「「10月5日、居酒屋にて比内地鶏の焼き鳥を食べる。美味かった。」ある日の日記より」火喰鳥を、喰う レントさんの映画レビュー(感想・評価)
「10月5日、居酒屋にて比内地鶏の焼き鳥を食べる。美味かった。」ある日の日記より
原作は横溝正史ミステリー&ホラ大賞、もとい、ホラー大賞受賞作。しかし読んでいて感じたのはSF色がかなり強くてホラー色は弱い。今回の映画化では原作にあった残酷描写がなくてよりホラー色は薄められている。R指定などの年齢制限を嫌ったのかもしれない。でも本作の面白さはSFミステリーがメインなのでホラー要素はあまり必要ないだろう。
今あるはずの現実とは異なるもう一つのあり得た現実が同じ次元に存在することとなり互いがその生存をかけて食い合うという、パラレルワールドを扱ったような作品。
異なる次元の世界同士が戦うというのはアニメの「ぼくらの」や「エブエブ」を彷彿とさせるけど原作者は「バックトゥザフューチャー」をヒントにしたんじゃないかな。
かの作品は過去を変えてしまったことから自分の存在が危うくなるというタイムパラドックスを描いた作品で写真をツールにしていたのも酷似している。
過去に死んだはずの大叔父が生存していたというもう一つの宇宙が自分の存在する宇宙に影響を与えて自分の存在が徐々に危うくなってゆくという展開ははまさにかの作品と同様。
例えれば「籠」である日記がタイムマシンの役割を果たしていて、とどのつまり貞市が生存する別次元の北斗が由里子と添い遂げるためにもう一つの次元の北斗をそそのかして操っていたという物語。
本作での火喰鳥の存在はまさに本作の異なる現実同士の生存競争、食う食われるの関係を象徴する存在として原作では描かれていたが、今回の映画化では主人公が火喰鳥に食われる悪夢のシーンや記者が火喰鳥に襲われるシーンもカットされていて本作での火喰鳥の意味がぼやけてしまっている。先の大戦で飢餓地獄に陥った旧日本兵が生存のために人肉を食らったことを示唆した存在としても薄まってしまった。
また本作は多元宇宙の話で異なる次元の世界同士の生存競争がメインだが、悪夢というものが作品のネックになっていて、悪夢を見ている主体が原作ではあえて伏せられて作品がつづられていくことでラストのどんでん返しに生きてくるのだが、映画ではそういう描写もすべてカットされている。
今回の映画化では原作の魅力がすべてそぎ落とされてしまってまるで原作の出涸らしみたいな作品となってしまった。
ちなみにヒクイドリの体長は大きいもので180センチを超えるという。低いどりなのに。
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