「相米慎二の「お引越し」の影響は大で、ある意味臆面もなく「お引越し」の構成を踏襲している。」ルノワール mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
相米慎二の「お引越し」の影響は大で、ある意味臆面もなく「お引越し」の構成を踏襲している。
「PLAN 75」の早川千絵監督の新作。
とても繊細な映画で、彼女自身の体験を自伝的にではなく、当時の思いや感じたことを素直に映像化した映画。
それが見る側にどう響くか。個々に違うだろう。その意味では万人受けする映画ではなかったかもしれない。
私は、共鳴する部分の多い映画ではあった。
特に「死」に対する態度。身内が死んでもTVドラマのような展開なんてあり得ないし、身内の死は特に寝たきりだと、それほどの悲しみがなかったりする。
また病院で知らない老婆が泣き崩れるシーンは、私も経験したことがある(私の場合は母だった)急に死を知らされると泣き崩れるものだと思った。
そう、死はコチラの都合とは関係なく訪れる。
相米慎二の「お引越し」の影響は大で、ある意味臆面もなく「お引越し」の構成を踏襲している。
それは、11歳の少女の子供から大人に変わる時期を描くには、「お引越し」と同様の設定は監督にとっては、最適な方法だったのかもしれない。その上で、必ずオリジナルとしての面白さが出ると踏んでいたのだろう。それはかなり成功している。
少女が少しずつ大人の世界に近づいてゆく過程を瑞々しくしく描くということでは方向性は同じであるが、相米のダイナミックさとは違い、かなり繊細で近視的に描いていてそれはそれで面白かったし、まさしくそこに早川監督の感性を感じさせる表現が詰まっている。
ラストは、「お引越し」のラストと同じ電車の中での母子の交流シーンで終わる(これも意図的)。どちらも暖かいシーンになっているが、違いが当然現れる。それが映画であり、面白さなんだろう。
何から何まで作り込まなくて、見る側に委ねることで、見る側の中に見る側それぞれの映画が完成する。結構確信的に映画の力を最大限生かした映画だと思う。そしてそれが映画の醍醐味だと早川監督は言っているよう。
今回の映画は、早川監督の個人的な部分を素直に映画化した、いわば私小説的な趣があり、万人受けはしない映画だったが、映像作家としての飛躍の一歩となる映画になったのではと思う。自らの少女時代から映像化したい部分を素直に映画化した点で。
次回作はまた別のアプローチの映画になるに違いない。次回作が楽しみです。
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