「純愛か洗脳か──考察必須の恋物語」恋に至る病 @さんの映画レビュー(感想・評価)
純愛か洗脳か──考察必須の恋物語
この物語は「純愛」か「洗脳」か──。
あなたの解釈次第で、物語の見え方が大きく変わる映画だ。
鑑賞と考察を経て初めて完成する作品であり、考えるほどに深みが増していく。
「純愛」と「洗脳」──その境界は紙一重で曖昧。
誰もが心のどこかで経験したことがあるかもしれない。
好きになってもらいたくてついあざとく行動したり、束縛してしまったり。
同時に、相手の言動に影響され、自分の感情や判断が揺れ動くこともある──
それは愛か依存か、あなたにも思い当たる瞬間はあるだろう。
映画では全編を高校生として描き、原作より説明を削ぎ落している分、
宮嶺や景の表情、“余韻”と“余白”で物語を語る構成になっている。
観客の解釈力が試され、ひとつひとつの表情の意味を考えたくなる演出だ。
原作未読の人は少し置いていかれる感覚もあるかもしれない。
しかし、それも映画版ならではの体験だ。
観客は物語に入り込み、宮嶺の視点で景との関係を追体験することになるだろう。
原作とは少し異なる印象を受ける部分もあり、それもまた楽しみのひとつだ。
脚本には気になる部分もあるが、それを差し引いても演者の繊細な表情と独特の世界観に引き込まれる。
観た後も心に残る“余韻の深さ”があり、考察込みで楽しむことで完成する、“恋に至る病”そのものの映画だ。
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