「あなたは好きな人、いますか?」恋に至る病 ぱいらさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたは好きな人、いますか?
特に好きな人がいない私だが、ご縁あって恋に悩む友人とこの映画を鑑賞した。
前情報として考察が必要である内容なのは察しており、衣装の写り具合の差異が人の感情を判別する材料であることも解った。が、それだけでは到底理屈の説明が出来ない箇所が多々あった。取り扱う内容もいじめやマインドコントロール、自〇の類であり、とても一般層に受けそうにない。思えばあのプロモーションをせざるを得なかったのも納得だ。グロくもないのにPG12だし。
前提としてこの作品はリアリティを追求するような内容ではないのは、引きのカットの病的な多さで察せられる。「恋に至る病」という名の箱庭を眺めるような感覚。それ故に登場人物に対する感情移入は難しい。どの登場人物も自分の生命の倫理観をあまりにも欠いているからだ。主観として、解ってはあげられるが、、、と引いてしまう。
広告にもあった「ラスト4分」も何だかなぁと思った。正直作品としては難解云々を置いても評価し難い。辛口でもなく本音。端的に言えば安っぽい。山田杏奈の可愛さだけが一級品。そう思っていた。
が、この作品の真髄は恐らくそう言った作品そのものの出来ではないと思われる。
というのも私は評価しなかったこの作品、一緒に見た友人からは好評であった。しかも、この世を去る登場人物に寂しさや切なさを覚えるなどの感想が飛び出したのだ。
正直、しんみりした音楽やカットの引きの多さに誰かの心情を汲み取ろうとする気にもなれないし、そもそも物語の考察に思考がのリソースを割いてしまうために心情を読み解く余裕が無い。
この一瞬一瞬に、倫理観のないこの作品の世界に住まう登場人物に同情を見出していた。
というのも、この作品の登場人物の退場者は心ここに在らずの結果、行動に起こして自責なり自暴自棄なり〇害されるなどしてこの世を去っている。何かに心を奪われている状態であった。
そしてその友人もそれくらい恋に悩んでいた。
自分も彼の話を聞いて過去を振り返る機会があり、自分もそれくらい人を好きでいられて、何かにつけて疑り深くなったり、別れや決別が会った時に自分で食事を摂ることを拒絶した時期があったのを思い耽た。
そして、この映画が本当に解きたいのは話云々ではなく、人の感情のこういう部分なのだろう、とここで初めて思い知った。
どのような状況下であれ、心ここに在らずというのは人生において生命的にも危険が及ぶ事もあるがこれもまた人生の塩梅である事を踏まえると、エンターテインメントのような作品が収穫期の甘い果実で、今作は収穫前の苦くて硬い青い果実であると言っても差し支えない。
デートムービーとは程遠いが、どうしても好きな人がいる人にとってはとてもいい作品になるのでは、と思う。
