でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男のレビュー・感想・評価
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どんなホラーよりも恐ろしい
実際にあった事件なので、結末は知っている状態で見た。
だからこそ、何が目的なのか、なんでこんなことをするのかがわからず、理解できない人を相手にする恐怖感がすごい。
この事件の被害者の方々を思うと、想像を絶するつらさだったんだろうなと、本当に胸が締め付けられるし、自分だったらと思うと怖すぎる。
柴咲コウさん演じる氷室律子側の視点では、氷室律子はごく普通の母親で、綾野剛さん演じる薮下誠一が極悪非道の教師。
しかし薮下誠一視点だと、真逆になる。
この構成は『怪物』と少し似ているなと思った。
しかし『怪物』とは違うのは、早い段階で真実が明らかになる点。そこからはもうずっとスクリーンに釘付けだった。
柴咲コウさんと綾野剛さんの演技合戦が凄まじく、お互いの視点での演じ分けも、見た目が同じなのに全く違う人に見える。
ふたりの迫真の演技も相まって、一層この事件の理不尽さへの憤りや、恐怖感が増した。
そして、この事件はメディアの責任も大きいことを描いている。
『フロントライン』でもメディアのセンセーショナルさだけを追い求め、真実と異なる報道の非道さを描いていたが、こちらの作品はさらに上をいくと思う。
メディアの持っているペンはナイフで、放つ言葉は銃弾だという意識を持って仕事をしてほしい。
また、カスタマーハラスメントやらモンスターペアレンツやらの言葉も市民権を得た昨今、明日は我が身かもしれないので、BtoCビジネスをしている人たちは、クレーム対応の初手がいかに大切かを痛感する作品にもなっていると思う。
そういう点でも気付きが多い作品だった。
2003年に起こった実話。想像を絶する、決して他人事ではない「ダイナミックな法廷劇」。
本作は、設定としては非常に難易度の高い法廷劇と言えるでしょう。
というのも、小学生が教師から体罰や自殺強要を受けたとして、週刊誌で大きく報道されて、実名報道で「殺人教師」というレッテルを貼られてしまうからです。
そして連日ワイドショーなどで大きく報道されて、裁判に賛同した全国の弁護士が500人を超える規模で集結し、大規模な「弁護団」を結成します。
その一方で、「殺人教師」とレッテルを貼られた教師の方は、自身の弁護士すら見つけられない状況で、裁判に臨むことになるのです。
「外堀を完全に埋められた状況」で、男性教師はどのように裁判を戦えばいいのでしょうか?
このような設定になっているので、本作の結末は明らかなように思えるのですが、実はタイトルにもあるように、本事案は「ウソで塗り固められた“でっちあげ”」だったのです。
つまり、原告の「完全に思えるほど外堀を埋められた状況」VS被告の「証明はしにくいけれど実際にやっていない」という、極めて被告が不利な構造が本作で描かれているのです。
始まってすぐに柴咲コウが演じる被害者の母親が宣誓し、供述を始めます。そのため、そこからしばらくは、「被害者の母親の供述をもとに描かれるシーンである」という点に注意が必要です。
また、裁判で訴えられているのは、男性教師だけでなく、管轄している「市」も一緒に訴えられているのです。
そのため、終盤の「判決」の際には男性教師だけでなく、管轄する「向井市」(ムカイシ)も登場するので混乱しないようにしておきましょう。
本作を見ると、誰もが被告になり得るような社会の構造が見えてきて、決して他人事ではない作品だといえます。
社会がでっちあげた。
そもそも母親が躾ができずクソガキに育った子供を利用して自分の憂さを晴らすために嘘をついてひとりの教師を社会が陥れた事件。
まず学校の管理職が教育委員会やPTA、親に正面からぶつからず事なかれ主義が招いた、それを病んだ母親が週刊誌にリークして世間を巻き込むことになるのだがおかしいと思い声を上げたのはたった一人の母親。
金八先生の教え子や熱中時代の子どもたちなら先生は悪くないと庇う行動に出たし、それに親も同調しただろう。
陥れた要因のひとつにマスコミの報道があるが、ゴシップの記事を鵜呑みにして一方の嘘さえ真実であるかのように広まり、一個人が晒される社会は何としても変えなければならないよね。
ましてこの事件から20年以上が経ち、市民の全員がスマホでカメラを持ち歩いてる現代社会では、言い訳すら悪事に仕立て上げられてしまう。
一筋の光はと言えば妻と子供が最後まで信じてくれたことと正義の弁護士との出会い。
柴咲コウ演じる母親は怖かった。
怖かった
佳作
チラシや予告で、殺人教師と呼ばれた男は実は…という構図ははっきりしてるのでネタバレにしませんが、それでも嫌だという方はご覧になってから読んでください。
最初に教師によるいじめを告発した母親の視点で始まり、後で同じシーンを教師による視点で繰り返し、全く違う話になっているという展開に、両者の違いの異常性を体感させる手法が凄いし、怖さを実感させる。
一方の言葉だけを鵜呑みにして、客観的事実を確認しないままその場をやり過ごす事がいかに悪手であるか、カスハラやモンペに対する認識が高くなっている現在もこのような事は起こっているのではないかと思わせる。
正直、最終的な爽快感は得られない。何故、このような訴えがされたのか、一部については、母親の叱責を逃れる為に子供が嘘をついたと理解出来るシーンがあるが、それだけでは説明出来ない。普通の弁護士物なら相手の事情まで明らかにする所だが、そういった親切さはない。それがよりリアルだったと思う。
死に方、教えてやろうか?
真実とは
情報が人を殺す。社会が作り上げる“でっちあげ”の恐怖。
この作品は、単なる“事件の映画化”ではない。
情報の拡散が人を追い詰め、命さえ奪いかねない社会の構造や、職業的な正義と個人の尊厳がぶつかり合う瞬間を描いた、静かでありながら重みのある人間ドラマだった。
構成は章立てで、視点が切り替わるたびに視点が揺れることで「どちらが真実か分からない」という心理の追体験になる。
その不確かさこそが、この作品の持つ怖さであり、メディアや世間の“見方”がいかに人を決めつけ、消費していくのかを問いかけてくる。
綾野剛は、感情を抑えつつも徐々に心を削られていく教師の姿を丁寧に演じていて、目線ひとつで観る側の胸を締めつける。
柴咲コウもまた、激情と冷静さを行き来する繊細な芝居で、観客の判断を揺さぶってくる。
二人の対峙は、派手な演出はなくとも十分にスリリングだった。
そして、光石研の存在感が忘れられない。
出番は限られているが、彼の沈黙と表情には、言葉以上の重みがあり、何度も心をえぐられた。
この映画が描こうとしているのは、真実よりも「人は何を信じるのか」という問いなのかもしれない。
• 世界へ入り込む度:★★★★☆
• 感情ゆさぶられ度:★★★★★
• エネルギー消費度:★★★★★
• 配信でも観ます度:★★★★☆
• 人にすすめたい度:★★★★☆
モンスター教師かと思いきや
ロッキー2な構成は成功。
原作には記載のなかった近況も
このニュースを見聞きした人は結果まで見るべき
SNSがある今、違う様相になっていたかもWith social media today, things might have looked very different.
この映画の中で
1番のクズは校長だ。
ただ日常においては珍しい存在ではない。
面倒事を先延ばしにすることは
それを「する」か「しない」かの差でしかない。
個人的には、
主人公に謝らせて、
時間稼ぎと責任転嫁と
既成事実作りしていたのが
あまりにも見え見えだったので
ムカつきっぱなしだった。
主人公に
それを強いていた時の言葉が、
言葉ヅラだけは
もっともらしい響きで
それだけになおさら苛立ちが募った。
でもあんな事は残念ながら
日常において珍しいことではない。
それだけにこの映画の不気味さが
恐ろしいまでに迫ってきた。
これが実話を元にしているのも
いやはや・・・。
元になったルポルタージュを
読んでみようと思う。
P.S.
元のルポルタージュ読みかけているが、
校長や教頭は、もっとクズで、
件の両親も・・・・・。
呼んでいて胸糞悪くなる。
映画はかなりマイルドになっている。
In this film, the worst person by far is the principal.
But sadly, such people are not that rare in real life.
Putting off dealing with trouble is merely a matter of choosing to act or not act.
Personally, I was constantly irritated because it was painfully obvious that he was making the protagonist apologize just to buy time, shift blame, and create a fait accompli.
The words he used when forcing that apology sounded so superficially reasonable—
and that made it all the more infuriating.
But unfortunately, things like that aren’t uncommon in everyday life.
That’s exactly why the eerie tone of this film struck me as so disturbingly real.
And to think this was based on a true story…
Honestly, it’s chilling.
I think I’ll read the reportage it was based on.
P.S.
I've started reading the original reportage, and the principal and vice principal are even more despicable.
As for the parents involved... well...
The more I read, the more disgusted I feel.
The film is actually quite toned down in comparison.
胸のすくようなドラマじゃないけど
法廷ものが大好きである。
地道に集めた証拠の積み重ねで相手方の論理の隙をついたり、あるいはたまたま発見された証拠が状況を大逆転したりするのが心地よいからだ。フィクションであれノンフィクションであれ、そこにはドラマがある。
しかしこの作品は胸のすくような結末にはなっていない。事実に基づいているからでもあるが、制作の意図が観客をスカッとさせることに重点を置いていないからだろうと思うのである。
三池監督が本当に描きたかったのは、報道のあり方や学校制度のあり方への疑問ではなかったかと思う。さらに言えば、虚言が簡単に事実としてまかりとおってしまう世の中を指弾すること。嘘を発することは容易いのに、嘘を嘘と証明するのは時間がかかる。要するに「言ったもん勝ち」の世の中。その陥穽に嵌まらないために、私たちはどう身を守ればよいのか、考えさせられる作品だった。
あと、この作品を観ようと思ったのは、
「湯上谷弁護士を演じた小林薫が父さんにしか見えなかった」と、息子からLINEが来たからである。確かに最初の登場シーンは私の外見や動作に似ているかも知れない笑。
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