「記憶を辿るSF・ホラー・ミステリー」アッシュ 孤独の惑星 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
記憶を辿るSF・ホラー・ミステリー
一般劇場公開はされていないで、Amazon primeでの配信作品。第2の地球を求めて旅立った宇宙船のクルー達が辿り着いた謎の惑星『アッシュ』を舞台にしたSF・ホラー・ミステリー。こうした作品の代表作と言えば『エイリアン』を想起するが、小説のコンクールで例えると『エイリアン』は直木賞で、『アッシュ』は芥川賞の様な内容…、と言って伝わるだろうか?
エイリアン系の、生き残りをかけた息づまるサバイバル・エンターテイメントと言うよりは、本作は、主人公・リアの宇宙船での事件の記憶とアイデンテイ―を辿る、サスペンス・ミステリーとしての色彩が濃い作品。そして、無機質な宇宙船内部や荒廃した惑星のモノトーンの色彩に対して、天空や宇宙服のライト、医療ロボットのスキャナー等の鮮やかな色彩を織り込むことで、幻想的な中にミステリアスな世界観を生み出している。
ある事件後で目覚めたリアは、そこで、共にしてきたクルーが無惨にも殺されている光景を目の当たりにする。しかし、リアはそれまでの全ての記憶を失くし、「ここはどこ?なぜこんなことになったの?」状態。そこから、観る者もリアがフラッシュバックする断片的な記憶映像を頼りに、リアと共にその謎を明らかにしていく没入感はある。そこは、フライング・ロータス監督の巧さを感じた。
しかしながら、後から登場してきたブライオンの存在、いきなりエイリアンの遺産となる空気清浄機で起きた事件、どうやってエイリアンが宇宙船に乗り込んだのか、エイリアンとリアとの対話、等、細かな物語としての辻褄やシチュエーションと言う点では、作りが雑と感じたが、本作は、あくまでリアの記憶を巡るミステリーとして、緊迫感と緊張感を楽しむ作品だと思う。