「社会派ホラーミュージック映画」罪人たち shin-zyさんの映画レビュー(感想・評価)
社会派ホラーミュージック映画
私なりの持論として「音楽映画(ミュージカルはまた別)にハズレなし」というのがあるのですが、本作品もまさにその例に漏れずの一級品の音楽映画でした。
他の方々のレビューでも皆様書かれておられますが、過去〜未来(現代ですが)の様々なジャンルの音楽が融合して演奏されていくシーンは圧巻の一言です。ブラックミュージック好きな私としては、もう体が震えるぐらい感動もののこれまで見たことのないようなシーンでした。
もちろん、音楽以外の側面でも、例えば人種差別が色濃く残る南部の田舎町を舞台にした歴史的な問題や、そこで成り上がろうとする主人公たちの振る舞いや思いなども、かなり重厚に緊迫感を持って描かれていたと思います。
音楽、歴史問題、人種問題、これだけでも1本の映画として十二分に成立しているのですが、そこへ、これもホラー映画の定番ジャンルである「ヴァンパイア」ものの要素を絡めてくるなど、その着想が素晴らしい。
音楽を奏でるとこの世の物でない(本作品の場合はヴァンパイアですが)者が現れ、人間を襲う、という。音楽って、楽しかったり、癒されたりするものなのに、恐怖を味わわされることになるなど、思いもよりませんもんね。
しかし、ヴァンパイアたちが音楽を奏でて、踊っているのを見ると、なにかしら恐怖も和らぐような気にさせられるのも、やはり音楽の「力」なのでしょうか。
これまで数多く「ヴァンパイア」映画が作られてきているのに、まだまだこのように新機軸を生み出せるジャンルであることにあらためて脱帽ですし、映画作家さんたちにとっても取り組んでみたい「ネタ」なんでしょうかね?
かく言う私自身も正直「またヴァンパイアか」て思いながらも、ついつい見に行ってしまうので、見る側にもヴァンパイアものに反応してしまうなにかしらのDNAでも刷り込まれているのかな?いや、私自身だけか⋯
とにかく、また新たな映画体験をさせてもらってライアン・クーグラー監督には感謝です。