「「反日」以前に、サスペンスやアクションとして盛り上がらない」ハルビン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「反日」以前に、サスペンスやアクションとして盛り上がらない
反日や抗日のプロパガンダ色は致し方ないにしても、単純に、サスペンスやアクションとしての盛り上がりに欠けていて、あまり楽しめなかった。
民族の英雄である安重根を、日本軍の捕虜を解放したり、敵の密偵となった裏切り者を許したりした「人格者」として祭り上げたい気持ちは分からないでもないが、その分、人間くささや面白みのない人物造形になっていて、キャラクターとしての魅力が感じられなかったのは致命的と言ってもよいだろう。
ヴィランを務める森少佐にしても、冷酷で威圧的なステレオタイプの日本の軍人でしかなく、威張り散らしているだけで、とても「強敵」とは思えないし、リリー・フランキーが演じる伊藤博文も、最後に倒すべきラスボスとしての威厳や重厚さに欠けていると言わざるを得ない。
ストーリーの面でも、大連に向かう列車内で遭遇したり、ウラジオストクのアジトを急襲したりしても、ことごとく安重根を取り逃がした上に、彼が伊藤博文の暗殺を企てていることを知りながら、ろくな警戒や警備もせずに、みすみすそれを成功させてしまう日本側の対応が、余りにもお粗末で呆れてしまう。
朝鮮側にしても、密偵を逆利用して、ハルビンの手前の駅で陽動作戦を仕掛けるのは良いのだが、囮になるのは、どう考えても、日本軍がマークしている安重根が適任だったのではないか(そうすると、歴史が変わってしまうのだが•••)と思えてならない。
何よりも、伊藤博文を暗殺する理由が、「これまで命を落としていった同士のため」としか説明されておらず、主人公たちを困難な任務に駆り立てる動機に、これといった必然性や説得力が感じられなかったのは、ドラマとしての欠陥であると考えざるを得ない。
さらに、氷結した豆満江や、満州の雄大な砂漠の風景は、大作としての風格を醸し出しているものの、その一方で、「このシーン、本当に必要だったの?」という疑問も残った。
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