「この卒業生たちが何十年か後に素敵な同窓会を開けますように」親友かよ Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
この卒業生たちが何十年か後に素敵な同窓会を開けますように
私は去年の秋、高校の同窓会に参加しました。同期の卒業生が四百数十名いるのですが、百五十名以上の同窓生が集まるなかなかの盛況で思い出話に花を咲かせ、愉快なひと時を過ごしました。もう60代半ばを過ぎていますので近況報告をしていますと、参加してない(というか参加できないということなんですけど)メンバーが既に亡くなっていると聞いて驚くことがあります。3年生のときのクラスメイト(40名ちょっとです)では消息がわかっている中だけでも男子ひとり、女子ひとりが故人になっていました。長いこと生きていますと、死というのは意外と身近なところにいて突然ふと現れるものだと感じることがたびたびあります。我々の高校の同期にも別のクラスでしたが、卒業を待たずに3年になってすぐに自宅で入浴中に突然死した男子がいました。
さて、この物語のウラの主人公ともいうべきジョー(演: ピシットポン•エークポンピシット 人の良さそうな感じでバカっぽく見えなくもないけど、まあまあ爽やかな感じのイケメン)は本篇開始数分で事故にあい、あっけなくこの世を去ります。主人公のペー(演: アンソニー•ブイサレート 甘いマスクで北村匠海風イケメン)は舞台となる高校に転校してきたばかりでたまたまジョーと席が隣り合わせになっただけの関係でしたが、いい短篇映画を制作できれば進学に有利になることを知り、ジョーの親友だったとウソをついてジョーを偲ぶ短篇映画を企画します。そこにジョーと本当に親友だったボーケー(演: ティティヤー•ジラポーンシン 私が去年観た『ふたごのユーとミー』という映画で一人二役で双子を演じていました。特に美人というわけでもないのですが、タイを代表する国際派の女優になりそうな予感がします)や映画オタクの数人が合流し、すったもんだがありながらも、映画の撮影がスタートします。高校生による映画制作ということで、日本映画の『サマーフィルムにのって』とか『Single 8』みたいな感じかなと思っていましたが、それらよりもずっとコメディよりで演出が少しアカ抜けないこともあってB級学園コメディみたいな感じで前半は進みます。
ところがどっこい、前半のB級学園コメディ感はスポーツでいうところのフェイントで、ジョーの秘密が明らかになってきた中盤あたりから、物語はまったく別の様相を呈し始めます。主人公のペーはとても大きな決断をしなければならなくなります。本篇後半は友情をテーマにした本格的な青春映画です。クライマックスは卒業式。合わせてジョーを偲ぶ会も行われ、ペーはジョーを偲ぶ短篇映画を発表します。ボーケーは卒業生代表でスピーチをします。最近、トシのせいかすっかり涙腺が緩くなっている私はこのあたりのところでしっかりと涙活をしてしまいました。
ペーは大きな決断の代償として直近の目標を諦めなければならなくなりますが、人間的には大きく成長します。卒業からしばらくしてペーとボーケーはある場所で再会するのですが、私はそのシーンで泣けて泣けて…… 嗚咽を漏らしそうになりました。若い頃の夢は全部が全部、叶うわけではないけれど、どうか皆、成長していってほしいと心から願いました。
そして、何十年か後に同窓会を開いたときには映画撮影の思い出話に花が咲くといいですね。そのときにはジョーの思い出話も。そう、ジョーは皆の心の中で今も生きています。

