「描写の力」ルノワール Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
描写の力
エグい始まり方だなと思ったら、「こんな夢を見た」の作文なんだよね。
それで、主人公が不思議ちゃんというか、独特の感性を持つことが分かんのね。
それで、作文の内容が不穏なので、お母さん(石田ひかり)呼び出されちゃうんだけど、石田ひかりも「先生って暇ね」って良いキャラなの。
石田ひかりは勤めてて管理職なんだよね。そしてどうも部下を激詰めする。ここも描写でやるんだよね。書類を廊下にぶちまけてしまった部下を手伝いながら「すいませんじゃなくて、具体策出して」って。それで、どうも、もう一人の部下が休みがちだと思うと、パワハラ認定されてしまうという。もちろん描写。
現代の話なのかなと思って観てて、なんか超能力ブームみたいなの起きてておかしいなとか思うんだけど、主人公がウォークマン聞いてて気付いた。1980年代が舞台だね。最初の《FRIDAY》やビデオテープで気づけって話だけど。ここも描写。
石田ひかりは研修受けさせられて、そこの講師が中島歩なんだけど、怪しいね。ここは描写もあるけど、中島歩が出てきたら、もう怪しい。
休憩時間にベンチに座る石田ひかりに中島歩が近寄って、石田ひかりが顔を上げると『不倫するんだ』って分かるのすごい。
とにかく何から何まで、くどく説明しないんだよね。描写で人物を分からせてくるの。
これができるのって、登場人物を完全に掴んでるからだなって思った。その完全に掴んだ人物を表すのに、どんなシーンが効果的か考えてやるんだろうな。
ストーリーはあると言えばあって、主人公のお父さんのリリー・フランキーが癌で亡くなるところを描いてるんだけど、まあ、そこは、どうでもいい。石田ひかりは怪しい健康食品買っちゃうし、リリー・フランキーは怪しい気功に金払っちゃうしで、弱ってるやつに寄ってくる奴らひでえなとも思うし、人間って、そういうもんなんだと思うけど、まあ、ストーリーはいい。
その状況で、登場人物がどう動くかを、丹念に描写で描いてくんの。そこがすごいな。
文句なしの作品なんだけど、ちょっとだけ引っ掛かったことがあって。
石田ひかりはパワハラ認定されてるけど、この時代だと「メンタルで休むなんて根性なしめ」って感じで部下の方が詰められると思うんだよね。
あとリリー・フランキーの見舞いにきた部下が「(あの人)空気が読めないだけなんだよ」って言うんだけど、「空気読めない」は1980年代だと言わないんじゃ。どうなんだろう。
逆に言えば、そんな細かいことが気になるくらい、他のところは素晴らしかったよ。
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