「つげ義春の漫画の映画化。なかなか尖った映画。で、ちょっと癒し系で、人生を温かく見つめるような映画。」旅と日々 mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
つげ義春の漫画の映画化。なかなか尖った映画。で、ちょっと癒し系で、人生を温かく見つめるような映画。
つげ義春の漫画の映画化。なかなか尖った映画でした。
原作は、前半が「海辺の叙景」で後半が「ほんやら洞のべんさん」。
主役のシム・ウンギョン扮する脚本家が書いた映画が「海辺の叙景」という設定。で、「自分には才能がない」と自信喪失の中で、旅に出る。そこからが「ほんやら洞のべんさん」の話になる(原作では、漫画家の男だが、映画では女性のシム・ウンギョンの脚本家)。
前半の「海辺の叙景」は、河合優実がちょっとアンニュイで、ドキッとする色気を感じさせて、どことなくつげ義春の漫画に出てきそうな雰囲気がある。取り止めのない感じもつげ義春の漫画らしい。まるで映像のコラージュのような趣(いわゆるストーリーものではない)。圧巻なのは、夕景から暗くなるまでをワンカットで撮っているシーン。ほとんど人物の輪郭が見えなくなるまでの長回し。多分このシーンのために今回は、16ミリフィルム撮影ではなく暗さに強いデジタルカメラを使ったのでは、と思う。それと海の中のシーンもちょっと怖い。波と雨の中で泳ぐ二人のカットバック。で、唐突に終わる(というか大学で上映しているシーンに繋がる)。
見ている側は言葉にならない中途半端な気持ちのままに。
で、脚本家は旅に出る。ここからは、トンネルを抜けると「雪国」というベタだけど美しいシーンから始まる。「ほんやら洞のべんさん」の話。
こちらは、堤真一の素晴らしい怪演があり、楽しい話になった。ラストに熱が出て、警察に連れられて医院に行く事になるのは、映画のオリジナルで楽しい。
で、シム・ウンギョンの脚本家は帰ってゆく。スランプは脱したかどうかはわからないが、前向きな気持ちで帰っていったと思わせるラスト、タイトル「旅と日々」が出る。(ほのぼのとした音楽が流れる)
ちょっと癒し系で、人生の行ったり来たりする気持ちを温かく見つめるような映画。
映像は、シンプルで揺るぎない。風に飛ばされる帽子や暗い中での猫の動きが楽しい。音楽も良かった。
(劇場では、後半、大欠伸をする人がちらほらいた。そんなリラックスした気持ちのいい時間が流れていたのかもです)
何度か見直しながら、いろんな発見がありそうな映画。繰り返し見て、もっと味わい尽くしたくなる映画でした。
囲炉裏端に寝て、部屋なし、サービスなし。こんな宿屋もアリかもと、物好きな外人客が来そうな設定。いかにも欧州受け狙い。
ちなみに錦鯉は、薬漬けなので不味いそう。

