「ひたすら暗い」ルノワール ひかるさんの映画レビュー(感想・評価)
ひたすら暗い
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相米慎二の『お引越し』みたいな映画かな?と思って見始めたら、ずっと宮台真司的な世界が描かれていて辛かった。子供の目線で大人の世界を描く映画はいくつもあるが、子供の無邪気さやその眼差しを通したありのままの世界のキラキラした様子と、大人の社会の苦悩や現実の対比が描かれているのが面白いところだけれど、これは子供のふりをした大人の眼差しといった様子で90年代のバブル崩壊後的な社会の歪みと陰が永遠と描かれている(設定的には80年代後半だが)
出てくる大人も基本的には皆んな嫌なやつで、主人公のフキもいい奴かと言うと微妙だし友達もほぼ出てこない。家でひとりぼっちで伝言ダイヤルに電話したりしている。これはきっと狙い通りで冒頭から自分のお葬式の空想から始まる所から、家庭の不安定さから離人症的になっていると推察される。
何処かで子供目線のユーモラスさなどを期待したが、ほぼそんな様子はなく本当にずっと暗い。基本的にフキが大人に出会い、その人たちの暗闇を見つめる構造になっているので会話のシーンばかりで映像に動きが無いのもシンドイ。舞台も田舎という訳ではなく、地方都市ぐらいの感じなので会話するシーンも狭く奥行きがない所がほとんどで画的にも面白くない。
唯一動きがあって面白い映像だと思ったシーンが伝言ダイヤルでロリコンぽい大学生に会いに行くシーンで狙ってやってるとしたら観客に何を思わせたいのか、感じさせたいのか甚だ疑問だった。
なので120分以上の上映時間も比較的苦痛で、いつ面白くなるのか、いつ終わるのかということばかりが頭にチラついてわざわざ劇場に観に来たことを後悔した。
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