「この現実は夢か幻か?」火喰鳥を、喰う おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
この現実は夢か幻か?
■ 作品情報
第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作である原浩の同名小説を実写映画化。ホラーとミステリーが融合した物語展開が特徴の作品。監督は本木克英。脚本は林民夫。主要キャストは、水上恒司、山下美月、宮舘涼太、森田望智、豊田裕大、麻生祐未など。主題歌はマカロニえんぴつ「化け物」。
■ ストーリー
信州で穏やかに暮らす久喜雄司と妻の夕里子の元に、太平洋戦争で戦死した雄司の大伯父、久喜貞市が残した手記が届く。その手記には「ヒクイドリ、クイタイ」という謎の言葉が記されていた。手記の到着を境に、久喜家では墓石の損壊、祖父の久喜保の失踪など、不可解な出来事が次々と発生する。まるで現実や過去そのものが書き換えられていくかのような怪異に直面した雄司は、事態を食い止めるため、超常現象の専門家である北斗総一郎に相談を持ちかける。物語は、戦地の密林で飢えと病に苦しみながらも火喰鳥を喰らうことに異常なまでの執着を見せた貞市の生への執念と、それが時を超えて久喜家にもたらす恐ろしい因果を描いていく。
■ 感想
なんといっても『火喰鳥を、喰う』というタイトルからして引き込まれます。全体的にはホラーというよりオカルトといった印象で、そこにミステリーを融合させた、なかなか興味深い作品です。序盤から漂う不穏な空気感と、少しずつ真実へと迫っていく展開に、終始釘付けです。不可思議な現象の裏に人為的な策謀が絡み合っている構成も秀逸で、最後まで飽きさせない話運びです。
特に、もう一つの世界線が現実を侵食し、やがてすべてを飲み込んでいくという構図は、非常に斬新で心惹かれるものがあります。ただ、その理屈については、正直なところ、なかなか理解が及ばず、釈然としない部分も残ります。例えば、手帳を燃やせばよいとか、誰かを殺せば解決するとか、その因果関係がよくわからなかったので、もう少し説得力ある説明や映像が欲しかったです。また、現実が改変されるたびに辻褄合わせで人が消えていくというならば、雄司がなぜそのまま存在し続けていたのでしょうか。彼が母に認識されず、幼い頃に事故で亡くなったはずの存在であったこととの整合性も取れないような気がします。私が何か見落としたり聞き落としたりしているのかもしれないので、他の方のレビューを読んで補完したいと思います。
作品全体で描かれるすべての不可解な出来事は、結局のところ、人の強い執着のなせる業であるという解釈に辿り着くのでしょうか。貞市の生への並々ならぬ執着が手帳に宿り、それが怪異(北斗の言葉を借りるなら「籠り」)となって現実改変を引き起こし、そこに北斗の執着が重なり、事態がより複雑化したという解釈でよいのでしょうか。それならば、物語の根幹は理解できるのですが、細部が十分に理解できなかったような気がします。
そもそも「火喰鳥」そのもののには、どのような意味があったのでしょうか。鑑賞後に、実在することを知って驚きましたが、現地では何か特別な意味をもつ鳥なのでしょうか。また、ラストシーンもどこかモヤモヤとした余韻を残す終わり方で、悪くないけど好みではなかったです。
上映後に舞台挨拶中継があり、撮影の裏話が聞けて楽しかったです。特に宮伊達さん自身や、彼が演じた北斗に関する話題が印象的でした。あの胡散臭さを醸す演技は見事でしたし、個人的には生理的に受け付けないほど強烈なキャラクターもまた作品の魅力の一つだったように思います。
共感ありがとうございます!
自分がミステリーにはまったのが江戸川乱歩からの横溝正史なんで、フライヤーの隅に「横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作」って書いてあったら期待度爆上がりで観に行きました。
キャストの演技も(特に山下美月)も良かったので落ち着いて観てたのですが、宮舘涼太の独りよがりからの並行世界移行というのがミステリーらしくないと感じました。原作未読なので元はどのような構成だったのか分かりませんが、劇場版に脚本を作るのなら後半は少しSF寄りにした方が受けが良かったと思いました。
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