「もっとコメディに振ってもよかったかも」マーヴィーラン 伝説の勇者 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
もっとコメディに振ってもよかったかも
最近のインド映画は良作続きで、本作も予告は未見ながら期待を込めて鑑賞リストに入れていました。しかし、公開間もないにもかかわらず上映回数が極端に少ないことに一抹の不安を覚えつつ、公開2日目に鑑賞してきました。
ストーリーは、臆病で事なかれ主義の漫画家サティヤが、気の強い母と兄思いの妹と三人で暮らしていたスラムを追い出され、代わりにあてがわれた高層住宅に数々の欠陥があるにも関わらず、なんとか我慢して生活している中、ある事故をきっかけに「天の声」が聞こえるようになったサティヤは、その声に翻弄されながらもしだいに悪に立ち向かう勇気を得ていくというもの。
突然聞こえ始めた「天の声」は、まるで未来を予言するかのようにサティヤの行動を実況し、半ば強引な辻褄合わせで彼をヒーローへと仕立て上げていきます。声に乗り移られるのではなく、ただ聞こえてくるだけ、というこのユニークな設定が秀逸で、声に流されるままに右往左往するサティヤの姿が非常にコミカルです。
そんな彼が、やがて自らの意志で悪に立ち向かうことを決意し、ヒーローとして覚醒していく姿に胸が熱くなります。特に、終盤の船上で敵を叩きのめすアクションシーンは爽快の一言です。
ただ、惜しい点もいくつか見受けられます。まず、主人公が覚醒するまでの道のりが長く、中盤はやや冗長に感じてしまいます。また、インド映画の魅力の一つである圧巻のダンスシーンは、序盤にしかありません。物語の序盤でこそ存在感のあったヒロインが、その後はほとんどモブキャラ同然の扱いになってしまったのも残念です。
「天の声に操られる」という設定が、アクションのおもしろさに繋がっている一方で、全体的にどこか地味な印象を与えてしまっているのも否めません。その代わりと言わんばかりに、最終盤には高層住宅が倒壊するという巨大な見せ場が用意されているので、そこでバランスを取っているのかもしれません。
全体の構図はわかりやすいのですが、細部の展開にはやや強引さを感じる部分もあります。いっそのこと、シリアスなアクションは控えめにしてコメディに完全に振り切り、悪役たちも社会的な制裁を受けるというような結末でも、また違ったおもしろさがあったのではないかと感じます。ポテンシャルは感じるだけに、惜しさが残る一作です。
主演はシバカールティケーヤンで、気弱なサティヤを好演しています。脇を固めるのは、アディティ・シャンカル、ミシュキン、スニール、ヨーギ・バーブ、サリダー、ビジャイ・セードゥパティら。
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