親友かよのレビュー・感想・評価
全9件を表示
私はあなたの「150人」に入りますか
人間が覚えていられる友達の数は150人まで。このセリフは人類学の成果「ダンバー数」に基づいているようだ。この言葉に象徴されるように、本作は“記憶することの美しさ”と“忘れることの残酷さ”をめぐる物語だ。
主人公は高校3年生のペー。彼は、事故で亡くなった同級生ジョーを弔う映画を作ることで無試験での大学進学を狙っている。ところが実際にはジョーのことをよく知らず、偶然見つけたジョーの短編小説データをもとに物語をでっちあげる。そこへ現れるのが、本当にジョーと親しかった女子高生ボーケーだ。彼女はペーの嘘を見抜き、容赦なく告発する。しかし次第に二人は映画作りに引き込まれるようになる。
このボーケーちゃんがとにかく魅力的。刑事のようにペーを追い詰め、制作が始まると今度は“鬼監督”として主導権を握る。日本でいえば今田美桜さんみたいな、真面目さと意地悪さを併せ持つキャラクター。ボーケーがジョーを弔う理由には苦い過去がある。中学時代、仲の良さをからかわれ、ジョーの片思いの相手をみんなに暴露してしまったのだ。
やがて映画が完成に近づく頃、衝撃の事実が明らかになる。ジョーの短編は、病弱な同級生オームからの盗作だったのだ。ペーとボーケーは、学校全体の期待や進学をかけた映画を完成すべきか葛藤する。2人がいったいどんな答えを出すのか…。
冒頭の言葉のように、人間の記憶に限界がある以上、誰かを覚えておくことは別の誰かを忘れることにつながる。映画は、この残酷な真理をよく表現している。平凡なジョーにクローズアップすることは美しい行為のようでいて、別の誰か(オーム)を陰に追いやることかもしれない。ジョーのありのままを偽ることかもしれない。
だとすれば、ペーたちが「もう一つの映画」でジョーの人生を描くことは、誠実ではあるけれど物語の軸をぼかしてしまったと思う。「ジョーと本当に親友だった人生」「ジョーの告白が成功した人生」ではなくて、あくまで「いい人だけど忘れられたジョー」と向き合うべきだったのではないか。
私にとってはボーケーが一人で眺めていた、中学時代のジョーとの思い出の写真が今作のハイライトになった(ボーケーちゃん、歯列矯正中なのが微笑ましい)。ペーとボーケーが映画の仕事を目指すのは、制作陣好みのハッピーエンドだろう。でも2人が、2人だけのジョーに出会えるようなラストだったらよかったのにと思う。
「親友」ってわざわざ言わない
「親友」なんて口にするのは、逆に他人行儀な感じ。
お互い無二の友達と思っていたらそれで良くて、改まってそんな言葉を使う頭がない。
秘密を打ち明けたら親友なら、ペーとポーケーはすでに親友だ。わざわざそう定義しないだけ。
事件を起こして転校を余儀なくされたペーは周りに壁を作りまくっているが、隣の席の無神経ないがぐり頭はお構いなしに話しかけてくる。
少し変わっているけど憎めなくて人気者なジョー。(そういえば大昔ジョーみたいな同級生がいました。)
転校一か月でいつジョーと親友になったの? ジョーの何を知ってるの、とペーに詰め寄るポーケーは、昨年見た「ふたごのユーとミー」のティティヤー・ジラポーンシンちゃんじゃないか! あの映画ではひとり二役でがんばっていたけど、本作でも素晴らしい。
ふくれっ面も泣き顔も、自然体で瑞々しくかわいい。気が強くてはっきりものをいう、思うことには一歩も引かないところもすがすがしい。彼女の涙はとりわけ大きい気がする。(顔が細くて小さいから?)
ジョーとの仲良さが、ふたりで自撮りしたPC画面からにじみ出ていて、サイテーな自分への後悔と、「親友」に去られ、そのまま失ってしまった悲しみ、ジョーへの罪悪感もあるだろうポーケーの胸の痛みがよくわかる。
ジョーと親友のふりして無試験で大学合格を目指し、何も知らないのに映画製作に乗り出すペーは、なにしろ嘘で塗り固めているのでつじつま合わせに危機また危機の綱渡り。どう納めるんだろうか都度ドキドキして、なんとか乗り切ったところで最大の難関にぶち当たる。
あのジョーが!? という衝撃で私も頭がくらくらした。予定調和が入る余地がない展開で、これをどう乗り越えるか。
ジョーを守りたいポーケーの気持ちもわかるが、せっかくみんなで作り上げた短編映画を破壊するのはどうなのか。
自分を下げて全員を傷つけない形で事態を収めたペーに、脳内で拍手を送りました。
消されたと思った映画が、PC部(?)の部長の手で保存されており無事だったのもよかった。
後半、空想(願望?)と想像と過去が交錯して一瞬訳が分からなくなることもあるが、それで空白の部分が埋まっていく。
ジョーが受賞を辞退したのは想像か過去の現実かはっきりしないが、私はこれは現実で、彼が卑怯者じゃなくて良かったと思いました。
そして、片思いの彼女が好感触で浮かれて無敵感でいっぱい(この無敵感がとてもよく出ていました)、避けていたポーケーに話しかけてくれて良かった。
ペーはジョーと親友だと嘘をついたと思っていたが、実は意識していないだけでそこそこ「親友」に近い友達ではなかったか。
ペーに呼び止められ、ジョーが道路を渡るのをやめて戻ってくる、ハードディスクを受け取って、「じゃあまた明日」と去っていく。
叶うはずない願望だが、そうだったら良いのに、とうるうる思った。
学校内のクラスメートやi-Macのためにしぶしぶ協力し始めたがいつの間にか頼もしい映画つくりの仲間になったPC部の部員たちが、とても良い。
PC部の面々に、ひとりひとりの個性を出す見せ場があったらもっとよかった。
タイの高校生たちなのに、なぜか自分の高校時代と空気感が似ていて、とても懐かしい気持ちになりました。
結局、短編映画は落選。お父さんが言う通り、「お前は映画のことを何も知らないだろう」なので、落選してよかった。
映画つくりに目覚めたペーは、その道に進む決意をする。初日に向かった現場にはポーケーの姿があって。
ラストは予定調和だけど、気持ちよく収まって文句ありません。
タイの高校って、男子の制服は半ズボンなんだ!?
笑って泣けて楽しくてしっかり切なくて酸っぱい青春友情映画
男同士の友情の話のみならず、男女の友情も描いてくれて大変よかった。それゆえに切ない場面もある。
キャラクター一人一人が底抜けにいい奴だったりやる事が人間臭かったり、若者らしいやりとりも感情が発露するシーンもどれも眩しく見える映画。
あっ学生の時にこういう子居たわ〜っていうリアルさを感じられますね
登場人物に何度も重大な選択肢を迫られるシーンがあって、まあそうなるよな、って選択肢もあれば期待を上回る回答をしたりと楽しい。
映画作りをする映画なので映画ファンなら笑えるシーンが多々あってたのしい。
眩しい青春を味わえる映画で良かったですね。
この卒業生たちが何十年か後に素敵な同窓会を開けますように
私は去年の秋、高校の同窓会に参加しました。同期の卒業生が四百数十名いるのですが、百五十名以上の同窓生が集まるなかなかの盛況で思い出話に花を咲かせ、愉快なひと時を過ごしました。もう60代半ばを過ぎていますので近況報告をしていますと、参加してない(というか参加できないということなんですけど)メンバーが既に亡くなっていると聞いて驚くことがあります。3年生のときのクラスメイト(40名ちょっとです)では消息がわかっている中だけでも男子ひとり、女子ひとりが故人になっていました。長いこと生きていますと、死というのは意外と身近なところにいて突然ふと現れるものだと感じることがたびたびあります。我々の高校の同期にも別のクラスでしたが、卒業を待たずに3年になってすぐに自宅で入浴中に突然死した男子がいました。
さて、この物語のウラの主人公ともいうべきジョー(演: ピシットポン•エークポンピシット 人の良さそうな感じでバカっぽく見えなくもないけど、まあまあ爽やかな感じのイケメン)は本篇開始数分で事故にあい、あっけなくこの世を去ります。主人公のペー(演: アンソニー•ブイサレート 甘いマスクで北村匠海風イケメン)は舞台となる高校に転校してきたばかりでたまたまジョーと席が隣り合わせになっただけの関係でしたが、いい短篇映画を制作できれば進学に有利になることを知り、ジョーの親友だったとウソをついてジョーを偲ぶ短篇映画を企画します。そこにジョーと本当に親友だったボーケー(演: ティティヤー•ジラポーンシン 私が去年観た『ふたごのユーとミー』という映画で一人二役で双子を演じていました。特に美人というわけでもないのですが、タイを代表する国際派の女優になりそうな予感がします)や映画オタクの数人が合流し、すったもんだがありながらも、映画の撮影がスタートします。高校生による映画制作ということで、日本映画の『サマーフィルムにのって』とか『Single 8』みたいな感じかなと思っていましたが、それらよりもずっとコメディよりで演出が少しアカ抜けないこともあってB級学園コメディみたいな感じで前半は進みます。
ところがどっこい、前半のB級学園コメディ感はスポーツでいうところのフェイントで、ジョーの秘密が明らかになってきた中盤あたりから、物語はまったく別の様相を呈し始めます。主人公のペーはとても大きな決断をしなければならなくなります。本篇後半は友情をテーマにした本格的な青春映画です。クライマックスは卒業式。合わせてジョーを偲ぶ会も行われ、ペーはジョーを偲ぶ短篇映画を発表します。ボーケーは卒業生代表でスピーチをします。最近、トシのせいかすっかり涙腺が緩くなっている私はこのあたりのところでしっかりと涙活をしてしまいました。
ペーは大きな決断の代償として直近の目標を諦めなければならなくなりますが、人間的には大きく成長します。卒業からしばらくしてペーとボーケーはある場所で再会するのですが、私はそのシーンで泣けて泣けて…… 嗚咽を漏らしそうになりました。若い頃の夢は全部が全部、叶うわけではないけれど、どうか皆、成長していってほしいと心から願いました。
そして、何十年か後に同窓会を開いたときには映画撮影の思い出話に花が咲くといいですね。そのときにはジョーの思い出話も。そう、ジョーは皆の心の中で今も生きています。
徐々にミステリーへ転換していく様子が自然で良かった。
学園青春コメディかと思っていたけれど、学園コメディミステリーでした。
序盤のコメディから、中盤から徐々にミステリーへ転換していく様子が、とても自然で良かった。
出演したタイの若手俳優は、みんな上手だったと思う。
序盤は結構モヤるけれど、中盤から終盤で色々な不自然さが整理されて、エンディングはかなりスッキリして観終わることができる物語。
もう少し短い物語にすれば、もっと洗練された映画になると思います。
青春!熱い映画愛と苦悩!友情とは、親友とは 映画製作・上映の苦難を乗り越えたとき ただのクラスメイトが親友になった
転校生ペーの隣りの席の生徒ジョーが、突然事故で亡くなった。
ペーは、特に親しくなかったジョーを「親友」ということにして、仲間を集めて彼を偲ぶ短編映画を撮ることにする。
クラスメイト達も出演し、映画の撮影は順調に進む中、ジョーの意外な秘密を知ることになる。
名作「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のバズ・プーンピリヤ監督が製作!
「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」のアンソニー・ブイサレートとティティヤー・ジラポーンシンが再共演ということで、超期待しておりました!
特に「ふたご~」での圧倒的な演技のティティヤー・ジラポーンシンが、再び好演。
本作でも特に表情が輝いてます。
親友でないことを隠しながらも、映画撮影をみんなで楽しむ前半はキラキラ青春コメディ。
しかし、そのままストレートに話が進まないところが本作の肝ですね。
話の中盤、新たな事実が発覚してから、事態は一転。
よく知ることのなかったジョーの様々な面を知ることになる。
そして、「送る会」で全校生徒に公開する日。
友人の名誉を守るため、精魂傾けてできた傑作映画が皆に公開できない苦しさ。
自分を制して大学をあきらめて秘密を守ったことで、彼が死んだ後で、本当の親友になった。
実に切ない。
せめて、一緒に作ったスタッフには見せてほしかった。
(病気の少年と母親、ボーケーしか見てなかったですよね?)
GIRL&BOY
映画作り映画、大好物です。
観にいく理由はそれだけで十分でした。
特典は本国ポスター風ポストカードでした。
一風変わった映画作り映画に仕上がっており、転校生として学校に来たペーが隣の席のジョーについての映画を作るといった感じでわりとベタなフォーマットかと思いきや、ジョーが事故によって亡くなっているという状態からのスタートなのでどういう物語を紡いでいくのかというところに惹かれていきました。
大学進学のために映画を作る行動を取り始めたペーが、そこまで仲良くはなかったジョーの創作を知って、それをパクって映画にしよう!と意気込むんですが、それをジョーの友達のボーケーに嘘がバレてさぁ大変といった感じで進んでいくんですが、その中でジョーの事をどんどん知って行き、どんどん友達になりたくなっていくという不思議な構造も良かったです。
映画作りの様子はまさに映画好きな人達が作ったような詰め合わせ感がありました。
スパイものをやりたい!となったら「ミッション・イン・ポッシブル」と「TENET」組み合わせようぜ!という大胆な発想を映像にしていてワクワクしましたし、撮り方一つで世界観をガンガン広げていく創作の面白さがハイテンポで描かれるので楽しかったです。
映画に限らず様々なエンタメからアイデアを持ってきていたのも特徴的で、我らが日本の「ドラえもん」をモチーフにした映像も飛び出てくんですがこれまた個性爆発しており最高に笑えました。
楽曲も作品名や監督たちの名前を綴った独特な曲が流れてきてテンション上がりました。
ごちゃ混ぜのはずなのにめっちゃ綺麗にまとまっていて良かったです。
映画作りがひと段落した後はジョーとボーケーの関係性が描かれ、互いの秘密を打ち明けて親友になったのに、ついつい2人だけの秘密をバラしてしまって距離ができてしまい、そんな後悔を引きずったままここまで来たボーケーの心情が語られるシーンはかなりグッときました。
だからこそペーをたくさん責めたんだと思いますし、そんな中でもペーの映画作りを手伝ったんだなと思うともう良い子すぎてはわわ〜ってなりました。
若干終盤の展開はこってりしすぎており、ジョーの回想や病気を患った子の回想も交えつつかなり複雑に物事を進めていくので、供給過多だなぁとなってしまったのは事実です。
泣かせにかかってきているようにも思えて、前半のポップさと悪い意味でギャップになってしまっておりもったいなかったです。
病気の子のパートも展開をガラッと変えるためには必要だったと思いますがテンポがグシャっとなってしまったのはいただけなかったです。
ただ最後の送る会への持って行き方はペーの決断含め良い方向に向かっていたなと思いました。
綺麗事にしない終わり方、そこまでで得た信頼は確かなものがあり、パワポ野郎と言われても認めてくれる友達は確かにできているというのもグッと来ました。
その先の未来も暗くならず前に進んでいる感じがあり、爽やかな風が吹いているような終わり方でスッキリしました。
青春時代にしかできない事ってたくさんあるなと改めて思いました。
秘密を打ち明けることが親友、また新しい感情を知れてなんだか嬉しくなりました。
映画作り映画は最高だ。
鑑賞日 6/13
鑑賞時間 12:30〜14:45
ジェームス(涙)
問題を起こして高校を退学になったペーが、転校先の高校で出会ったジョーの短編エッセイをネタに映画をつくる話。
短編作品の受賞と共に、交通事故で亡くなるジョーから始まり、入試免除で大学進学出来るという謳い文句になびいたペーが、ジョーの映画をつくるといったことで盛り上がってしまい巻き起こっていく。
随分とコミカルなところから話しが転がり、中間が増えて題材もエッセイへと変わっていくけれど、まあ随分と丁寧だったり、それいりますか?なシーンもあったりと少々くどさも感じる。
そしてなかなか衝撃的な事実が突きつけられて、さてどうなるかと思っていたら、…っていうイメージということ?
それにしてもボーケーは良いイメージないてすけど、そんな何事もなかったかの様に?というか、ジョーのことを親友が書いたエッセイが題材ってことで良かったんじゃ?
面白くはあったけれど、まとめ方が強引というかご都合主義というか、なんかしっくり来なかったし、もうちょいシンプルで良かったのにという感じかな。
全9件を表示