「小説を読んでから行っても新たな発見がありました」火喰鳥を、喰う らむさんの映画レビュー(感想・評価)
小説を読んでから行っても新たな発見がありました
ホラーが苦手なため、事前に内容を把握しておきたいため、原作読了済で鑑賞しました。ただ、原作を読んでも、結局エンディングがどうなったのか理解しきれないまま、見に行きました。
まず、初めにこの作品は一回みただけではよくわからないと思うし、ハッキリとした答えがでない作品。見てスッキリした!などを求めている人にはハマらないかもしれない。
ただ、たくさんの問いかけをくれるのと繰り返し見ると新たな発見がある映画だと思う。
私は小説では貞市の生への執着の強さを感じて、いわゆるホラー味が強いという印象を受けたけれど、映画では現在を生きている人間の執着の怖さが中心に描かれていたように感じました。それくらい色々な解釈がある小説なんだと思う。
貞市のいる戦中時、現在、現在とは異なる世界線と言った具合で場面がぐるぐる入れ替わっていくというこの小説の難しさをどう映像にするのだろうと思っていたけれど、わかりやすく解釈してくださったと思った。自分では理解できていなかった部分が少しクリアになった。
私は普段お芝居を見慣れていないので、演技をどうこう語る立場にないのですが、各登場人物の熱量、感情が伝わってきて、映像ならではの感情の揺さぶられ方をしました。
幸いにも舞台挨拶に参加することができ、出演者と監督のお話を直接伺うことができました。
その中でカブトムシの数が何かのメタファーであるような発言があり、そのあとはそこに注目して鑑賞したのだけど、私なりの答えがあっているのか確証はなかったり、本当に色々な解釈があるのだと思う。
あとは久喜家の家屋含めた信州のあの雰囲気がなければ成り立たない撮影だったと聞いて、確かに途中途中に風景を切り取った描写があって、多分ここにも何か込められた思いがあるのだと思う。
また、小説読了済サイドからの感想としては後半に向けてどんどん登場人物の思考が火喰鳥に支配されて、幻覚を見るようなシーンがあった気がするのだけれど、そこが映画ではうっすらしか描かれていなかったから与沢記者だったり、由里子が焼石のようなものに埋まった状態になっていたのかが初見の人には伝わりづらいかと感じた。
最後に、私がこの映画から受けた問いかけは執着と愛は何が違うのか。どちらも同じ人から人への想いなのに、愛は温かみがあり周りも幸せにする。一方で執着はひたすらに苦しく孤独。どこのポイントで同じ人に対する気持ちが愛になり、執着になるんだろう。
そして、自分にもあの時こうしていれば別の世界線があったのではないかと思うことがある。この映画のそういったポイントはどこだったんだろう。そこを探しにもう一回小説を読んでから映画を見に行きたいと思う。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
