「ホラーにしては怖くないし、色々と疑問に感じるところが多過ぎる」火喰鳥を、喰う tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラーにしては怖くないし、色々と疑問に感じるところが多過ぎる
戦死した祖父の兄の従軍手帳が見つかったことを発端として、数々の不穏な出来事が巻き起こっていく序盤の展開には引き込まれる。
失踪した祖父がとっくの昔に交通事故で死んでいたことになっていたり、戦死したはずの祖父の兄が日本に帰還していたという証言があったりと、歴史が改変されていくような不思議な感覚が味わえるところも面白い。
ただし、主人公は、そうした不可解な現象に翻弄されるだけで、悪夢によって車に轢かれそうにはなるものの、特段、命の危険が迫っている訳でもなく、ホラーとしての切迫した「恐怖」を感じることはできなかった。
妻の大学時代の知り合いの超常現象専門家は、登場した時点で胡散臭いのだが、怪現象の黒幕が、戦死した祖父の兄なのか、この超常現象専門家なのかが終盤になるまでよく分からず、そうした、「倒すべき敵」が明確でないところも、生き残りをかけた「戦いの物語」としての強度を弱めてしまっていると思えてならない。
話としても、よく分からないところが多いのだが、結局、超常現象専門家が黒幕で、生きて帰りたいという強い「思念」の「籠り」である従軍手帳を利用して、主人公と妻が結婚している現実の世界を、自分が主人公の妻と結婚するもう一つの世界に作り変えようとしたという解釈で良いのだろうか?
ただ、それにしても、主人公の祖父の兄を生きていることにしたら、どうして、主人公が交通事故で死んで、超常現象専門家が主人公の妻と結婚することになるのか、その関連性が不明だし、その企みが成功したとしても、現実の世界の超常現象専門家は死んでしまうので、彼自身は、主人公の妻との結婚生活を体験することができないのだが、本当に、それで満足なのだろかという大きな疑問が残る。
さらに、もっと分からないのは、ラストシーンで描かれた主人公の姿で、現実の世界がもう一つの世界に変わってしまったのだから、主人公は、14歳の時に、父親や祖父と一緒に交通事故で死んでしまっているはずなのに、どうして天文台で元気に働いているのだろうか?
たとえ、「君の名は。」のようなロマンチックなエンディングを作り出すためだったとしても、これは、明らかに、それまでの物語の「ルール」を否定してしまう展開であり、「主人公の苦労は一体何だったのか?」と思われて、到底納得することができなかった。
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