劇場公開日 2025年8月22日

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「最高です!」バレリーナ The World of John Wick R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 最高です!

2026年1月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

『バレリーナ』レビュー

2025年の作品。
この物語の面白さは、アクションではなく構造そのものにある。

まず、この世界にはすでに「コンチネンタル」という土台が存在する。
殺し屋たちのためのセーフティゾーン。
厳格なルールによって成り立つ、異様だが完成度の高い制度だ。

その世界の頂点に立っていたのが、ジョン・ウィック。
愛する妻を失い、復讐者となった彼の物語は、すでに完結している。

本作『バレリーナ』は、そこに別の人生を差し込む。
一人の少女イヴが、殺し屋になっていく物語だ。

世界はすでに出来上がっている。
ルールも、秩序も、伝説的存在もいる。
だからこそ、ジョン・ウィックやコンチネンタルを知る観客ほど、この物語の奥行きに痺れる。

当然、面白い。

ジョンがなぜイヴの肩を持つのか。
それは彼自身が、かつて同じ「はみ出し者」だったからだ。

この結果を、ルスカ・ロマのディレクターは予想していたはずだ。
同時に、それは賭けでもあった。

イヴの失敗は、キティモラとの戦争を意味する。
ここで重要になるのが「読み」の巧妙さだ。

キティモラの本拠地は誰も知らない。
知れば殺される。
だから所在は掴めなかった。
村全体が組織だったことも、想定外だった。

イヴの単独行動により、「主宰」はルスカ・ロマと交渉せざるを得なくなる。
この時点でディレクターは、チェックメイト目前を感じていたのだろう。

派遣されたジョン・ウィックは、予想通りルールを破り、助太刀する。
彼が「死んだ」という報告を聞いたディレクターの演技――
声を詰まらせるその姿に、彼女の底知れなさが表れる。

ジョンは違和感を抱きながらも、体裁は貫かれる。
この重厚な駆け引きが、物語を一層引き締めている。

イヴの姉レナの存在も決定的だ。
イヴは父を殺した組織を絶対悪と信じ、その一点で生きてきた。
だがレナが語るのは、「どっちも同じだった」という事実。

違いは、誰が父を殺したかだけ。

ここでイヴは、何度も聞かされてきた「選択」という言葉が、
実際には存在しなかったことを悟る。

ならば、主宰を殺すしかない。
レナの死が、その決断を確定させる。

ジョンに止められても、銃を一本、また一本と向けられても、行くしかない。
そこに、かつての自分をジョンは見る。

この世界に意味や善悪はない。
あるのはただ、自分の行動に納得できるかどうかだけだ。

だからジョンは助太刀する。
誰も見ていない。
見た者は皆殺しだ。
彼の声に従うことが、この世界で生き残る唯一の道。

その過程で死んでも、納得できるなら、それでいい。

イヴもまた、殺しの対象となった。
奇しくもジョンと同じ道だ。
だが彼女は、納得している。

ルスカ・ロマは最大級の組織となり、
なぜかエラの父は生きていた。
それは、負の連鎖を断ち切る可能性を示している。

この異様な世界で、唯一選べる方位磁針。
それは「それに納得できるかどうか」だけだ。

めちゃくちゃ面白かった。

R41