「【”家族とは支えであり、呪縛ではない。”今作は疎遠だった身勝手で”嘘つき”の兄が突然亡くなり、妹と元妻が困惑しつつ後始末をする中で、兄、元夫への想い出を綴っていくヒューマンドラマである。】」兄を持ち運べるサイズに NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”家族とは支えであり、呪縛ではない。”今作は疎遠だった身勝手で”嘘つき”の兄が突然亡くなり、妹と元妻が困惑しつつ後始末をする中で、兄、元夫への想い出を綴っていくヒューマンドラマである。】
ー 中野量太監督は、驚きの商業デビュー作「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」「浅田家!」で、様々な家族の形を描いて来た監督である。
特に「湯を沸かすほどの熱い愛」を劇場で観た際には、宮沢りえさんの熱演もあり、場内が啜り泣きで包み込まれた事を、今でも思い出すのである。-
■エッセー作家である理子(柴咲コウ)の下に、或る晩宮城県の塩釜の警察から兄(オダギリジョー)が亡くなったので遺体を引き取りに来て欲しいと夜に電話が入る。兄に対し幼い頃から”早く消えて欲しい。”と屈託した想いを持つ彼女は”仕事もあるので、5日後に・・。”と言い電話を切るが、息子二人と夫から早く行きなよと言われ、滋賀から出かける。兄が引き取った息子の良一は児童養護施設に居る。そして、元嫁、加奈子(満島ひかり)と娘、満里奈と共に、そそくさと葬儀を済ませ、兄が住んでいた多賀城のアパートを掃除しに行くのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作も変わらずに、安定した面白さである。
今までは生きた家族の物語であったが、今作の兄は既に病で亡くなっている。だがオダギリジョーが演じる兄が、憎めない男なのである。オダギリさんのコミカル演技が炸裂するシーンの数々が可笑しいのである。ゴミ溜めのような部屋の整理をして車でそれをゴミ収集所に運ぶ際に、得意だった柔道着を着ながら並走したり、ゴミを投げ捨てるシーンではゴミと共に理子に投げ捨てられたり・・。
・だが、彼が理子に送っていた”金くれ!”メールに書いてあった様々な出来事
<1.良一にピアノを習わせたい。2.酔って生活費全額を募金した。3.天職を見つけた!>が、徐々に本当の事であった事が分かる展開や、兄が良一を含めて多くの人に愛されていた事が分かるシーンの描き方も良いのである。
・兄の部屋には、理子と一緒に写った幼い時の写真など、家族写真が丁寧に壁に掛かっているのである。このシーンも良いのだな。少し「浅田家!」を思い出しつつ、このシーンで理子や加奈子、満里奈は亡き彼への想いを募らせていくのである。
・理子は母から言われた”貴女は冷たいけれど、お兄ちゃんは優しいから。”と言う言葉と共に兄が母に可愛がられていた事が心に引っ掛かっているのだが、徐々に兄の優しさが明るみになって行く描き方も良いのである。
それは、兄が家族の為に焼きそばをソース二種類使って作る姿に象徴されるであろう。
■アパートはすっかり綺麗になるが、良一が”もう一度アパートの部屋に行きたい。”というシーンが良い。
1.良一は部屋の中で父が焼そばを作る背中を嬉しそうに眺め、
2.加奈子は白いタキシードを着た元夫の姿を見て、喜び、
3.理子は、天職である警備員のユニフォームを着た兄と会うのである。
そして、どのシーンでも、兄を演じるオダギリジョーさんは素敵な笑顔を浮かべているのである。
<今作は疎遠だった身勝手で”嘘つき”の兄が突然亡くなり、妹と元妻が困惑しつつ後始末をする中で、兄、元夫への想い出を綴っていくヒューマンドラマなのである。>
共感ありがとうございます!
「浅田家!」は二宮和也が嫌いなので観に行かなかったのですが、中野量太監督の家族愛を描く力量は山田洋次監督以上かも知れません。
レビューには書かなかったんですが、人間いつ死ぬか分からないので、自分が死んだときに後片付けをする子供たちの事を考えると、そろそろ終活を初めて身辺整理をしておいた方が良いのかな? という感じで現実を元にした作品を観て、超現実的なことを考えています。
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