「より楽しむ為には、原作を読んで補完して欲しい」火喰鳥を、喰う うさぎさんの映画レビュー(感想・評価)
より楽しむ為には、原作を読んで補完して欲しい
原作既読。パンフレット未読。映像化が難しかったであろう作品を、良くこの短さでまとめた印象。
昭和の終わり〜平成初期を思わせるテロップや、荒さの残るCGは、どこか懐かしく、じっとりと纏わりつくような恐怖を演出していて、私は好きでした。
お化けやスプラッタの恐怖ではなく、呪物や人怖、オカルト系の怖さ。お化けやスリリングな展開を期待している方には向かない作品です。
個人的には全年齢向けにする為か、重要なセリフや怖いシーン等がだいぶ削られていたので、原作読んで無い方は分かるかな?と不安になる部分もちらほら…しかしある程度の予備知識(戦時中何が起こっていた等)と、しっかりセリフに注目して見れば十分分かり易い内容になっていたと思います。
主人公雄司と、貞市の孫千弥子との生存競争の話。
黒幕かに見える北斗は“千弥子の世界線の北斗”に利用された“雄司の世界線の北斗”であって、黒幕ではない。
止ムヲエズ火喰鳥を食べたという貞市の記載、火喰鳥は丸のまま蒸し焼きにしたと夕里子を指す北斗。原作では直接「食べちゃった」と雄司に伝える場面をカットして、雄司に日記のこの部分を読ませる事で、火喰鳥とは人。さっき北斗は夕里子を火喰鳥と言っていた、もしかして食べた?と観客に思わせるような雄司のなんとも言えない表情が良かったです!!
キャストもハマっていて良かったと思います。
雄司と夕里子の世界線こそが現実だと思わせる自然な演技。登場は明らかに異質な北斗の演技が、後半になるにつれ本性がでて自然なものとなり、現実世界がどこなのか曖昧になっていく。
ずっと千弥子の世界と戦っていた母の描写や、カブト虫の演出も良かった。
原作にある、北斗が雄司達と一緒に謎を解いていって、信用を得ていく描写が無かったので、北斗がただの変な奴になっていたのはちょっと残念。でもあの上映時間なら仕方ないかも?残念と言っても、ダメだった訳ではなく、しっかり北斗の良く分からないオカルト教団の教祖のようなカリスマ性が表現できていて良かった。
ただ映画オリジナルの最後の場面は、これはどの世界線?と迷子中。
消えたのは貞市が死んだ世界線の雄司だから、生きている世界線の雄司も居ていいのか…?14歳で雄司が死んだ世界とは別世界なのか?はたまた今まで無かった雄司の執着が籠りとなって新たな現実を作り出した?考察が楽しめそうです。
パンフレット読んでまた観に行きたいと思います。
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