罪人たちのレビュー・感想・評価
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エンターテイメントとメッセージ性
ブルースウィズヴァンパイア。ドブロギター強い
どう見たらいいのか、おさまりの悪い映画。見どころは多いんですけど。
音楽映画?歴史ファンタジー?アクション?コメディ?
アイリッシュヴァンパイアが束になって歌いながら襲ってくるとか、笑いどころなの?差別に憤るというにしてはそっちも浅いような…
ブルース好きの人を誘ったら「‥というほど、ブルースにリスペクトとも思えないんだよな」という感想でした。女性ボーカルに不満だったようで。サミーはうまいんだけど、本人が歌ってるのかな?吹き替え?
最後のバディ・ガイを出したくて逆算して作った映画なのかも
なんじゃこりゃ~⁉だったけど音楽が良かったからね
アイリッシュビールとかダブリンが出て来る歌とか、何だろうと思っていたら、話がどんどんあらぬ方へ……
歴史話やバンパイア伝説に興味のある方なら、この地域が頻繁に出てきた辺りで「もしや?」と気付くのかもしれませんが、そんな知識のないワタシには、あの時代にわざわざ高価なビールを持ち帰って来れるだけのお金を稼いで凄い!程度の感想だったので、そこからは、まさかまさかの展開でした。
結局何を言いたかったのか、予告編につられてきたら予想外でビックラこきました!
まあ予告編では描きにくいですよね。
観る前は「NOPE」みたいなよくわらんオチかなと思っていたのに、アイリッシュ風【スリラー】みたいなのは出てくるし、ずぅっと?マークが点灯しっぱなしでした。
音楽は良かったですね。
Mr.ノボカインと連チャンしたから、血だらけの夢見そう……
見応えはあった
TLAVELING
日本での公開はもうちょい先だろうなと思っていたんですが急遽公開が決まり、もっと宣伝とかした方が良いのでは?と思いつつも観れるのでそこには感謝して鑑賞。
めちゃくちゃカッコよかったですね〜。
ストーリーは黒人差別がより強かった時代を取り扱っており、その中で成功を極めて突き進む兄弟や仲間たちがクラブを開くといった讃美歌のような内容で、後半のホラー展開もそれらのメタファー的な部分が強いのかなと思いながら観ていました。
全体的に開けたカットが多いのもあって、綺麗な空と砂道が映えること映えること。
これは大スクリーンで観るからこそ得られる開放感だなと思いましたし、とにかくワクワクしながら生きている様子がビシバシ伝わってきて爽快感が凄まじかったです。
しかし今作の惜しいところはメインテーマであるであろうホラー要素がそんなに要らなかったかなぁというところです。
もちろん人格そのままの吸血鬼が襲ってくるという設定は面白かったですし、酒場や酒場周りの限定された環境下だからこその白熱した戦闘は見応えがありました。
ただそこまでにいくまでの前振りが尺の半分以上を使っており、その上ホラー要素が強くなくあっさりと終わってしまったり、主要であったであろうキャラの退場が思ったよりも早かったりとで勿体無さを感じるところが多かったです。
設定がちとくどいのも難しいところで、招かれないと入れないという割には手を伸ばしたら引き込もうとしますし、酒場と外との対峙を何シーンも見せてくるのでダレたなぁとは思いました。
ラストの加速しっぱなしの戦闘シーンは良かったかなと思いました。
どちらかというと白人と元オーナーがやってきてからの怒涛の銃撃戦の方が復讐としても面白かったですし、容赦のなさがエゲツなくて良かったです。
そこからはMCUもビックリ仰天なポストクレジットの連続で、若干胃もたれしつつもその後が観れたのは良かったです。
ただ本編ラストカットで青空と共に車で地平線の彼方へ走っていくのが抜群にカッコよかったのでちょっと蛇足だったかなと思うところはありました。
マイケル・B・ジョーダン筆頭に役者陣もキレッキレな演技をかましていましたし、歌唱面や演奏面も最高に活かされているのもあって見応え満点でした。
今作でも音楽の良さ、というか今作で1番素晴らしかったのは間違いなく音楽でした。
サントラはどれも上質で迫力のあるブルースが展開され聴き心地が良いですし、歌唱パートもこれまた力強い曲が聴けたりとで音響が素晴らしい環境だともっと凄いんじゃないかなってくらいには勢いがありました。
いっその事音楽映画だったらどこまで面白くなったんだろうと思うくらいには音楽に支配されていました。
前半と後半でジャンルがガラッと変わるタイプの作品だったので、観終わってから時間が経ってから良さが沁みてくる遅効性映画だなと思いました。
もう一回整理して観に行きたいくらいオシャが爆発していたのでオススメです。
鑑賞日 6/22
鑑賞時間 15:50〜18:15
ヴァンパイアの映画にする必要はあったのだろうか?
双子の兄弟が、何やら良からぬことをして手に入れたらしい金と酒で、ダンスホールを開こうとする前半と、開店したダンスホールを舞台にして、店のスタッフとヴァンパイアたちが激闘を繰り広げる後半との、話のギャップに驚かされる。
まるで、「カラーパープル(ミュージカル版)」を観ていたら、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」が始まったみたいで、よく言えば、「ひと粒で2度美味しい」お得感が味わえるのだが、悪く言えば、ドラマとホラーの「食い合わせの悪さ」を感じてしまうのである。
この前半と後半を繋ぎ止める役割を果たしているのがブルースの音楽で、その魂を揺さぶるような歌声が、店に客を呼び寄せるだけでなく、悪霊をも呼び寄せてしまうという設定は面白いし、登場人物たちだけでなく、エレキギターを持ったロック歌手やクラブのDJ、あるいはアフリカの原住民や京劇の役者までもが入り乱れて踊り狂う幻想的なシーンも、時間と場所を超越した歌唱が体感できて圧巻である。
その一方で、音楽に関する知識がないせいか、ヴァンパイアたちが、どうしてアイルランド系のカントリー&ウェスタンを歌っていたのかがよく分からなかったのだが、これは、KKKなど、黒人を迫害した者たちが、よく歌っていた「白人の歌」ということなのだろうか?
それから、ヴァンパイアの弱点として、太陽光線を浴びたり心臓に杭を打たれたら死ぬとか、ニンニクに弱いとか、許可がなければ家の中に入れないとかといったオーソドックスなルールが適用されているのだが、その反面、十字架や聖水に弱いといったキリスト教に関連のあるルールが用いられていないのは、何か意味があるのだろうか?
映画のタイトル(Sinという単語)からは、強いキリスト教色が感じられるものの、最初のヴァンパイアを追いかけていたのはネイティブ・アメリカンだったし、主人公の妻はブードゥー教の知識でヴァンパイアに対抗していて、こと、ヴァンパイアに関しては、敢えてキリスト教色を排除しようとしているようにも感じられ、タイトルとのギャップに違和感を覚えてしまった。
ヴァンパイアとの戦いが終わり、一人生き残った主人公が、夜が明けてやってきたKKKの一団を銃で壊滅させるくだりも、爽快ではあるものの、何だか取って付けたような唐突感があって、「収まりの悪さ」が感じられる。
これだったら、黒人たちと、ヴァンパイアと、KKKの三つ巴の戦いにしても面白かっただろうし、いっそのこと、KKKがヴァンパイアだったという設定にしたら、人種差別に対する黒人の反撃といった構図が、より鮮明になったのではないかと思えてならない。
いや、むしろ、ヴァンパイアなんて登場させずに、黒人が開いたダンスホールをKKKが襲撃して、それを黒人たちが撃退するといった話にしてしまっても、抑圧に抗う黒人の物語として成立しただろうし、音楽あり、アクションありの、十分に面白い映画になったのではないかと思えるのである。
チンプンカンプン
差別と搾取と。あまりかんばしくない評価を散見の中で挑むも、楽しかっ...
ロッテントマトで高評価でも私はこの点数でした
期待して観に行ったのですが、期待しすぎたかもしれません。(ロッテントマトのスコアが98というのはホンマかいな?)
ブルースという音楽がもつ力は、日本人にはピンと来ないのかもしれません。
学生時代、R&Bやブルースバンドを組んで演奏していたくらい黒人音楽が好きで、劇中にも引用されているチャーリー・パットンも、当時、音源を探しまくって聞いていたくらいです。(今から40年前の話です。YouTubeとかないですから)
そんな黒人音楽好きの私でもピンときませんでした。40年前の自分が観たらもっと感動したのかもしれませんが。
しかし、アメリカ人はバンパイヤものが好きですよね。そこもピンと来ない原因かも。だって怖くないもん(笑)
タランティーノがヴァンパイアもの作るとこうなるかも。
レビュータイトルで某タランティーノ関連作の名を出すな
人種とか文化とか多様な要素が重層的に織り込まれているのは分かる。しかし私には高尚過ぎたのか面白いとは思えず、壮大な自主制作映画だと感じた。
【別記】
レビューのタイトルで某タランティーノ関連作の名を出すのはマナー違反。それだけでネタバレになるのだから本当にやめてほしい。
タイトルなし(ネタバレ)
音楽のアメリカ史を一部体験出来るブルース・ミュージカルで、中盤の "歌の共演" を時代を超えて長回し風で見せる所はファンタジー感があり、不思議とテンションが上がった。
事前にロバート・ロドリゲス監督『FDTD』(1996)に似てる設定だと知ってて鑑賞したが、そんなの関係なく色んな意味で予想外だった。マイケル・B・ジョーダンが主演だと知ってたが、一人二役だとは知らずに鑑賞。
ライアン・クーグラー監督のブルース愛が詰まったアクションで、そんなに怖くはない。
バンパイアの設定がクラシカル&斬新で「招かれないと入れない」「記憶や痛みの共有」とか「入れないので外で歌う」とか。
バンパイアあるあるで、夢中になってる間に夜が明けて "朝日で焼ける奴" とか。ただ血を吸いたいだけじゃなくて、新たなる独自の世界観を共有する仲間を増やしていくのが目的。
ジェイミー・ローソン演じるパーリン(スイッチを舐められる若い人妻で歌手の設定?)の歌声が最初の "歌の共演" で出なかったので、さぞかし凄い歌唱力で後で出るのか?と思ったら個人的には普通だった。
なんか実話みたいで良いエンディング。
バディ・ガイ:Buddy Guy(1936年生、ブルースギタリスト、シンガー)が90年代の老いたサミー役で登場。
スタックとメアリーが時代に溶け込んでいるが仲間は増えたのだろうか?
ミッドクレジットシーン(本編終了後のオマケ映像で、主要キャストのテロップの後で流れる事が多い)もポストクレジットシーン(全てのエンドロール後のオマケ映像で、これで映画は終了)も有る。なので最後の最後まで席は立てない。
通常上映で観たがIMAXやDOLBY CINEMAが良いかも。
俺と悪魔のブルーズ
俺たちみんな罪人なんだよね!
「フロム・ダスク・ティルドーン」を下敷きにしながら、差別され、抑圧され、奴隷として扱われてきた黒人やアイルランド人の歴史的背景に加え、ブルースという音楽の文化的背景などをふんだんに盛り込んだ映画。
たぶん、上記どころかヴァンパイアの常識というかルールすらよく知らない日本人にはハマりにくい要素がこれでもかと詰め込まれている。
ヴァンパイアであるレミックがサミーに対して「おまえの歌と物語をよこせ」というセリフなど、ブルースが盗用されてきた歴史を見事に皮肉っていると思う。
そういった痛烈にシニカルに描いているところは素晴らしいと思う。思うのだけれども、個人的には映画本線である人間vsヴァンパイアの戦いでもっと魅せてほしかったなぁという印象。もっとブラックエクスプロイテーションしてほしかった。ラストでKKKを乱射していくシーンが一番ワクワクした。
ああいう感じで、本線の部分でもっとB級映画のようなブチかましをした上で、前述したような様々な要素があれば最高だったのに…と思ってしまう。
決して悪くない。むしろよくできている。スゴイと思う。ただ、個人的にはそれほど面白いとは感じなかった。
この作品が日本で劇場公開されて、昨年の「陪審員2番」が配信ストレートかぁ、という思い。
吸血鬼というモチーフで描かれる差別の歴史。素晴らしき闇鍋映画
【イントロダクション】
禁酒法時代のミシシッピ州クラークスデールを舞台に、双子の兄弟がオープンしたバーに吸血鬼が襲い来る。主演のマイケル・B・ジョーダンは1人2役で双子役を務める。
監督・脚本は『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)、『ブラックパンサー』(2018)のライアン・クーグラー。
【ストーリー】
1932年。1人の若者が、牧師の説教中の教会に入って来た。血だらけのボロボロ姿で壊れたギターのネックを持つその姿に、教会内は壮絶とするが、牧師のジェディディアは彼を受け入れる。牧師は若者の父であり、彼に何が起きたのか問う。若者の脳裏には、昨夜に起きた惨劇の様子がフラッシュバックしていた。
1日前。双子のイライジャ・ムーアとイライアス・ムーアの通称“スモーク&スタック”兄弟(マイケル・B・ジョーダン)が、故郷であるミシシッピ州クラークスデールに戻って来た。彼らは第一次世界大戦の退役軍人であり、シカゴで大物ギャングのアル・カポネの組織で働いていたが、かねてよりの夢であったジュークジョイント(黒人労働者たちが集まり、バーや音楽の演奏、ギャンブル等をする娯楽施設)を開業する為、ギャングの金や酒類を盗んできていた。
2人は白人の地主ホグウッドから製材所を買い取ると、店のオープンに向けて準備を開始した。
2人は従兄弟でありブルース・ミュージシャン志望のサミー(マイルズ・ケイトン)を迎えに行く。「ブルース・ミュージックは悪魔と繋がる超自然的なもの」だというジェディディアの警告にも拘らず、サミーは兄弟の仲に加わる。
スタックはサミーと共に駅に向かい、ハーモニカやピアニストのデルタ・スリム(デルロイ・リンドー)を勧誘する。スタックはそこで、かつての恋人であったメアリー(ヘイリー・スタインフェルド)と再会する。メアリーは勝手な判断で自分を捨ててシカゴに向かったスタックを恨んでいたが、彼に対する愛を捨て切れていなかった。
スタックは更に、店の用心棒として綿畑の小作人コーンブレッド(オマー・ベンソン・ミラー)を引き込む。
一方、スモークは街で中国人店主のグレース(リー・ジュン・リー)とボー(ヤオ)夫妻に店の看板や食材の手配を頼み、亡き娘の墓参りをする。彼は妻でありフードゥー教の修行者のアニー(ウンミ・モサク)と再会し、彼女をバーのコックとして雇う。
時を同じくして、アイルランド移民の吸血鬼レミック(ジャック・オコンネル)は、チョクトー族の吸血鬼ハンターに追われ、KKK団員のバート(ピーター・ドライマニス)とジョーン(ローラ・カーク)夫妻の保護を受ける。レミックはバートとジョーンを吸血鬼に変え、行動を共にする。
開店初日の夜、店は大賑わいを見せ、サミーやスリム、サミーが想いを寄せる歌手のピアライン(ジェイミー・ローソン)がステージを盛り上げる。中でもサミーの歌うブルースは超常的で、過去や未来から様々な黒人ミュージシャンやダンサー、民族音楽家達を精霊として呼び寄せる。しかし、その歌声はレミック達吸血鬼といった邪悪な存在をも虜にし、呼び寄せてしまっていた。
レミック達は、旅をしている音楽家の一団だとして、店の前でスモーク達にブルースを披露し、「金ならあるから中に入れてくれ」と懇願する。しかし、スタックは黒人限定の店に彼らを迎え入れるわけにはいかず、追い返した。だが、スモークは店の売り上げがアメリカドルではない街での用途限定の金券による支払いが少なくない事から、店の採算が2ヶ月で破綻する事を悟っていた。店を訪れていたメアリーは、経営を破綻させまいとレミック達を呼び戻す事を提案し、彼らにコンタクトを取りに行くのだが……。
【感想】
まず、本作のレビューを執筆するにあたり、パンフレットが売り切れていた事が何よりも悔やまれる。
とはいえ、私は運良く鑑賞前にXにて本作の基礎知識をネタバレ抜きで解説している「シネマリン【映画・ドラマ】」さんのポストと、それらを纏めたnoteを閲覧する事が出来たので、作中の様々なワードや主人公達の立場を混乱する事なく楽しめた。ここに感謝の意を表したい。
また、鑑賞後に確認出来るネタバレ有りの解説noteも非常に面白いので、復習も兼ねて閲覧を推奨したい。
本作のプロットを聞いて真っ先に思い浮かぶのは、クエンティン・タランティーノ脚本、ロバート・ロドリゲス監督による異色の吸血鬼作『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)だろう。それもそのはず、ライアン・クーグラー監督は同作の大ファンなのだそう。また、監督は同じくロバート・ロドリゲス監督による『パラサイト』(1998)にもオマージュを捧げており、作中で仲間や客が次々と吸血鬼に変えられていく様子や、「招き入れられないと家に入れない」という吸血鬼の特性からくる店の扉の前での問答に、その様子が伺える。
なので、私は最初、本作を「吸血鬼映画」と認識して鑑賞しに行った。しかし、吸血鬼はあくまで黒人差別や移民差別のメタファーとしての舞台装置に過ぎず、その実はかなり「音楽映画」としての特色が強いものだった。
そんなわけで、肝心の吸血鬼軍団との死闘が始まるのが映画も終盤に差し掛かってからだったり、戦闘そのものは短かったりと、純粋な吸血鬼映画に対する期待には若干の肩透かしを食らった。
しかし、クライマックスでのスモークによる白人至上主義者による組織、KKK(クー・クラックス・クラン)の大虐殺シーンの熱量と、60年後にミュージシャンとして成功したサミーを、吸血鬼として生き延びていたスタックとメアリーが訪れるシーンの味わい深さで、個人的にはかなりのプラス。このスモークによる大虐殺は、タランティーノ的な“フィクションによる暗い歴史へのカウンター”としても受け止められた。
また、音楽映画として捉えれば、本作はとにかく作中からエンドロールに至るまで、作品を彩る楽曲が悉く素晴らしい!特に主題歌のロッド・ウェイブによる『Sinners』がお気に入り。
映像面においても、サミーの歌によって民族音楽から最新のミュージシャンにクラブダンサーと、過去や未来という時間の枠を超えて様々なアーティストが一堂に会するシーンは本作の白眉。
更に、本作は“音”そのものの使い方も良い。スリムがサミーに白人による差別を語るシーンで、会話の後ろに騒動の音声を流すという演出が良かった。映像ではなく、音で過去回想をするというのは、音声を含める映像作品ならではの強味と言える。
皆でリズムを取って踊るシーンの地響きまで伝わってくる様子も印象的だった。
ストーリー展開については、序盤から丁寧に展開される店のオープンに向けた仲間集めのシーンが1番面白かったかもしれない。個性豊かなキャラクター達が、互いに利益や友情・愛情によって集っていく姿は、観ていて非常にワクワクさせられた。
クライマックスで、惨劇を生き延びたサミーが父の「ギターを捨てろ」という言葉を無視して、壊れたギターのネックを握りしめて車を走らせる姿も熱い。
意外と下ネタも多く、絡みシーンも多い。スタックの語る「女を喜ばせたければ、ボタンを探れ。アイスクリームを舐める時と同じ、“優しくゆっくりと味わう”のさ」という台詞には笑った。
【吸血鬼というモチーフを基に描かれる、差別する側・される側という構図】
この事件の元凶たるレミックが「アイルランド移民」というのがミソで、彼らもまた、かつては黒人と同じく差別されていた。しかし、白人としての権利を獲得した事で、差別側に回ったという歴史を持つ。だからこそ、レミックの言う「友愛と友情」という台詞、スタックら黒人を吸血鬼化して、不死の獲得と迫害からの解放を与えていくのは、彼にとっては本当に救済行為でもあるのだ。サミーの歌を使って失われたコミュニティの魂を呼び戻そうとする様子は、彼もまた「奪われた側」である事を示している。
しかし、そこには同時に、差別する側に回れたからこその“傲慢さ”も感じさせる。白人優位のアメリカ社会が、ブルースをはじめとした様々な黒人文化を簒奪してきたように。
あくまで舞台装置の1つに過ぎないが、それでも(だからこそか)吸血鬼の設定は基本に忠実である。
・太陽の光の中では生きられない
・招かれなければ建物に入れない
・ニンニクや聖水が弱点
・木の杭で心臓を穿たれれば死ぬ
このように、吸血鬼とは実はかなり不便な存在ではあるのだ。また、陽の光の下で生きられないというのは、まさに読んで字の如く“日陰者”として生活せねばならない。
更に、本作には独自の設定として、「痛みや意識、記憶を共有して一つになる」というものがある。
これは、アメリカ社会が様々な文化を吸収して、巨大に発展してきた歴史そのもののメタファーであるだろう。それが良いか悪いかは、個人的には判断しかねる。だが、本作が本国にて批評家と観客、双方から大絶賛で迎えられている事は、本作のテーマが彼らに多くの考えを呼び起こさせたという一つの回答と言えるだろう。また、“個”を失わせて“全体”に取り込もうとする様子は、カルト宗教も連想させる。
吸血鬼となった時点で、個としての真の“自由”は永劫失われてしまうのだ。それこそ、「好きな舐められ方」まで共有されてしまう程に。
ところで、この時代中国系移民は白人と黒人の中立に位置し、主に黒人居住区で食料品や日用品の店を経営して生計を立てていたそうだが、吸血鬼をバーに招き入れる役割を中国人のグレースに任せている点は少々引っ掛かった。家に残してきた娘の為に仕方なくはあるのだが、吸血鬼が差別のメタファーである以上、構図的にもやはりその役割は黒人でありリーダーであるスモークが果たすべきだったように思う。
アジア系の人間が損な役回りや無能なキャラとして機能させられているのは、それも一種の差別意識が潜在的に潜んでいるように感じてしまうのは、同じアジア人だからであろうか?
【ポストクレジットで結実する、本作のテーマ】
サミーが教会で歌う『This Little Light of Mine』の「この小さな光を輝かせよう」とは、限りある生を全うするという彼の決意と、人間讃歌なのだ。
自らの決意を胸にブルースを歌い続け、限りある人生を懸命に生きて成功した老サミーも、吸血鬼として永遠の若さと命を手に入れたスタックも、人生における最良の日として思い浮かべるのは、1932年のあの日。
たった1日、それも更に限定的な時間内でのみ、彼らは真の“自由”を獲得し、一つになっていたのだ。だからこそ、サミーはスタックの申し出を断るし、スタックはあの日を鮮明に記憶し、懐かしさを抱いている。
「自分の意思で、限りある命を生きる」
本作が提示するテーマは、普遍的で揺るぎない価値観なのだ。ホラー映画でここまで真摯に人生について考えさせられるとは思わなかった。
【総評】
吸血鬼というモチーフを通じて描かれる、アメリカ社会と黒人差別の歴史。ブルースをはじめとした音楽の魅力。その他下ネタからアクションに至るまで、映画の面白味を存分に詰め込んだ、何とも贅沢な「闇鍋映画」だった。
本国でのスマッシュヒットを受けての緊急日本公開故仕方ないとはいえ、こんなに面白い作品が約30館という小規模公開なんて、あまりにも勿体ない。
余談だが、本作はIMAXシアターでの鑑賞がベストな作品ではあるが、あくまで本作は“SHOT WITH IMAX FILM CAMERAS(部分的にIMAX 65mmカメラで撮影された作品)”である。その為、グランドシネマサンシャインのスクリーンでは、縦長のアスペクト比と通常シアターでの画角とが上映中にコロコロと切り替わる仕様となっている。これについては、私は『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)で経験済みなのだが、やはり画角がコロコロ変わるのは気にはなる。なので、鑑賞予定のある人は、余程の拘りがない限りは、現在日本で最も普及している4Kレーザー上映のIMAXシアターでの鑑賞でも問題ないとは思う。
てんこ盛りムービー
キリスト教にも人種差別にもヴァンパイヤにも縁遠い日本ではやや分かりにくい内容かも
それらの要素を薄くくみ取りつつエンタメ目線で見た評価が★3.5くらい
はまる人やささる人にはもっと違う見え方があるのかもしれませんが
いろんな要素が盛り込まれていてどういう映画なのか掴みどころがないまま終わってしまった
前半のドラマ部分は興味をそそりますがバックボーンの説明だけであまり見えてこないです
それぞれの関係性を深堀りしないまま泥臭いドラマ部分から後半のヴァンパイアパートへ展開が変わります
双子が生まれてから育った話とか育った家の娘との恋愛とか子供を亡くしたお兄さんのエピソードとかどうやって成り上がったのか、兄弟の絆がどう強まったかだけでも十分映画にできそう、サミーの目線でもストーリーを作れそうだし、チャイニーズ夫婦の話、歌のうまい人妻や飲んだくれのブルース奏者 それぞれの物語 ヴァンパイアのスピンオフとか・・
1本の映画に盛り込み過ぎて逆にもったいなかったような気がします
ドラマでシーズン6くらいは作れそうな濃いキャラクターたちだけが印象に残りました
お客さんは少なかったです
ブルース・ブラザーズ+フロム・ダスク・ティル・ドーンを、クーグラ監督とマイケル・B・ジョーダンが料理した逸品
ネタバレあり
デビュー作からコンビを組んでいる俊英ライアン・クーグラー監督とマイケル・B・ジョーダンのコンビの最新作で、途中で味変ならぬジャンル・チェンジする作品で、約137分の長尺もダレなく進む。(説明セリフは多め)
ジャンル・チェンジすると言っても冒頭からフリが、あり初見でも感の良い人ならわかる様に構成しておりその巧みさに唸るのと、内容的には同じ構成の傑作『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に『ブルース・ブラザーズ』的な前半を、クーグラ監督達のアイデンティティでもある黒人音楽の要素と系譜をたっぷり描き、自分達の所謂ルーツを託した大ヒットマーベル映画『ブラックパンサー』と並ぶテーマを扱っていると思う。
1930年代の初頭なので悪名高い禁酒法も残っており、その頃のアメリカ南部の濃厚な描写も映像もIMAXの65ミリフィルムを使い堂々たる風格を感じる(残念ながら都合で通常版での拝見ですが…)
音楽物とホラーにジャッキー・チェンやジャン・クロード・ヴァン・ダムなどの活劇スターやウィル・スミスもやっていた一人二役(双子設定が多い)で主演するジャンルものエクスプロイテーション映画の様相もありますが、ライアン・クーグラー監督作だと若干弱かった活劇面の捻りが足りないとは思うが、その辺は興味ないのかも?だが、突発なワイヤーアクションや画面にマッチしないCGなどを、乱用されるより良いかも。
個人的には、吸血鬼を追っていたネイティブ・アメリカンのハンターの佇まいに凄みとカッコ良さもあり活躍して欲しかったかな。
悪魔を魂を売るや呼び込むと伝えられるブルースを題材にその発祥で現代のロックやヒップホップまで発展させたアフリカ系アメリカ人による正しい面や同じ奴隷労働に準じて差別を受けていた中国系アジア人の真っ当な描きかたなども、トランプ以降のアメリカでこの作品が超ヒットしたのは救いだと思う(と思うたらイラク攻撃のニュース流れてきてガッカリだよ)
長年映画を観ていた映画ファンなら元ネタ的な『ブルース・ブラザーズ』や『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を、クーグラ監督とマイケル・B・ジョーダンが、自分達のルーツとして料理したなかなかの逸品で一見の価値はあるので、音響の良い映画館での鑑賞がオススメです!
余談
チャドウィック・ボーズマンが存命だったら今作はマイケル・B・ジョーダンと兄弟役で見たかったかも
ブルースで思い出す映画として70年代から80年代に優れた活劇映画を作り映画ファンに信頼されていたウォルター・ヒル監督のフィルムグラフィティーに妙な作品がありタイトルは『クロスロード』(1986年)
ブルース・ギタリストを目指す青年のラルフ・マッチオ(当時は若手人気スター)が、ブルースの為に悪魔に霊を売ると言われるクロスロードを目指しギター対決をする寓話的作品で、最後のギター対決で意外な手を使って勝つのだが、ブルースが題材なのにそれかよ!と一部音楽ファンからツッコミを受けた作品で、ロックの寓話と謳った『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984年)撮ったヒル監督がコレかよと思った。(ちなみにアメリカから一年程遅れて、少な目の規模でひっそりと日本公開された)
スタックと連れ添うヒロインにあたるメアリー役の設定は、片方の親がのハーフ(だよね)黒人白い肌のアフリカ系と割と珍しい印象ですが、思い出すのは、映画『攻殻機動隊』などで、海外でも人気のある士郎正宗の近未来SFアクション漫画『アップルシード』の主役でヒロインでもあるデュナン・ナッツで、彼女も明るい髪と白い肌の女性だが、母方がアフリカ系のクォーターで、劇中で白い黒人と言われていて母親は人種差別者に突然射殺された過去があり、相棒で恋人のブレアレオス(事故で全身をサイボーグ化してる)もヨーロッパ生まれの黒人の設定で発表された80年代当時としては進んでいたのだが!日本で2000年代に劇場版アニメ化された時に、人種設定がデュナンとブレアレオスが共に白人に再設定されており、ハリウッドの実写版攻殻機動隊で、主人公の草薙素子を白人スターが演じていて日本でも批判されたホワイトウォッシングを日本でもやっているのが残念(ガイナックスが80年代に手掛けたOVA版にはその説明はない)
クオリティ高い
人種差別に真っ向から中指を突き立てた怪作ホラー
賛
エンタメとして最高級の完成度でありながら、全編にわたって明確に強いメッセージ性を含んでいるハイクオリティな作品だという印象。
映像もさることながら、この映画は音楽が素晴らしい。自分が劇中最も震えた、サミーが"I Lied to You"を歌うと同時に様々な時代の音楽が登場するシーンでの音の重厚感が半端ないし、歌曲だけでなくスコアも良い。
本作においてブルース音楽は代表的な黒人文化として扱われており、それにつられて酒屋に現れる吸血鬼たちは小さなコミュニティ独自の文化を無理矢理併合して吸収しようとする大衆のメタファーだと思った。
最初のスモーク&スタック兄弟の登場シーンカッコ良すぎた。マイケル・B・ジョーダンの持つ華が半端ない。
否
個人的には若干規模が小さく感じてしまった。アル・カポネの名前が登場した時点でギャングの介入を期待してしまっただけに、一夜限りの騒動で終わってしまったのは本当に少しだけ残念。
あとこれは完全に好みの問題なのだが、人種差別と絡めるには吸血鬼という存在は少しファンタジーが強すぎるかなとも思ってしまった。
全178件中、121~140件目を表示













