ファミリアのレビュー・感想・評価
全2件を表示
性行為でしか繋がれない夫婦の絆とどうしょうもない関係を断ち切る親子
DV夫に隷属させられている親子。歯をおられ接近禁止命令をとり警察に駆け込むが、結局母子は四年間バラバラに生活させられることのなる。
お決まりの子供の成長と共に父親の道を進む弟、それはよくないと母の地道な仕事を見習う兄。
そんな夫婦しか知らない弟の行動は、思想的なこともわからずにファシスト仲間に入り、ある意味同類の共産主義者との感情的な喧嘩からの殺傷?刺殺事件、結局、刑務所に行き父親と同じ道を歩む。前後して恋人もできるが犯罪者の父を見て同じ様にならないように収監時に遠ざけようとするが、やはり両親の関係のように恋人との関係に戻る二人。だが性的快楽からは離れられない。この夫婦関係にも共通する。
しかし親子関係を正常化できないDV父親は悟り、弟に排除させる事になる事はすぐに予想のつくお決まりの行動と思われる。それにより健全性を取り戻し、弟は9年間、収監後時を経て再起する。どろどろの関係からの最後の最後の逆転ストーリー。ホントかいな?
身体・心理的暴力も性被害も連鎖する
当事者の息子が書いた自叙伝の映画化。1998年から2008年のイタリア。妻に暴力をふるう夫も被害を受ける妻も、その様子に耐えていた息子二人、特に弟のジジも複雑で繊細で多面的で光もあれば影もある(照明が印象深く効果的)存在として描かれている。その点がよくある家庭内暴力映画と一線を画していた。最後のシーンで、父親がジジに言う言葉:「俺はもう変われないんだ。やれ!」には思わず涙が流れた。
今でも女性が3日に一度の割合で殺されるイタリア。その背景には根深い家父長制がある。被害者の問題はストックホルム症候群やグルーミングなどの名称で分類して済むことではない。物事の本質を見えなくする。女性や若い人間にとっての経済的自立の困難さという社会構造も関係している。日本では、大人の女性や女の子・男の子への性被害があまりに凄まじい。この映画でテーマになっている心理的・身体的暴力行使と同様に性被害も連鎖される。
父親を殺すことで暴力の連鎖から抜け出たジジは、9年間の服役中に勉強し教養を身につけ今は多国籍企業でIT技術関連の仕事をしている。
この映画では右翼、ファシストの台頭による世界の分断にも触れている。才能ある若い監督の登場を心から喜びたい。本作の日本での映画館公開は是非とも実現して欲しい。(イタリア映画祭2025 )
全2件を表示