ルノワールのレビュー・感想・評価
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少女時代の最後の一瞬を捉えたような傑作
80年代半ば、超能力やおまじないに夢中な小五女子の夏休み。子供のような、大人になりつつあるような、そんな中途半端な時期の日常を色鮮やかに切り撮る。
しかしそこには死と暴力と性の予感がある。死の予感に慣れ、死が生のすぐ横にあることを理解しつつあるいっぽう、性についてはまだ意識していない。
そんな少女の戸惑いと無自覚、危うさと残酷。少女時代の最後の一瞬を捉えたような傑作。
前作の「PLAN75」は社会派の傑作だったが、本作は叙情に振り切っており、こちらもまた素晴らしい作品になっている。
演者は本作でも皆素晴らしいが、父親役のリリー・フランキーと、主役の鈴木唯は出色!唯一無二の存在感だった。
観客を選ぶとは思うが、我々の年代(50代)なら分かるでしょう。必見。
鈴木唯ちゃん‼️
1980年代を舞台に、複雑な家庭環境に揺れる11歳の少女フキの物語‼️淡々と物語を描く早川千絵監督の演出は賛否分かれると思いますが、今作はやはりフキ役鈴木唯ちゃんの存在感に尽きると思います‼️まさに鈴木唯ちゃんの一人劇場‼️どうか子役から名女優へと無事成長してくれることを祈って・・・‼️
不思議だが引き込まれた
1980年代後半の夏、小学5年生の少女フキは、闘病中の父と管理職になったばかりで仕事に追われてた母の3人で郊外の家に暮らしていた。先生を戸惑わせるほどの豊かな感受性を持つ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、気ままに過ごしていた。そんなフキにとっての大人の世界は、複雑な感情が絡み合い、どこか滑稽で刺激的だった。しかし、父と母の間に大きな溝が生まれ、フキも・・・そんな話。
想像力豊かなフキという設定で、空想と現実が交錯するから、少しわかりにくかったが、それも狙いなんだろう。
1980年代の後半の年の夏、という設定だから、バブル真っ只中、賃金も年々急増、ジャパンアズナンバーワン、の頃だからパワハラ、セクハラの概念もなかったはずだし、お母さんのあれくらいの指導で上司が何か言うと言うことはなかった様に思うが。
周囲の大人たちに触れて色々と経験していくフキが不思議な子だけどなぜか引き込まれた。
演じた鈴木唯が素晴らしかった。
母役の石田ひかり、父役のリリー・フランキーもまぁ的役、という感じ。
本作でも河合優実を観れたのは良かった。
それと、ルノワールのイレーヌ嬢の絵は美しかった。
繋がらない名場面、、、
大人の振る舞いと子供の視線。
フキが直面する現実の大人の世界にとっては、フキの存在は傍観者であり、救いでもあり、癒しにも。フキは表情を過度に変えることなく、眼前の現実をしっかりインプットするかのよう。その態度は全編を通して通底する人の死に対しても。
淡々と進む映画時間の中で、フキの持ち前の好奇心や豊かな想像力による無邪気な危なっかしさが、作品の結論的なものに収束されるのかと思いきや、そんなドラマチックな展開は裏切られることになる。
大人の振る舞いと子供の視線が混ざり合う。懐かしさと自らの当時の体験の記憶を呼び起こす。
子供の頃を思い出す
人生の後半戦にいる私に、遠い昔、子供のころ持っていた感覚を思い出させてくれた。最近は忘れていた。夕焼けの風景、トンネルの反響、オカルト、大人世界への無知と反発、思い出の競馬場、馬の鳴き真似への馬の返事、イレーヌ、少女のありのままの視点が美しい映像で表現されていて何か懐かしかった。あういう鮮やかな感性は大人になると数百分の一になっているだろう。仕事やしなくてはならないこと、社会の規範に合わせなくてはならないこと、同調圧力、人間関係などでエネルギーを使ってしまって失われていってしまう。でも、あの時、あの場所、あのシテュエーションを心のどこかにしまっておいて、大事な時に引っ張り出すことができるといい。誰にでもそういった体験価値があるはずでその大切さをあらためて思い起こさせる作品だった。フキはきっと長い人生を強く楽しく輝いて歩むと思う。監督早川千絵の子供時代へのオマージュなのかなこの作品は。エンディングソングの歌詞がこの作品のテーマなのだろう。あの歌詞をもう一度見たい。
無自覚のカウンター
1.ざっくりあらすじ
1987年、バブル真っ只中の東京郊外。11歳の少女・フキは、がんと闘う父、仕事に追われる母と3人暮らし。
本質的な不安を抱えたフキの生活はしかし、どこでにでも日常のなかで進んでいく。
彼女はいつも引き出しを開け、扉をのぞき、見えないものを探している。
彼女は自分の“眼”を研ぎ澄まし、邪気なく(無神経に)残酷に世界を観察していく。
伝言ダイヤル、親の不倫、意思を伝える超能力、死に向かう父との競馬場の思い出。
そして…クルーザー上での祝祭的な(非日常の)ダンス。
フキはどこへ向かうのか。どこにも向かわないのか。
静かなのにざらつく、妙に鮮やかな映像が印象的。
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2.感想文:「無分別のまなざしが、世界の綻びを暴き出す」
この映画を「少女のひと夏の成長物語」として語ると、作品の核心を見誤る。
たしかに、11歳の少女が主人公で、家族の死を経験するという点で、成長譚的な表層を持ってはいる。
だが、実際フキは、成長したのか? そもそも成長すべきなのか?
彼女は最初から最後まで、冷静で、残酷で、そして妙に客観的なまなざしを持って、世界をじっと見つめている。
私はこの映画を通じて、「無神経」という言葉の意味を再確認することになった。
11歳という年齢を考えれば、フキは無邪気だ、というのは簡単だ。
しかし、無邪気の範囲を超えて、彼女の行動は端的に言えば無神経だ。
他人の家に勝手に入り、引き出しを開け、押し入れを覗き、プライベートを容赦なく暴く。果ては友達にそのプライベートを覗き見るように仕向ける。
伝言ダイヤルで赤の他人の人生に耳を傾け、とある男子大学生(これもウソ)と会う約束をする。
他人の心を覗き見る「超能力」に異様な興味を示す。
それらは、どう見ても「悪趣味」であり、快くはない。
だがその“悪趣味”こそが、彼女の真実に対する嗅覚なのだ。
彼女は「正しさ」や「思いやり」では動いていない。
彼女の行動原理はただ一つ——知りたい、確かめたい、という切実な欲望だ。
それは“無邪気”を超えて、明らかに“無神経”の域に達している。
そうした彼女の「悪趣味」な行為は、結果として大人たちの欺瞞や沈黙を暴き出してしまう。
社会の中にある“見て見ぬふり”の断片。
家族という空間に漂う“言葉にならない断絶”。
それらを、フキは誰よりも繊細に、そして誰よりも残酷に暴いてしまう。
父の死は、その極点だった。
家族であるにもかかわらず、父とはまともな対話が成立していなかった。
そしてだからこそ、彼の死は、母と娘の両方に“精神の解放”をもたらす。
怒りでも悲しみでもなく、むしろ不思議な「軽さ」と「自由」。
その象徴として描かれたのが、あのクルーザーのダンスの場面だ。
たしかに、文脈的には唐突で、浮いた印象もある。
だが僕は、あの場面を映画の核心的な断章として受け取った。
踊るフキは、誰にも見られていない。誰とも話していない。ただ太陽のもとでリズムに乗って動いている。
それは救いだったかもしれないし、幻想だったかもしれない。
その解釈は、僕ら鑑賞者にゆだねられている。
でも、確かに映画のなかで最も美しい場面だった。
この映画は、明確なストーリーの起伏があるわけではない。
むしろ、出来事の連なりに意味の因果をつけることを、あえて拒んでいる。
だからこそ観客には、一貫した物語は残らない。
残るのはグロテスクな違和感だ。
そしてその違和感の正体が、「子ども」という存在が抉り出す大人の世界の真実だ。
抉り出された真実は、常にグロテスクで不快なのだ。
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3.芸術としての評価(4.0)/映画としての評価(3.5)
芸術作品として見ると、この映画は非常に完成度が高い。
沈黙、間、視線、画面構成といった要素において、映画らしい映画と言える。
説明せず、誘導せず、ただ映し出す。
その誠実さ、潔さ、美しさを、僕は高く評価したい。
一方で、映画作品として、エンタメとしての評価となると、少し冷静にならざるを得ない。
フキという主人公は、その演出も相まって、万人が共感できる人物とはいえない。
彼女に不快感を覚える観客も少なくないだろうし、それゆえ物語に没入できない人も多い気がする。
そうした点を踏まえ、映画としては★3.5かな、というところ。
11才少女の、現実と想像が混在する、映画でなければ描けない世界。主人公フキから目が離せない。
シーン一つ一つが印象的でした。ロケ地岐阜だったんですね
リリー・フランキーさんの静かな熱演に絶句!
少女というより監督の死生観が色濃く出ている作品でした。
主人公の少女が、監督の演出通りに動いて台詞を言っているので子供らしい演技は殆どなく、監督の色がはっきりと伝わってきます。
時代背景を意識した小道具や衣装、音楽が矢鱈と印象に残ったのも監督の成せる技なんですかね。
整髪料の「GM5」がちらりと映ったり、キャンプファイヤーで「ライディーン」が流れ出したりと細かな部分に監督の拘りを感じました。
特にファミレスの「万華鏡」には笑ってしまいました。
当時、何処のファミレスにも必ず置いてあった事を思い出しましたよ。
作品の細部をしっかりと支えていたのは、やはりリリー・フランキーさんの演技でした。
叫んだり、暴れたりする事なく、必死になって死に抗う病人を静かに演じておりました。
リリーさんの細やかな表情や動きだけで「生きる」という事への執着心が伝わる為、娘である主人公が受け身の演技だけでいられたのだと思います。
やはり彼も日本の宝といえる方ですね。
早川メソッド
長編初監督作品『PLAN 75』で一躍注目されることとなった早川千絵監督。当然観逃すわけにはいかず、109シネマズ木場にて鑑賞です。
本作の舞台は1980年代後半。撮影監督を務める浦田秀穂氏の手によって撮られた画は、空気感まで含めてその時代を思い出すようなルックで、全く違和感を感じません。また、インターネットは勿論のこと携帯電話もまだ家庭用に普及してなかったあの頃、家電(Not カデン but イエデン)は大変に重要なツール。本作においても「浄水器の営業電話」や「伝言ダイヤル(Not 災害用 but マッチング用)」など危なっかしさ満点な「いにしえの用途」で活躍しています。
鑑賞前、何度かトレーラーを観ていたはずなのに、本編が始まってすぐ「え、そんな話?」と驚きの展開。妥協のない冒頭シーン、引っかかったのは私だけじゃないのでは。そして、淡々とした作文発表を終え、オーディエンスの反応に満足げな表情を見せる本作の主人公・11歳の沖田フキ(鈴木唯)に透かさず魅了されます。いやはやこの導入、やはり油断禁物な早川監督作品。
未知のものに対する好奇心が強いフキは、目下、「どうやら父・圭司(リリー・フランキー)の死が近いらしい」という状況にあって、初めて死生観というものに向き合っています。父を喪うことになかなか実感を持てませんが、「一人っ子で鍵っ子」の彼女は得意の独壇場において好奇心を発揮しながら、常に「信じられるものや人」に対する見極めに真剣です。そして、超能力(マジック)やおまじないなどのスピリチュアルに対する信頼や、彼女にだけ見えているものなど、時に現実離れすることもあるフキですが、唯一、父だけは言葉も無用にフキの全てを理解してくれる絶対的な存在。物語の後半に起きる「フキ最大のピンチ」とそこに「現れる」父、、、このシーンは是非ご自身で観て感じてください。
一方、母・詩子(石田ひかり)は仕事、看護、子育て、そして将来のことなど、一気に圧し掛かる負担と不安に情緒を崩しそうになりつつも、常に強い気持ちで立ち向かっています。それでも、真面目で「逃げたり、溺れたり」が出来ない彼女だって、やはり何かにすがりたい。職場での行き違いがきっかけで参加した研修における、マインドセラピーと親身になってくれるいい男。からの、路上占い師の言葉にふらついたりとやはり一人の女性です。ですがここでも、母の様子を察するフキのファインプレー(?)が飛び出して思わぬ展開に。
と言うことで、およそ半年の内に家族に起こる色々、11歳の少女には大きすぎる変化と経験ですが、小旅行から帰る母と娘が向かい合うラストシーン。母へ「強く信じられるもの」を感じるフキの表情に、思わず落涙しそうになりました。
全般通して観れば、概ねは淡々としたシーンが多くて派手さこそありませんが、時折に、ここぞとばかりの「強いメッセージ」があって思わず動揺。ですが、この不意に胸を衝く感じこそ正に「早川メソッド」なのかもしれません。今作もすっかりやられました。
鈴木唯の演技力はすごい
病室の窓にリボン
ノルタルジックな気持ちになった
万人受けする映画ではないとは思いますが、わたしは嫌いではない映画でした。
時代背景が昭和の終わり〜平成の始め頃なのか、その世代に子供時代を過ごしたわたしにはノルタルジックな気持ちになりました。
親への秘密が増えていったり、親に隠れて冒険したくなったり、大人の世界に踏み入れてみたくなったり、友達が羨ましくなったり、言葉にうまく表現できない心の機微であったり…。
とはいえ、まだまだ子供で結局自分自身も親に頼って、求めているところがあったり。そこが最後の雨のシーンで病気が治った父親が迎えに来てくれる妄想?夢?なのかと。
また、結構出演者が豪華で、こんな役やらせるの?というのもありました笑
河合優実の役はまだしも、坂東龍汰の役は…これから大注目の俳優なのに笑 色んな役を経験して…大俳優になるのかな。
ドラマふてほどに出ていたメンバーも結構出てた。
この子ちょっと嫌いかな
2025年劇場鑑賞176本目。
エンドロール後映像無し。
ジャンル全く知らず鑑賞。邦画だと思ったらいきなり外国の子供たちの映像が出てきて邦画ですらなかった?と思いましたが邦画でした。
ドラマ?サスペンス?あっホラー?と冒頭ジャンルが目まぐるしく判断に迷いましたがドラマ系でした。
お父さんが末期がんなので死が身近にあり、全ての行動はそれが元になっていると思うのですが、周りの大人がその事に全然気付いていないのがイライラします。女の子は女の子で育ちが悪いのか行動にたまにやっぱりイラつきます。脱いだ靴下人の家の食卓に置くのほんとキツかったし、その後の行動はもっとなかったです。その後の顔もめちゃくちゃムカついたし。
その後ひどい目にあいそうになるのですがそれに気づいてないのもちょっといやでした。
河合優実は自分の好みの女優ではない(ちょっとキツい感じが苦手)のですがやっぱり上手いなと思いました。
見る人を選ぶ作品
共感できる場面も人物も最後まで全然出てこなく、私にとっては残念な作品であった。この映画の時代設定の頃に主人公のフキの歳と近かった世代の人間だと思うので、場面に出てくるブラウン管テレビや古めかしい冷蔵庫など、こんなだったなあと懐かしい感覚はあったが、理解できたのはそのくらい。今では手に入りにくいであろう、こうした貴重な小道具を多大な労力をかけて準備して、この時代設定にした必然性も特に感じられずもったいなく思った。あえて理由があるとすれば、伝言ダイヤル(今だとマッチングアプリ?)にまつわるエピソードをどうしても入れたかった、ということか。幸運にも、取り返しのつかない事件にまでは至らず終わって良かったが、フキはこの体験で何を感じたかも特に描かれていなかったように思われ、何のためのシーンだったのか理解しがたい。
予告編映像や「"哀しい"を知り、少女は大人になる」とのキャッチコピーが、この映画に興味を持ったきっかけだったが、フキちゃんがはたして、非行に走らず命も落とさず無事成年を迎えられたのだろうか。そういったことを想像させる場面も(私が見逃しているのでなければ)何も描かれていなく、後味悪いまま作品が終わってしまった。そういえば、タイトルに選ばれたルノワールも、内容との関係性があまり明確でないように思う。フランスの映画祭に出品するためフランス人画家の名前を冠した方が目をひく、ということかと考えざるを得ない。
演者や製作者の立場であれば、優れた見どころが多いのかもしれないが、そうではない私には合わない作品であった。
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