「2部構成的な作品が好きな人におすすめ」罪人たち ああああさんの映画レビュー(感想・評価)
2部構成的な作品が好きな人におすすめ
この映画は1930年代のアメリカを舞台に、前半と後半で大きくトーンの異なる二部構成になっている。前半は、長年の夢だった酒場を開くために大金を手に故郷へ戻ってきた双子(スタック/スモーク)の兄弟を中心に、彼らの仲間やミュージシャンたちを巻き込んで開かれるパーティまでを描く、ミュージカル的なパート。若きブルース歌手である主人公が披露する歌唱や、往年のブルースの名曲を巧みに挿入した演出が魅力で、まったく飽きさせない。
特に、双子が仲間やミュージシャンたちを次々と連れ出していくシーンのワクワク感は個人的にとても印象に残った。パーティ開始後のライブ演出も素晴らしく、主人公の歌が持つ時代を超えた、普遍的な魅力を、DJやエレキギターなどの現代的な要素を重ねる・ミックスする演出には鳥肌が立った。
一方で、気になった点もある。
後半のホラーパート──パーティの最中、主人公の歌声が“ゾンビ”(劇中ではヴァンパイアと呼ばれる)を呼び寄せる展開──に入る必然性がやや薄く、前半とのつながりに違和感があった。伏線もやや唐突で、浮いて見えたのが正直なところ。とはいえ、家族がゾンビ化してしまうことへの葛藤や、銃弾が飛び交う中での肉弾戦などは王道ながら迫力があり、ベタではあるが十分に楽しめた。
前半で示唆、双子の裏社会的な過去や、主人公の卓越した音楽的才能が後半でどう活きるのかと期待していた分、そこが大きな展開に繋がらなかったのは少し残念だった。ゾンビ映画に一貫した連続性を求めるのは筋違いかもしれないが、やや肩透かしを食らった印象は否めない。
それでも、ラストシーン──片割れの双子と主人公の静かな対話──には心を打たれるものがあった。やや「取ってつけた」印象もあるが、それでも主人公が最後まで失わなかった“音楽への情熱”は、この映画が前後で大きくトーンを変える中でも貫かれていたテーマだったのかもしれない。