゼッペとその相棒であるネズミのシエロとの遣り取りや、町の人達がトリツカレテしまったジュゼッペを”しょうがないなあ”と言う感じで見守る姿が良いなあと思いながら、観賞を続行する。
・作品のトーンが変わるのは、”タタン”が少年達にアイスホッケーを教えていた心優しき青年で、練習のためにロープウェイに子供達と乗っていた時に,ワイヤーが切れそうになり子供達に目を閉じさせてから、重みを減らすために自ら雪面に身を投げた事を知るのである。”タタン”も又、無償の献身をする男だったのである。
・その事実を知ったジュゼッペは、シエロの制止を振り切り、”タタン”の振りをして梯子に乗ってペチカを窓越しに励ますのである。雨の日も風の日も。そんな彼に、”タタン”が現れ彼を勇気づけるが、或る日彼は梯子から疲労から”タタン”と同じように、背面から地面に落ちてしまうのである。
このシーンでは、何となく、O・ヘンリーの名編「最後の一葉」が頭を過ったのである。
・だが、ジュゼッペは包帯グルグル巻きになりながら、ペチカの看病を受けているのである。それは、”ツイスト親方”が借金を棒引きにした理由をペチカに告げ、元気になった母は医者の正体がジュゼッペである事を見抜くのである。それ故にペチカは、彼を懸命に看病するのである。
<今作は、一目惚れした風船売りの女性の憂いを無くし晴れやかな顔になって貰うために、心優しき男が奮闘するラヴファンタジーなのである。>
「最後の一葉」みたいにも、「幸福の王子」みたいにもならずに、ジュゼッペが報われて良かった。悲劇を見る際に、大抵の観客は無駄と知りながらそうじゃないといいなと考えるんじゃないかと思うのですが、そういう願いを実現したようななかなか上手い話と思いました。
悲劇よりはインパクトが弱まるかもですが、幸せな余韻が残るほうが好きです。
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