「処方箋に書かれていたのは、希望。プライスレス。」Dr.カキゾエ歩く処方箋 みちのく潮風トレイルを往く さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 処方箋に書かれていたのは、希望。プライスレス。

2025年9月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

癒される

みちのく潮風トレイルが以前から気になっていたのでとても観たかった映画でした。

がん専門医である御年82歳になるDr.カキゾエが、青森県蕪島から福島県松川浦まで全長1025kmを歩き通す様を追ったドキュメンタリーです。

ドキュメンタリー映画としての完成度には色々と言いたいことがありますが、Dr.カキゾエの生き様そのものの前では些細な問題に見えます。
いや、冒頭のDr.カキゾエの言葉とあまり関連しないように見える序盤の進行に批判的になっている観客を中盤以降でグイグイと惹きつけるその手法は、所謂ヘタうまというものかもしれません。

「私はガンの専門家だから、ガンなんて早期発見できれば少しも恐ろしものではない」
その言葉の裏の意味が中盤以降でDr.カキゾエの半生がつぶさに明かされるにつれて違った意味を持ちはじめます。
そして、トレイルが辿る東日本大震災後の遺構とがんサバイバーの関連がボンヤリと浮かび上がってきます。

なんでもない市井の人の語りに、目頭が熱くなることしきりでした。

天災や病気で、否応なく人は命を失います。とても人間の力でそれを食い止められるものではありません。
だからこそ、せめて人間が人間の命を大量に奪う戦争や貧困を我々はなんとか止めなければいけないのではないか。
ちょっとトンチンカンですが、そんな想いを胸に劇場を後にしました。

さとうきび