「作家の記憶を追体験する映像表現と、家族の「嘘」の優しさ」兄を持ち運べるサイズに マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
作家の記憶を追体験する映像表現と、家族の「嘘」の優しさ
絶縁状態だった兄の死。一見すると、迷惑ばかりかけていた兄の存在は残された者への「呪縛」のように思える。
しかし、物語を通して感じたのは「家族とは支えることであり、呪縛ではない」というメッセージだった。
タイトルにある「持ち運べるサイズ」とは、物理的な話だけでなく、苦難や重い荷物を分け与え、残された者たちが自分も担ぐ(シェアする)ことを意味しているのかもしれない。
■「嘘」と「知らない顔」
劇中で浮かび上がる「なんで言わなかったの?」という問い。兄には妹も知らない顔があったが、そこでつかれていた嘘や沈黙は、決して悪意ではなく「相手を守るための嘘」だったのだと感じる。
知っているようで知らない顔がある、その多面性を認めることが供養にも繋がるのだと思わされた。
■作家の視覚を再現した演出
主人公が作家である設定を生かし、頭に浮かんだ言葉が文字として画面に現れる演出が印象的だった。「見たことや体験したことを常に書き留める」という作家の習性が視覚化されており、観客は作家の記憶を追体験しつつ、思考が生まれるリアルタイムな瞬間を共有できる面白い試みだと思う。
■震災のメタファーとしての「片付け」
舞台が東北であることは、この映画の裏テーマを語る上で重要だと感じる。
足の踏み場もない兄のゴミ屋敷。散らばった空き缶や資材を黙々と片付けていく姿は、どこか「震災の後片付け」と重なって見えた。
「場所に記憶が宿り、想いが宿る」。吸い殻一つでも、それを見れば兄の姿が蘇る。部屋(過去)を片付ける行為は、散らかった感情を整理し、喪失と向き合うプロセスそのものであったように思う。
こんばんは。
コメント失礼しますm(__)m
本作を深く読み取った素晴らしいレビューでした。
レビュー拝読し、作品の印象がより深いものになりました。
ありがとうございます。
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