「タイトルなし(ネタバレ)」旅と日々 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
韓国出身の脚本家・李(シム・ウンギョン)は、監督からつげ義春の漫画「海辺の叙景」の脚本化を依頼されていた。
完成した映画は大学で上映され、ティーチインでの質問に「自分には才能ないな」と答えた。
しばらく後、上映会で李脚本映画に対して「エロスを感じました」と感想を述べた教授(佐野史郎)が死去。
弔問した教授宅で、亡きひとそっくりの双生児の弟から手渡されたカメラを持って、李は東北の温泉地に旅に出かけたが、あいにく空き部屋がなく、雪深い商人宿ともなんとも判別のつかない古い民家にたどり着き、主のべんさん(堤真一)と数日過ごすことになった・・・
という物語。
生と生、の映画。
(性ではない)
若い生にはエロスの香り。老いた生にはペーソスの匂い。
みずみずしい肌と垢じみた肌。
画面は、青と白の対比。
夏と冬の対比。
対比するも地続き。
つげ義春の漫画との比較のため、小学館文庫の『紅い花 異色傑作選2』を再読。
「海辺の叙景」は大きな差異はないが、「ほんやら洞」は漫画で最も効果的な「鳥追い」のエピソードが省略されている。
映画に挿入すると、「非日常」の要素が高まりすぎるという判断と思料。
個人的には「海辺の叙景」パートが面白かった。
劇中、佐野史郎演じる教授が言うように、何気ないのにエロチシズムを感じた。
蛸に食べられてしまう土左衛門の件、頭のない魚の件、強雨の中の游泳の件など、随所に死的なものが挿入されているからだろう。
対して「ほんやら洞」の方は、これまでに映画化されたつげ義春的なペーソスやオフビートなイメージのままで、やや凡庸に感じました。
一般的には、こちらの方がおもしろいと感じられるだろうが。
