「同監督作品の中では難解ではある。」ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 サンマー麺さんの映画レビュー(感想・評価)
同監督作品の中では難解ではある。
ウェス・アンダーソン監督作品は5作、視聴してます。
前作フレンチ·ディスパッチに比べると少し難解ですね。
フレンチ·ディスパッチは人の内面や感情を丁寧に描いていて、本作とは別ベクトルで複雑ではあるのですが、本作はなんというか内容を詰め込みすぎというか面白さを表現するには時間が足りないのかなという気がしました。
本作主演のベニチオ・デル・トロも前作の役どころの方が良かったなぁ。彼は、理知的な外観とは裏腹に狂暴な演技が似合いますね。
前作の比較ばかりしてもしょうがないので本作のポイントを少しばかり。
本作は、大富豪でパブリックエネミーな父親が、今までろくすっぽ会ってない修道院に置いてきた娘をいきなり後継人にして、政治だの親類だのに妨害されながら家族愛に目覚める物語なのですけど、それと同時に娘の母親を殺した相手を探しにあちこちで情報を聞いて回るのも大きなプロットの一つで、ラストシーンでは真犯人と思っていた叔父(主人公の腹違いの兄弟)も殺したことを否定するし、実は娘の父親は主人公でもなければ叔父でも無いっぽいし、主人公は娘に対して嘘発見器を使って自身の潔白を証明するのだけど、この嘘発見器はスパイ(マイケル·セラ)から訓練すれば欺けると言われるぐらいには微妙な精度なんですよね。結果、娘は実の父親も母親を殺害した犯人も分からずじまいで、主人公は(多分)娘に隠し事したまま一緒にいる。
でも、主人公は最終的に富も名声も捨ててプロジェクト(フェニキア計画)を完遂することを選び、小汚いレストランで娘と(後、養子含めた息子らと)貧乏ながら一緒に暮らすことを選んだ。(まさに家族愛ですね。)
料理も皿洗いも苦手な男と自分を称していたのに最後は皿洗いを仕事にして、仕事終わりに娘と2人でウイスキー煽りながら黙ってトランプ遊びをする。そんな家族との幸せな一時を過ごしてるシーンで本作は終わるのですが、このラストシーンが素晴らしい!これ見るだけで本作を見て良かったなと思えるぐらい良いシーンでした。
当たりハズレが大きい印象の同監督作ですが、次作も是非劇場でみたいですね。
