コラテラル : インタビュー
監督デビュー作の「ジェリコ・マイル/獄中のランナー」から、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ競演の「ヒート」、アカデミー賞7部門ノミネートの「インサイダー」、そして20世紀の英雄モハメド・アリを描いた「アリ」まで、一貫して独特の映像世界を構築し、常に「男の闘い」を描くマイケル・マン監督に、最新作「コラテラル」と監督自身のスタイルについてきいてみた。
マイケル・マン監督インタビュー
「作家のスタイルとは、一時的なモノもあれば、今でも新鮮なモノもあるんだ」
編集部
――まず、映画の中の暴力について、お聞きしたいのですが、監督はどのようにお考えですか? 監督の暴力描写はリアルですが、どうもカッコよすぎる気がします。
「私にとってバイオレンスというのは、セックス、コメディ(お笑い)、絵に描いたような美しさを撮ることと同じで、機能性なんだ。ストーリーを語る上で、どれだけ必要かを考える。やり過ぎたら、完全に無意味なんだよ。まず初めにストーリーがあって、そのストーリーの各シーンを完全に分析する。で、シーンごとにどういうバイオレンス描写が必要かを見極める。例えば、この『コラテラル』では、Feverというディスコでの銃撃戦があるよね。あそこではダンスと同じで振り付けをするのだけど、振り付けをするためにはキャラクターがその時、何をしているのかということと、ストーリーをすべて把握していなければいけないわけだ。ただ素晴らしいダンス、カッコイイ振り付けというのは間違っていると思う」
――アクションシーンの構成、演出の面で影響を受けた監督が多くいると思うのですが。
「やっぱり(セルゲイ・)エイゼンシュタインだね。他の誰よりも」
――(サム・)ペキンパー等の暴力的な作品が多かった映画作家の影響は?
「多分、ペキンパーは最初に『ワイルド・バンチ』を観たと思うんだけど、初めはカッコイイと思ったよ。でも、スローモーションが多すぎてね(笑)。実はそんなに影響を受けてない。まあ、影響っていった意味で、ニコラス・レイの『理由なき反抗』とかは、50年近く前の映画になるけど、昨日作られたかのような、新鮮な印象を受けるよね。作家のスタイルというのは一時的に流行るものもあれば、流行と全く無縁のモノもある。自分の作品でも『ヒート』のロバート・デ・ニーロのカッコよさは今後50年すたれることはないだろうと思うけれど、『マイアミ・バイス』は今観ると、恥ずかしい部分が結構あるんだよね(笑)」
――その「マイアミ・バイス」を今度、映画化するという噂がありますが。
「ああ、やるよ。監督をやるかどうか、分からないけど、プロデューサーとして一応クレジットされるだろうね」
――誰がドン・ジョンソン(=TV『マイアミ・バイス』の主演俳優)のパートを演じるのですか?
「新キャストは多分コリン・ファレルとジェイミー(・フォックス)だよ」
――あなたは撮影にとても気を使っていると思うのですが、お気に入りの撮影監督、これから一緒に仕事をしたい撮影監督はいますか?
「誰が好きか? うーん。『パッション』のキャレブ・デシャネルだね。あと、この『コラテラル』を一緒に撮ったディオン・ビーブ。彼も素晴らしい。それと、友人のダンテ・スピノッティだね。ダンテとは多分、映画版の『マイアミ・バイス』で組むよ」
――今回4度目の来日ということですが、東京という街は、あなたの映画のロケーションとしてはいかがですか? 東京で映画を作ってみたいと思いませんか?
「もちろん作りたいよ。東京で『マイアミ・バイス』でもやるかな(笑)」