劇場公開日 2025年11月28日

「家族の大切さを改めて感じさせてくれる」兄を持ち運べるサイズに おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 家族の大切さを改めて感じさせてくれる

2025年11月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

泣ける

楽しい

幸せ

■ 作品情報
疎遠な兄の死をきっかけに、家族が遺品整理を通して絆を再確認する人間ドラマ。監督・脚本は中野量太。原作は村井理子のノンフィクションエッセイ「兄の終い」。主要キャストは、柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり。共演に青山姫乃、味元耀大。

■ ストーリー
作家として活動する村井理子(柴咲コウ)は、何年も疎遠だった兄(オダギリジョー)の突然の訃報を警察からの電話で知らされる。理子は兄の残した後始末のため東北へ向かい、そこで7年ぶりに兄の元妻である加奈子(満島ひかり)と娘の満里奈(青山姫乃)に再会する。彼らはゴミ屋敷と化した兄のアパートを片付けながら、マイペースで自分勝手だった兄に対する不満をぶつけ合う。しかし、理子が兄への悪口を続ける中、加奈子は「もしかしたら、理子ちゃんには、あの人の知らないところがあるのかな」と語る。これをきっかけに、故人の人生を通して、家族というもののあり方を改めて見つめ直すことになる。物語は、世界一迷惑な兄の死をきっかけに、残された家族が直面する葛藤と、4日間のてんてこまいな後始末の日々を描く。

■ 感想
予告編で興味を抱き、幸運にも試写会に当たったので、一足早く本作を鑑賞させていただきました。ユーモラスな演出を随所に散りばめながら、家族について改めて考えさせる素敵な作品で、なかなかおもしろかったです。

特に印象的だったのは、主人公・理子の心の変化です。幼い頃は兄を慕いつつも、どこかで嫉妬心を抱き、大人になってからは自由奔放で無責任な兄を遠ざけていた彼女が、少しずつ兄への見方を変えていく様が、じわりと胸に染み渡ります。兄の元妻・加奈子と時間を過ごす中で、自分の知らなかった兄の一面を知り、いつの間にか心の奥底に埋もれていた兄への深い思慕を思い出していく描写は、非常に心地よかったです。

加奈子もまた、かつて家族4人で過ごした幸せな日々を思い出し、息子・良一と共に新たな出発を決意する姿が丁寧に描かれており、家族の再生を感じさせます。満島ひかりさんの熱演は、その感情の機微を見事に表現しており、涙を誘います。それを際立たせているのが、良一役の味元耀大くんの演技です。悲しみや自責の念から心を閉ざしていた良一が少しずつ心を開いていく様を、ほんのわずかな表情の変化で見事に表現しています。

家族の死を扱いながらも、ユーモラスな描写とオダギリジョーさんの軽妙な演技で、必要以上に暗く重い話にしていないのは好感がもてます。ただ、終盤のアパートでの邂逅シーンはちょっとファンタジックでくどかったので、あそこは良一だけで十分だったように思います。

ともあれ、「家族とは支えであり呪縛ではない」という言葉が印象的な心温まる作品でした。奇跡的な絆で結ばれた家族の大切さを改めて感じさせてくれます。

おじゃる
おつろくさんのコメント
2025年11月30日

共感ありがとうございます!

自分には弟がいるんですが、この弟が理子のクズ兄みたいな性格で家族全員で疎遠になっているんですが、両親が鬼籍に入ってしまったので何かあったら自分のところに「役目」が回ってくることを想像するとモヤモヤしてしまいます。

逆に自分に何かあったら二人の子供に後始末をしてもらわないといけないので、終活に着手しようかと悩んでいる最中です。

おつろく
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