劇場公開日 2025年7月4日

「『夏の砂の上』が教えてくれた、アパレル経営の本質」夏の砂の上 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 『夏の砂の上』が教えてくれた、アパレル経営の本質

2025年7月5日
iPhoneアプリから投稿

映画『夏の砂の上』は、地方の銭湯を舞台にした静かな人間ドラマだが、経営者、特にアパレル業界で挑戦している自分にとっても深い示唆を与えてくれる作品だった。

銭湯という“古き良き文化”が時代の波に押され、存続の危機に直面する様は、まさに大量生産・大量消費の中で“本当に価値ある服”が見失われがちな現代のアパレル業界に重なる。目先のトレンドや売上ではなく、「誰に、なぜ届けるのか」という想いがなければ、ブランドは長く続かない。主人公が家業を継ぐか葛藤する姿は、事業を続ける意味や、自分のビジョンとの向き合い方そのものだった。

アパレルは“流行”を扱う業界だが、その根底には“人の生活に寄り添う”という本質があるはず。だからこそ、ただモノを売るのではなく、物語や価値観を纏ってもらえるかが重要だと、映画を通して改めて感じた。

『夏の砂の上』は、数字では測れない価値、そして“人と人との繋がり”の中で育つブランド力を思い出させてくれる。アパレルで挑戦するすべての人にとって、ブランディングや事業の軸を見直すヒントが詰まった一本だ。

林文臣