摩文仁 mabuni

劇場公開日:2025年6月21日

摩文仁 mabuni

解説・あらすじ

沖縄・摩文仁の丘で死者の魂に祈り続ける花売りの大屋初子さんの姿を通し、戦後80年を迎える沖縄の現在をとらえたドキュメンタリー。

沖縄戦で命を落とした兵士や民間人の慰霊碑が林立する摩文仁の丘。沖縄住民、日本軍戦友、自衛隊、アメリカ軍関係者、韓国人遺族ら、それぞれの思いがすれ違うこの丘では、“英霊の顕彰”と“犠牲者への慰霊”が常にせめぎ合い、本土と沖縄の分断を象徴してきた。地元で生まれ育った89歳の大屋初子さんは、沖縄戦で集団自決が起きた壕から生き残り、戦後は「魂魄の塔」という慰霊碑の前で遺族に参拝用の花を売り続けている。そんな大屋さんを主人公に、膨大な数が存在する沖縄戦の慰霊碑を巡り、そこに込められた人々のさまざまな思いを映し出す。

「歌えマチグヮー」「アトムとピース 瑠衣子 長崎の祈り」の新田義貴監督が、沖縄の現在とそこに生きる人々の姿を15年にわたって見つめ続け、いまなお沖縄が抱える多くの矛盾を浮かび上がらせていく。沖縄出身のモデル・タレントの知花くららがナレーターを務め、シンガーソングライターの寺尾紗穂が主題歌を担当。

2025年製作/97分/日本
配給:ユーラシアビジョン
劇場公開日:2025年6月21日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

監督
新田義貴
プロデューサー
七沢潔
撮影
新田義貴
整音
髙梨智史
グレーディング
川久保直貴
編集
新田義貴
音楽
上畑正和
主題歌
寺尾紗穂
ナレーター
知花くらら
撮影協力
山城知佳子
砂川敦志
仲宗根香織
松林要樹
norico
瀬底梨恵
島袋笑美
韓国語翻訳
伊藤王樹
編集協力
濱口文幸記念スタジオ
制作協力
山上徹二郎
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(C)ユーラシアビジョン

映画レビュー

未評価 もう一度天皇の為に死ね

2025年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 嘗て日本軍が司令部を置き、最後には牛島満司令官の自死で沖縄戦最後の地となった摩文仁(まぶに)を通して沖縄の現代史を見直そうとするドキュメンタリーです。

 まず、驚いた事。6月23日の沖縄慰霊の日には、アメリカ兵を含む沖縄戦全戦没者の名前24万以上が刻まれた「平和の礎(いしじ)」がしばしば取り上げられます。ところが、慰霊碑はこれだけではなく、摩文仁を含む糸満市には現在120を超える碑が建てられているそうです。そして、その中には、沖縄戦を指揮(即ち、各地の洞窟(ガマ)に避難した民間人を追い出し、食料を奪い、スパイ容疑だと斬り捨て、集団自決を命じ、当時でも違法であったのに10代の子供らを兵隊にすべく県に圧力を掛け、多くの県民が避難しているのを承知で司令部を摩文仁に移して県民を巻き込んだ日本軍を率いた)牛島満の慰霊碑もあるのです。そして何と慰霊の日には、現役の自衛官が団体で制服姿でこの碑を訪れ手を合わせているのでした。日本軍に対して非常に複雑な思いがあるであろう沖縄の人々がそれをどう見るのか考えないのでしょうか。勿論、自衛官個人がいつ誰を追悼しようが個人の自由ですが、彼らの行動は「自衛隊の意思」と見られても仕方ないでしょう。彼らは手を合わせて一体何を祈っているのか、それを言葉として是非聞きたいです。

 また、慰霊の日には米軍海兵隊の隊員も平和の礎を訪れています。インタビューを受けた米兵は、「同じ失敗を繰り返さない為にも、歴史を学ぶ事は大切だ」と語ります。僕はドキリとしました。彼の言う「同じ失敗を繰り返さない」とは、「次にやる時は、米軍の被害を最小限にもっとうまくやる」と聞こえるのです。

 中盤に、牛島司令官のお孫さん、更に、

 「沖縄県民斯(か)ク戦ヘリ
 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ
 賜ランコトヲ」

の最後の電報を送信して自死を遂げた太田実海軍司令官のお孫さんが取り上げられます。お二人ともお祖父さんの顔など知らないし、ご自身が何らの戦争責任がある訳ではないのですが、それぞれに司令官の孫である事に心の中で煩悶なさっているのです。特に、太田さんの一体自分はどうすべきなのかと言う迷いは胸に迫るものがありました。そう、それこそが我々が沖縄に向かう態度であるべきなのではないでしょうか。

 最後に、牛島司令官の慰霊碑を訪れた内地からの(ネトウヨと思しき)人々が『海ゆかば』を斉唱するシーンがあります。これには心底驚きました。彼らは意味が分かっているのでしょうか。この歌の最後は、

 「大君の辺にこそ死なめ
  かえりみはせじ」

と結ばれます。摩文仁の地に眠る沖縄の人々に、「もう一度天皇の為に死ね」と言うのでしょうか。ただただ恐ろしかったです。

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